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神に仕える黄金天使  作者: こん
第1章 玉座強奪・諸邦巡遊篇

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第212話

 翌朝。目を覚ますと、レリアが朝食を食べていた。俺の分も用意してもらい、共に食べた。


 朝食後、アシルに呼び出され、別館を出た。三番勝負の最終戦で使ったような家がいくつかあるらしく、そのうちのひとつを借りたらしい。

 俺とレリア、それからなぜかルチアもついてきた。ファビオ達は数日前からジスラン様の第二夫人とその子供と一緒に遊んでいるらしい。


「兄上、義姉殿。ひとつ聞いて欲しい」


「わざわざ呼び出さねばならぬ程の事か」


「ああ」


「あたしにも関係するの?」


「関係すると思う」


「ルチアもですか?」


「あんたは関係ない。それよりも喋らせてくれ」


「すまぬ。続けてくれ」


 話を遮ってしまったか。まあアシルがここまで徹底して秘密を守ろうとするのだ。おおごとであろう。


「驚かずに聞いてくれ」


「ああ。余程の事では驚かぬ」


「ヤマトワの将軍がリンタロウ殿を処刑した。ミミル達は国外追放だ」


「何と…!」


 リンタロウ殿が処刑されたとは…やはり開国の件であろうか。いや、そもそも俺達を招き入れたからか…?それなら本当に申し訳ない事をしたな。


「ショータ殿らは流刑に処され、シガマトンは将軍の直轄地に戻った。開国は失敗だそうだ」


「何と…誰が伝えた?」


「タカミツ殿の部下、シンと言う(ドラゴン)だ。ラポーニヤ城で待ってもらっている」


 タカミツ殿の部下のシン…あの重鎮か。副官のような(ドラゴン)であったが、わざわざ来てくれたのか。まさかアキ達を返せとは言わぬだろうな。もう返せぬぞ。


「わざわざ危険を冒して来てくれたのか」


鏖軍(おうぐん)三名の見張り付きでな」


「鏖軍?」


「将軍直属の最精鋭部隊。総数は不明。シン殿によると、三十万の騎兵隊も十人いれば半日足らずで皆殺しに出来る」


「何と…」


「それが兄上の城に三人いる。放置はまずいぞ」


「魔界諸侯がいるであろう?」


「…負けないが勝てもしない、と言っている」


「そうか」


 まずいな。早く帰ってもらわねば。だが俺が暇なのは今日だけだ。今日だけで終わると良いが…


「ねえ、今日は色々手続きをするって言ってたけど、それが終わってからにしようよ。ヤマトワの人も悪気はないと思うけど、やっぱりそんな人は怖いよ」


「その通りだ。ではこうしよう。その鏖軍とやらには俺が会って帰っていただく。そして明日までに戻る」


「異論はない。ただ、義姉殿はここにいた方がいい。危ない」


「ああ。もちろんだ。念の為、ジスラン様達に伝えておこう」


 ジスラン様やローラン殿であれば、腕は確かだ。それにいざとなれば、王都に逃げ込める距離だ。


「ああ。そちらは頼んだ。俺は王宮に伝える」


「分かった。ではルチア、アシルについて行け」


「いらん」「嫌ですよ」


「…すまぬ」


 そんなに嫌か。同時に断る程互いが嫌いか。部下同士の仲も見ておかねばこういう時に困るな。気をつけよう。


「では後程会おう」


「ああ」


 俺はレリアとルチアを連れ、屋敷に向かった。その間に武装しておいた。

 屋敷に入ると、ローラン殿と会ったので、ジスラン様の居場所を聞いて案内してもらった。


 ジスラン様は庭で木を木剣で殴っていた。鎧を纏った俺を見て何かあったと悟ってくれたようだ。


「ジスラン様、ご報告とお願いが」


「そんなに急いでどうした?」


「ヤマトワと言う国から使者が来ておりまして、それがかなり厄介なのです」


「厄介?」


「ええ。十人で三十万の騎兵隊を撃ち破るとか。とにかく、厄介なのです」


 細かく説明しても分からぬだろう。それに手強いと言うと軍を連れて行け、などと言われるかもしれぬ。厄介程度に留めておかねば。


「それでどうした?まさか帰るのか?」


「明日には戻ります。ですので、それまでレリアと我が弟妹の護衛をお願いします。いざとなれば、王都に逃げ込んでください。王宮にも知らせてありますから」


「分かった。そのコンツェン人は?」


「行きます!死ぬにしても、生き延びるにしても、こんな大事そうな時のジルさんを見逃すなんてできません」


 俺の後ろでルチアが手を挙げてそう言った。俺が死ぬかもしれぬと思っているのか。舐められているな。


「この通り、少々懐かれていまして。ですがご安心を。ジスラン様が心配なさるような事にはなりませぬ。では」


「ちょっと待て」


 俺がジスラン様に一礼して出て行こうとすると、ローラン殿に呼び止められた。まさか行くなとは言うまいな。


「俺も連れてけ。昨日の事、ジル君が許してくれても俺が許せん。足でまといなのは承知だ。守ってくれる必要は無い」


「ご自由に。ですが、気は遣いませぬぞ」


「それでいい。レリアたん、逃げる時はピートラス村に行け。俺の家の地下室なら十日は篭もれる」


「ありがと、叔父さん」


「おうよ」


 俺はレリアに手を振り、ヌーヴェルを喚んで乗った。仕方ないのでルチアを小脇に抱えている。ローラン殿には一角獣(ユニコーン)を出してやった。普通の馬では追いつけまい。


