表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神に仕える黄金天使  作者: こん
第1章 玉座強奪・諸邦巡遊篇
22/560

第21話

今回は2話投稿しました。

 掃討戦も終わり、ジェローム卿やシモン卿と合流し、報告を聞く。


「ご報告申し上げます。こちら側には死者はおりません。ヴェンダース兵は約三千が死に、捕虜になった者は約千五百、逃亡が約五百です。ヴェンダース軍の指揮官、モーゼスはジル卿が一騎打ちの末、討ち取りました」


 捕虜が千五百か。いっぱい捕まえたな。


「奇妙な装置はどうなった?」


「は。逃走兵が持ち去りました。追撃しますか?」


「いや、その必要は無い。もう下がって良いぞ」


「は。失礼致します」


 ジェローム卿が報告してきた兵を下がらせ、黙り込んで考える。なので俺も考える。


「元凶が帰ったし、もう俺らも帰っていいんじゃないか?」


「ジル卿もそう考えるか?」


「ああ。ジェローム卿も?」


「そうだ。俺とジル卿がここにいる歩兵を率いて先に帰るか?」


「捕虜も?」


「ああ。シモンは騎兵を連れて陣へ戻り、マニュエルやサミュエルに伝え、帰ってこい」


 つまり俺らは陣に帰らずに城へ帰るということか。


「シモン卿、アシルも連れて行ってくれ」


「承知しました」


 アシルも行ってもらおう。


「なぜ俺も?」


「カール達と一緒に片付けて来い。それとオディリグと話せるのは俺とお前だけだろう?」


「オディリグ?」


「オディロンとロドリグ、略してオディリグだ」


「初めて聞いた」


「ああ。じゃあ、頼んだぞ」


 俺はアシルやシモン卿と別れ、ジェローム卿と歩兵を指揮する。そのつもりでジェローム卿について行ったのだが俺は最後尾から逃げないように見張っていろとのことだった。指揮官を倒した俺をヴェンダース兵は恐れているらしい。

 ヴェンダース兵に畏怖されている中、俺はカミーユと話した。


「カミーユ、家建てるの聞いたか?」


「ええ。二軒建てるのですよね」


「俺の家とアシルの家だ。カミーユはどっちに来る?」


「ご主人様の家に行きたいです」


「俺の家は十部屋くらい作るのだが俺の隣の部屋に来いよ」


「よろしいのですか?」


「ああ。家を建てたら何人かに常駐してもらう。その人材をまた街に探しに行くからフィデールも誘っておいてくれ」


「承知しました。ところであの兵、逃走しようとしてませんか?」


「ん?どの兵?」


「あちらの…」


 カミーユが指差す方を見るとヴェンダース兵がサヌスト兵に殴りかかっていた。ヴェンダース兵の武具は回収してあるので殴り掛かるしかないのだ。ん?手、縛られてなかったか?まあ、いいや。

 俺はそこまでヌーヴェルで駆った。


「おい、貴様!逃げる気か?」


「ひ、……!」


「ヴェンダース語は分からん。サヌスト語で話せ」


「…………!」


 ヴェンダース語で何かを叫ぶとヴェンダース兵が暴れだした。


「おい、誰かヴェンダース語を話せる者はいないか?」


「あ、少しですが話せます」


「では、ヴェンダース語で『鎮まれ、ヴェンダース兵!暴れる奴は斬るぞ!』と叫んでくれ」


「承知しました。……!……………!」


 俺はヴェンダース語が話せるという歩兵にそう叫ぶように頼んだ。その兵が叫んでいる間に剣を抜く。さっき投げたりした武器は召喚を解除すると消えてもう一度召喚すると俺の手元に手入れがされた状態で戻ってくる。


「ジル卿、ヴェンダース兵は逃げようとした訳ではないらしいです。『敵に捕まるくらいなら、一人でも多くの敵を道連れにして死んでやる。モーゼス様を討った死神を殺す』と、言っております」


「死神って俺か?」


「おそらくそうでしょう。如何致しますか?」


「誰かジェローム卿に伝えろ。『捕虜が暴れている』と。残りは剣を抜き、警戒せよ。身の危険を感じたら斬ってもかまわない」


 俺は歩兵たちに指示を出し、ヴェンダース兵を威嚇する。

 するとヴェンダース兵が覚悟を決めたのか、襲いかかってくる。

 俺はヌーヴェルの前脚をあげてそのまま、向かって来たヴェンダース兵の顔面をヌーヴェルの前脚で踏みつける。確かクールベットという技だったような気がするがまあ、難易度が高いらしい。

