表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神に仕える黄金天使  作者: こん
第1章 玉座強奪・諸邦巡遊篇

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

275/564

第274話

 しばらく追っていると、アルフレッド派連合軍は速度を上げた。あの速さであれば、昼頃にはマルク・フェルナンド港に到着するかもしれぬな。


 魔眼でイブライム達が出発したのを確認する頃には、既に朝日が顔を見せ始めていた。

 アルフレッド派連合軍はさらに速度を上げ、約二十メルタルを進んでおり、残りは三メルタル程度となっている。もしかすると、イブライム達と合流できぬままマルク・フェルナンドに辿り着いてしまうかもしれぬな。

 モルガン隊はアキの後方五メルタル程度まで迫っており、急げば合流出来るかもしれぬ。むろんアキは、移動宮殿を挟んで俺と同じ分だけ進んでいる。


「閣下、我らもマルク・フェルナンドに入るのですか?」


「ああ。だが、気づかれぬように大回りをする。マルク・フェルナンド提督府の部隊がアルフレッド派連合軍を捕捉したら、俺達は北からマルク・フェルナンドに入り、連合軍に気付かれぬように総督閣下と合流する」


「承知しました」


 十騎長の一人に訊かれてから考えたが、なかなか良い作戦ではなかろうか。モルガン隊がどうするのか知らぬが、まあ良いか。


 その後もしばらく追い続けていると、アルフレッド派連合軍がマルク・フェルナンドの警備兵に発見された。指揮官はアブデラティフで、兵数は約二千騎といったところか。


「では迂回する」


 俺はそう言い、進路を北に変えた。馬蹄の跡を追って、イブライム達もこちらに来れば良いが、かなり時間差ができるはずである。まあ迎えを出せば良い。幸い、魔眼で位置は分かる。


 俺はブームソンに連絡し、迎えを出させた。

 マルク・フェルナンドには初めて来るので、迷うかもしれぬ。それゆえ迎えを頼むのだ。迷って迷惑をかけるより良かろう。


 マルク・フェルナンドの北の入り口に着くと、スタニックが単騎で待っていた。


「客将閣下、総督閣下より伝言がございます」


「閣下は何と仰ったか?」


「閣下の御意を得て申し上げます。『勝手な行動を慎み、城守として城守の任務に専念されたし』とのことであります」


「すると、このまま引き返せと?」


「ええ。しかし、それは総督閣下のお考えです。私といたしましては、アルフレッド派連合軍が出港するまで、客将閣下に見守って頂きたいというのが本音でございます」


 スタニックはパッセルスの家臣であったはずだが、パッセルスの意を蔑ろにしても良いのであろうか。黙認すると言うならまだしも、推奨しては後に災いとなるだろうに。


「…主君の意に反するようだが、良いのか?」


「はい。総督閣下は以前より、ご自身のみが動くことで戦果を挙げる方でした。つまり、部下であられる客将閣下が総督閣下の意を超えて動かれる事は、総督閣下にとっては想定外であり、総督閣下は望みません」


「すると、俺は帰った方が良いと思うが?」


「いえ、総督閣下は後に悔います。後から戦況を俯瞰し、部下に任せておけば良かった、と」


「そうか。では、スタニック卿に従おう」


「ありがたく存じます。私は総督閣下に客将閣下はお帰りいただいたと報告しますので、失礼します。閣下には不要かと思われますが、マルク・フェルナンド港の地図です。最新のものですから、どうぞご安心を」


