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神に仕える黄金天使  作者: こん
第1章 玉座強奪・諸邦巡遊篇
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第22話

 準備が出来たらしく小屋から出てきた舟乗りのおじさんは早速舟に乗った。


「さあ、どうぞ乗ってください。えーと…」


「クロードだ。お前は?」


「私はミミルと申します。では、クロード様。どうぞお乗り下さい」


 ジルと名乗ると使徒だとバレるかもしれないのでアシル=クロードのクロードと名乗った。


「じゃあ、まず、一枚だ」


「ありがとうございます」


 俺は約束通りに金貨一枚を払う。

 ミミルの舟、ミミル号と呼ぼう。ミミル号はゆったりと進む。


「ところでクロード様はどうして街に?」


「ん?観光みたいなもんだよ」


「観光…ですか?」


「ああ、そうだ。別にやましいことなどない」


「そうですか」


 ミミルは何も言わなくなった。


 半分くらい進んだ所でミミル号より一回りほど大きい舟が来た。舟には十人くらい乗っている。


「おい、そこの舟!日の入りから日の出までは舟を出してはならんぞ!」


「衛兵です。どう致しましょう?」


 ミミルが尋ねてきた。そんなの決まっているだろう。


「近づけてくれ」


「え?しょ、承知しました」


 ミミル号が衛兵号へ近づく。


「よし。じゃあ、行ってくる」


「ご武運を」


 俺はミミルに頷き、衛兵号へ飛び乗る。


「俺の事を誰だと思っている?」


「何?」


「俺は使徒だ」


「嘘つけ。使徒様は今、ドリュケール城にいるはずだ」


「何を見せれば使徒だと信じる?」


「黄金の鎧。それを今代の使徒様は身につけている」


「俺だってなあ、ずっと着けてるわけじゃないんだよ」


 そう言いながら俺は鎧を喚び出す。


「これでいいか?」


「あ、え?う、嘘だろ。な、なあ、お前ら」


 衛兵の代表は後ろの衛兵に助けを求める。後ろの衛兵は既に跪いていた。


「使徒様!どうかお許しを」


「どうか我らの命だけでご勘弁ください」


「我らの妻子はお助け下さい」


 衛兵達がそう言ってくる。


「お前らは使徒をなんだと思ってるんだ?」


「国王陛下が今代の使徒様は悪魔が成り代わった偽者である、と国中に布告を出されたのです。少しは差し引いて見ても悪者なのかと思っておりました。どうかお許しを」


 俺は溜息をつきながら、こう言ってやる。


「今代の使徒はお主らを許す。そして帰りもここを通せ。あと俺がここに来たことを口外するな」


「「「は!」」」


 俺は鎧の召喚を解除し、衛兵号からミミル号へ戻る。


「お待たせ」


「いえ。ところで『使徒』という単語がちらほら聞こえたのですが、クロード様は使徒様の関係者で?」


「隠していて悪かった。俺は使徒のジルだ。クロードというのは相棒の名の一部だ」


「し、使徒様ですと!」


「あー、誰にも言うなよ。さあ、早く行こう」


「はい!」


 ミミル号は街へ向かった。そして到着した。


「はい、これ」


「ありがとうございます」


 俺は約束通り金貨一枚を払う。


「領主の館はどこだ?」


「こちらでございます」


 俺はミミルの案内の後ろをついて行く。


「ここか。大きいな」


「世界公路上に位置する都市であります故、富を築くのには最適なのでしょう」


「どうする?俺は中に入るがミミルはついてくるか?」


「え?危険ですよ」


「わかった。もしかしたら帰れないかもしれないから、もうこれ渡しとくぞ」


 そう言って俺は金貨三枚をミミルに渡し、館の塀を見上げる。二メルタはあるな。


「必ず帰ってきてください。お待ちしておりますので」


「おう!」


 俺はミミルに返事をして塀を登る。

 塀を越えると庭があった。魔術でカルヴィンの気配を探し、そちらに行く。


 館の中は薄暗く、見回りの兵も少ない。なので簡単に辿り着いた。そしてカルヴィンの部屋に入り、カルヴィンを起こさぬ様に慎重に書類を探す。

 カルヴィンの性格ならば、俺関連のことは必ず書類にまとめている。例えば俺の好きな食べ物とかもまとめているのを見た。