 それを合図としたのか、ヴェンダース兵が襲いかかってきた。


 勝てぬと悟ったのかヴェンダース兵が大人しくなった頃、ジェローム卿が駆けつけてくれた。


「ジル卿、暴れた捕虜は斬ってもかまわない。いや、十人暴れたら十人全員斬れ」


「わかった」


 ジェローム卿はそれだけ言うと帰っていった。

 俺は歩兵たちに指示を出し、暴れた捕虜を全員斬った。


「報告致します。ヴェンダースの捕虜百八名が暴れ、死にました。こちら側は打撲などの軽傷が三十八名でした」


「わかった。では、行くぞ。ジェローム卿の隊に追いつかねば」


 俺は捕虜に目を光らせながら城へ向かった。


 あれ以降何事もなく、ドリュケール城に着いた。城に着く頃には夜だった。アシル達は明日、帰って来るらしい。

 夜ご飯を食べた後、部屋に戻り、アルノルフの報告を聞いていた。アルノルフはアルノルフ班の班長だ。カルヴィンが往復鳩で毎夜、手紙を届けてくれ、翌朝、返事をあちらに届けてくれるのだ。


「カルヴィンから何か報告があったか?」


「はい。昨日の朝、出発し、昼前には街に着いたようです。昨日は領主への挨拶などで人材を探す時間がなかったそうです」


「今日は?」


「本日は二十名程見つかったようです」


「面白そうな者はいたか?」


「鳩が運べる情報が少ないので一人分の情報しか届いておりません」


「どうだ?そいつは面白そうか?」


「私は判断しかねますが手紙にはこう書いてありました。『酒場で見つけたドニスという男は自分で世界一の弓の使い手と言っていた。また本人曰く、他の武器、剣や槍などもそこらの兵より上手く使い、負けた事がない』と。性格などは書かれておりませんでした」


「なるほどな。返事は書けるか?」


「なんと伝えるのでしょうか?」


「『五十人集まる毎にこちらに向かわせろ。無事に到着したら使徒と会わせてやると言って』って書いて欲しい」


「承知しました」


「そういえば、エジット殿下からは何も無いのか?」


「ご主人様宛には無いようです」


「わかった。返事を鳩の管理人に伝えてくれ」


「承知しました。では、失礼致します」


 アルノルフは鳩の管理人に伝えに行った。

 誰もいなくなったし、街まで行ってみるか。明日の朝までに戻れば問題あるまい。念の為に置き手紙を置いていこう。『少し出掛けて来る』と。

 お金は確かアシルが半分くらい持ち歩いているが半分はどこかに隠している。多分暖炉の奥だな。

 暖炉を探るとあった。金貨しか入ってない。まあ、いいか。どこかで両替してもらおう。


 俺は部屋を出て城壁へ登る。見回りの兵士がいるな。


「これはジル卿。夜分遅くにどういたしたのですか?」


「おう。ちょっと夜風にあたりたくてな」


「は。では、私は失礼致します」


「おう。頑張れよ」


「ありがとうございます」


 兵士が頭を下げて向こうに行った。

 俺は城壁から飛び降りる。下に向けて風魔法を撃ち、衝撃を和らげる。


 そして俺は走り出す。街の場所は大体わかるからそちらに向かって走る。オディロンに掛けてもらった魔法を思い出し、それを自分に掛ける。すると景色が速く動いた。否、俺の足が速くなったのだ。


 街が見えてきた。街は湖の中心にあるのだがその湖を渡る為の舟があった。その近くの小屋を訪ねる。


「おーい!誰かいないか?」


「誰だ、こんな夜遅くに」


「向こうまで渡りたいんだが」


「日の出から日の入りまでしかやってないよ」


「その間の料金は?」


「銀貨一枚だ」


「そうか。結構するな。まあ、いいや。早く乗せてくれ」


「いや、だから太陽が出てから来い」


「金貨一枚払おう。向こうに無事着いたらもう一枚。向こうで案内をしてくれたらもう一枚だ。そして無事ここまで戻って来れたらもう一枚。最後におまけで一枚だ」


「き、き、金貨五枚!」


「ああ、そうだ。舟を出してくれるな?」


「あの、もしかして貴族の方ですか?」


「貴族ではないが貴族みたいな感じだ」


「な、なんと!先程の御無礼、どうかお許しを」


「うむ。行ってくれるな?」


「私は行きたいのですが、日が沈んでいる間は舟を出してはならないのです。どうかお許しを」


「責任は俺が持つ」


「で、では、すぐに準備をしますので少々お待ち下さい」


 そう言って舟屋は小屋に入っていった。説得するのにこんなにかかるとは思わなかった。

読んでくれた方は評価とブクマをしていただけると嬉しいです。

下にスクロールするとすぐですので。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