「ではありがたく頂戴する」


 俺がスタニックから地図を受け取ると、スタニックは帰っていった。歓迎されると思って来た訳では無いが、追い返されるとは思わなかった。まあ潜伏するのだが。

 とりあえず、モルガン隊と連絡を取り、同じ行動を取った方が良かろう。


 アキ、聞こえるか。


 ───客将様も追い返されたか───


 ああ。一度モルガン隊と合流しようと思うのだが、モルガン卿に伝えてくれぬか。


 ───任せておけ。…………全面的に客将様に従うと言ってる───


 承知した。では迎えに行くから、林の中で待機せよ。


 ───分かった。また後で───


 アキをモルガンに同行させておいて良かった。

 まずはイブライムに任せた九百五十騎と合流し、その後モルガン隊を探すか。


「これより、我が隊は反転し、イブライム五百騎長らと合流する。では行くぞ」


 俺はそう言い、来た道を戻り始めた。


 魔眼に視点を移すと、イブライム達が慎重に進んでいる。もう残り四メルタル程度の地点まで進んでいるようだ。かなり急いでいるようだな。


 魔眼を目指して林の中を駆けていると、イブライム達を発見した。


「……見失ったのですか?」


 俺を見つけたイブライムが口から綿を吐き捨ててそう言った。俺が隠密行動を続けるように命令したらどうするつもりであろうか。


「いや、アルフレッド派連合軍はマルク・フェルナンドに到着した。我らはモルガン隊と合流する」


「承知しました。では、隠密行動は中止ということでよろしいですか?」


「ああ。馬の口も解いてやれ」


 イブライムにそう言うと、下馬して馬の口を縛っていた布を解いた。それに倣い、兵士達も綿を吐き、布を解いた。


「ジル君、モルガン隊とはどこで合流する?」


 ランベールに馬を任せたローラン殿が訊いてきた。意外と気にしているのか。いや、単に探し回るのが嫌なだけか。


「我が隊が発見するまで動かぬよう指示を出しましたゆえ、ご安心を」


「安心できるものか。どこにいるか分からん部隊を探すのは骨が折れるぞ」


「あちらにいます」


 俺はそう言い、南南東を指した。凡そであるが、モルガン隊はここより南南東に三メルタル弱の場所にいる。


「分かってるならいい」


 ローラン殿はそう言い、馬に乗った。

 全体を見回すと、全兵士の用意が整っていた。


「ではこれより、モルガン隊の捜索を開始する。俺に続け」


 俺はそう言い、南南東に駆け出した。


 駆け出してすぐ、俺は手綱から手を離し、スタニックから貰ったマルク・フェルナンドの地図を見た。ヌーヴェルは俺の意を汲み、モルガン隊に向けてちょうど良い速さで駆け続けている。


 地図を見ると、潜伏先が用意されていた。厩舎付きの豪邸で、家主はアルフレッド派連合軍に降った豪商だそうだ。

 現在、家主はアルフレッドと行動を共にしており、この屋敷は提督府に接収されている。元々、素行の悪い人物であったそうだが、賄賂などでジャンリュック提督を抱き込み、罪を免れていたが、パッセルスによって屋敷は接収され、スタニックの管轄下に置かれたそうだ。

 上級の家人は家主と共に行き、下級の家人は解雇されたが、未だにこの屋敷に住んでいたそうだ。スタニックは彼らに屋敷の管理を任せ、俺達の事も伝達済みであるそうだ。

 最大五十騎のみが潜伏できるそうで、少数精鋭で臨まねばならぬ。


「ジル君、馬術はどこで習った?」


「独学のようなものですが、なぜです?」


「両手を離して足だけで馬を操るのは、双剣使いだけだと思ってな。しかもジル君は、地図を読んでる。馬術に関してだけ言えば、俺より凄い」


「お褒めに預かり光栄でありますが、一角獣(ユニコーン)という魔物です。人間と意思疎通ができますし、世間で駿馬と呼ばれる馬より速く駆けます。ジスラン様にも贈りましたが、ローラン殿にもお贈りしましょうか?」


「帰ってからでいい」


「承知しました」


 ローラン殿は考えるように黙り込んだ。何か良からぬ事を考えておらねば良いが。


 マルク・フェルナンドに潜伏する兵士にローラン殿も加えてしまおうか。アキは当然加えるとして、他はどうしたものか。


 しばらく考えながら進んでいると、モルガン隊を発見した。


「客将様!」


 アキがそう叫び、馬を寄せてきた。一晩離れただけであるが、かなり嬉しそうだな。まあ俺もレリアに対しては、似たような反応をするのであろうが。


「客将閣下、どう致しますか」


 モルガンが来てそう言った。

 俺はスタニックとの会話をモルガン達に伝えた。


「で、どうする?」


「スタニック卿が用意した屋敷に潜伏する。俺、アキ、モルガン卿、ローラン殿とその部下。以上の六名と精鋭四十騎で潜伏する。モルガン卿は精鋭四十騎を選定せよ」


「は。お任せを」


 モルガンはそう言い、兵士を選び始めた。俺は俺でやっておかねばならぬ事がある。

 俺は創造魔法で紙を創った。そして、アクレシスをクラヴジック副城守とし、城守不在の間、その全権を委任する旨の命令書を(したた)めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