 ということで探す。カルヴィンなら、引き出しに入れるかと思い、引き出しを探す。当たりだ。


『ドニス…剣など武器の扱いに優れており、先頭に立ち、兵を鼓舞する役目の方が似合う。豪快な男で…』


 長い。泊まっている宿を探し、この目で見よう。宿はセヴリーヌという女性がやっている宿に全員泊まっているらしい。


 俺は書類を元に戻し、領主の館を出てミミルと合流する。


「よう。戻って来たぞ。ところでセヴリーヌって知ってるか?」


「存じ上げております。宿を営んでいる女性でしたな」


「その宿へ案内してくれ」


 俺はまたミミルの案内について行く。

 すると領主の館の近くの大きな建物の前で泊まった。


「ここです。セヴリーヌさんとは、知り合いですので話を通しましょうか?」


「いや、俺が忍び込む」


「承知しました。この辺りで待っております」


「おう」


 俺はミミルに返事をして壁を攀じ登る。ドニス達が泊まっている部屋は確認してあるので窓から覗いて回る。


 全員を確認し終えたらミミルの所へ戻る。


「目的が達成出来たから今日は帰る。向こうまで頼むぞ」


「よろしいのですか?」


「ああ。夜明けまでに帰らねばならぬ」


 俺はミミルの案内で舟着場に行き、湖へ出る。衛兵が出てきたが俺が乗っていると分かると、すぐに挨拶をして帰って行った。


「じゃあ、俺は帰るぞ。また来る時があったらその時は頼むぞ」


「ええ。どうかお気をつけて」


「あ、そうだ。次からは俺の事をデシャンと呼んでくれ」


「クロード様では無く、デシャン様ですね?」


「ああ、頼んだぞ。じゃあ、俺は帰る」


「お気をつけて」


 俺はミミルに別れを告げて走り出す。

 ちなみにデシャンというのはオディロンと一緒に考えた偽名だ。虎使いのデシャンと名乗ろうと二人で話していたのだ。


 俺は足が速くなる魔法を全力で自分に掛け、走った。

 ドリュケール城が見える頃には日の出が始まり、明るくなり始めた。


 城に近づくと何やら騒がしい。何かあったみたいなので俺は誰にも見つからないようにこっそりと城内に入り、私室に戻る。

 そして置き手紙を処分しようと置き手紙を探すが見つからない。

 まあ、無いなら無いでいいや。


 さっきの騒ぎが気になったので俺は何事も無かったかのように部屋を出る。

 俺の部屋の前にも侍従武官が控えていないので従者達を探す。

 ブレーズがいた。ブレーズはアルノルフ班に所属している従者だ。侍従武官ではないが常に帯剣し、侍従武官と共に俺の部屋の前で剣を抱いて寝ていることもある変わり者だ。

 つまり俺はブレーズはちょっと苦手なのだ。だが情報は欲しいので話しかけずに後を追う。


「いらっしゃったか?」


「いや、こちらにはいらっしゃらなかった」


 アルノルフと会ったブレーズはそう言う。アルノルフとブレーズは幼馴染らしい。同じ年に生まれた奴隷仲間だそうで仲良くしていたらしい。

 二人は城壁の方へ行く。それを俺が追う。

 するとジェローム卿がいた。


「ジェローム様、こちらにもいらっしゃいませんでした」


「そうか。もう一度探してくれ。それと昨晩、ジル卿を城壁で見たと言う兵がいた。夜風にあたりたいと言っていたらしく、ジル卿と別れた後のことは分からないらしい」


 あれ?もしかして俺を探してる?まずいな、言い訳を考えなくては。

 そうだ!魔法の練習で姿を消していたと言おう。


「あ!ジル卿!」


「何?」


 俺の後ろで誰かが叫ぶと皆が駆けつけた。


「ジル卿!今までどこに?」


「あ、いや、あの、こ、ここでは話せないから場所を変えないか?」


「わかった。それ相応の理由があるのだろう。おい、ギスラン。ジル卿は見つかったから今日は解散して良いと伝えろ。それと捜索に参加した者は昼過ぎまでゆっくり休んでいても構わないとも」


 ギスラン卿は一万騎長の一人だ。俺の後ろで叫び、俺の存在を皆に知らせた人だ。


「御意」


「よし。では、ジル卿は俺の部屋だ。アルノルフも参加せよ」


 俺とアルノルフはジェローム卿の部屋までついて行く。

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