「兄上!」


 愛馬(ルドゥ)に乗ったアシルが来た。アシルもちゃんと武装している。


「アシルか。行くぞ」


「ルチアの事、何とかなりません?」


「ならぬ。これが嫌ならおいて行く」


「これはこれでいいですけどね。密着できるから」


 もう一頭一角獣(ユニコーン)を出しても良いが、ルチアが嫌だと言ったのでこうしているのだ。馬術は無理らしい。それに良く考えれば、鏖軍と言えど、魔属性のはずだ。天属性(ルチア)を連れてきて正解だ。


 夕方までかかるはずの道程であったが、昼食前にはラポーニヤ城に到着した。アルフォンスの出迎えがあり、シンと鏖軍の三名がいる部屋まで案内された。

 シンはともかく、鏖軍の三名はかなり強そうな気配を感じる。武装はジャビラ刀のみであるが、一人二本帯刀している。


「お待たせした」


「ジル様、私、タカミツ様麾下の重鎮シンであります。どうかお見知りおきを」


「ああ。知っている。それより本題を」


「はは。タカミツ様からの書状を読み上げます。『アベ・リンタロウは将軍に切腹を命ぜられた。リンタロウは介錯人をつけず、自室で腹を切り、家臣三名が追腹を切った。サヌスト王国からのヤマトワ人ショータとその一族はセルイヤ島に流された。ジル殿の知り合いの商人ミミル殿らは国外追放処分となった。シガマトンは将軍家直轄地になり、我が屋敷も接収された。異国船打払令が発せられ、鏖軍がその任務に当たる。例外として、ジル殿の下にいる魔法兵とその家族の帰還は認められる』以上が一通目です」


「二通あるのか」


「はは。読み上げます。『アキ、ユキ、カイの三名はジル殿の判断に一任する。本人達は帰還を望まないだろうが、帰しても帰さなくても良い。帰さない場合、姉弟のうち一人以上と、ジル殿かその血族が婚姻を結んで欲しい。それに伴い、龍の子(タツノコ)の生態についての書物を送る。どうか孫を頼む』以上が二通目です」


「二通だけか」


「いえ、合計六通あります。そのうちの一通はアキ様に、一通はユキ様に、一通はカイ様に宛てられております。もう一通はアキ様方ご姉弟がこちらに残り、そのうちの一名以上がジル様及びその血族と婚姻を結んだ場合に渡すよう、仰せつかっております。それと、先程の書状にありました、龍の子(タツノコ)に関する書物はこちらです」


「分かった。考えさせてくれ」


 アキがこちらに残るには俺の血族、つまりはアシルかルカと婚姻を結ばねばならぬようだ。という事はカイとルカ、又は、アキとアシルが婚姻を結ぶ必要があるが…後者は無理であろう。となるとルカとカイが婚姻を結ぶのか…

 ファビオとユキは許嫁ではあるが、ファビオは俺の血族ではない。ファビオもウルも、名も知らぬ人狼の遺児だ。

 となるとどうすべきか…本人に相談するにしても、アキは山篭り中でキアラが近付けさせてくれぬであろう。

 仕方ないが、待ってもらうしかあるまい。


「まず、タカミツ殿にお伝えいただきたいことがひとつ。ユキは我が弟ファビオと許嫁となった。これは互いの兄姉と本人が望んだことであることをお伝えいただきたい」


「ユキ様が…しかしファビオ様はジル様の実弟では…」


「ああ。違う。そしてアシルとアキの仲は…その…なんと言うべきか…」


「悪い。正直言うと、俺は帰ってもらって結構だが、それはあくまで私人としての答えだ。サヌストの為を思えば、残ってもらった方がありがたい。これが公人としての答えだ。が、さすがに婚姻は結べない」


 ずっと黙って聞いていたので忘れていたが、アシル達がいたのであった。


「ならばルカとカイを…か?」


「兄上が第二夫人を迎える()もあるぞ」


「レリアの叔父としての意見になるが、俺は構わん。兄も第二夫人がいる。文句は言えんさ」


 ローラン殿はそう言うが…悩ましいな。そもそもアキをそういう目で見れるかどうか…いや、アキ自身の意見もある。山篭りが終わるまで待ってもらうしかあるまい。


「シン、いつまでの滞在が許されている?」


「年内に帰還せよ、とのご命令だ。それ以後も大陸(こちら)に滞在するようであれば、首だけで帰国することになる」


 鏖軍の一人がそう言った。首だけで帰国か。さすが可哀想だ。だが年内なら答えは出るであろう。


「シン、アキは今、俺の支配下にある山で修行中だ。カイとユキはとある人物の屋敷にいる。これから俺達はその人物の屋敷に帰る。シンはどうするか」


「は。アキ様を訪ねようかと」


「分かった。では案内人をつけよう」


「ありがたい。それともうひとつお願いが。この書状をユキ様とカイ様にそれぞれお渡し下さい」


 俺はシンが差し出した書物と書状を全て受け取った。後でレリアに見せて相談しよう。


「ああ。では案内人が来るまで寛いでいてくれ」


 俺はそう言い残して部屋を出た。誰を案内人にすべきか…


「ジル様、我が行ってやろう。キアラ様に現状も伝えたい」


 アルフォンスと共にこの城を護る、クラウディウスが来てそう言った。クラウディウスなら戦力的にも安心だ。それに雷電龍軍と共闘したこともある。任せられよう。


「ではクラウディウス、ラポーニヤ山にシンを案内せよ」


「承った」


 クラウディウスはシン達のいる部屋に入っていった。

 俺はとりあえず自室に戻り、茶を頼んだ。休憩せねば帰れぬ程疲れた。

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