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神に仕える黄金天使  作者: こん
第1章 玉座強奪・諸邦巡遊篇

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第209話

 夜間に襲撃が来ることは無かった。いや、外側の結界に何かが触れていたので、襲撃しようとしたが敷地内に入れなかっただけかもしれぬな。


 朝になり、プリシラが起きてきた。俺は水魔法で水を用意して、朝食を待った。昨日の夕食の残りを朝食に使おうとしていたので、異空間に入れていた料理を食べた。


「今日も()()を聞いてもらってもいいですか?」


「ああ。言ってみよ」


「昼食を持って、どこか見晴らしのいい場所に行きたいです」


「…逃亡生活という設定を忘れたのか」


「たまには息抜きも必要かと思うのですが」


「それもそうか」


 そうは言うが、逃亡生活(設定上)はまだ二日目だ。息抜きするほどでもあるまい。まあ()()であれば行かぬ訳にはいかぬが。


「じゃあ、お弁当を作りますね」


「ああ。妙なものを入れるでないぞ」


「…!はい」


 鎌をかけてみたが、こんなにも分かりやすい反応があるものか。やはり昨夜の毒は自分で入れたのか。

 何か毒を探知できるものはないか…ラヴィニアに毒見でもさせるか。いや、部下は俺に構えぬ設定であったな…相談だけでもしてみるか。

 俺は左手からラヴィニアを出した。今ならプリシラは厨房に行っており、ラヴィニアを出しても姿は見えぬ。


「ラヴィニアよ、何か良い案はないのか?」


『ラヴィニアを人形として扱えばよろしいかと』


「その手があったか。では動くでないぞ」


『了』


 ラヴィニアはそう言うと、力が抜け、人形のように倒れた。

 ちなみにラヴィニアは妖魔導王様との戦(誤解であったが)の後、『ラヴィニアは準妖魔導王ジル・デシャン・クロード様に絶対服従し、これまでの常識に従わず臨機応変に対応し、秘匿すべき情報は誰に対しても明かしません』と書かれた看板を首からぶら下げて帰ってきた。

 とにかく、ラヴィニアを毒見役にすれば良い。毒くらい分かるであろう。

 後はどうやって渡すかだが…まぁ断れなさそうな理由をつければ良かろう。


 居間で魔王の手記を読んでいると、プリシラが箱を抱えて戻ってきた。


「お待たせしました。行きましょうか」


「待て。ルカから預かっているのを忘れていた」


「ルカ…?」


「忘れたのか。俺の妹だ」


「ああ、そうでした。それで、何でしょう?」


「これだ。ルカのお気に入りの人形だそうで、御守りに、と渡してくれた。俺達が食事をする前に食べさせてやらねば、機嫌が悪くなるそうだ。子供の戯言かもしれぬが、念の為にな。安心せよ、作法は習ってきた」


「それならお任せします」


 少々強引だが、別に良かろう。ルカは人形遊びなどせぬだろうし、そもそも大人が人形に食事をさせるなど正気とは思えぬ。だが、たまには道化を演じるのも良かろう。

 ラヴィニアを弁当箱に詰め、それを異空間にしまい、外に出た。


「おっと」


 どこからか矢が飛んできたが、結界に防がれた。魔眼を暗殺者捜索に出しておこう。発見できれば倒せるはずだ。


「行くぞ」


「はい。徒歩ですか?」


「どちらで良いぞ。馬でも徒歩でも、俺が背負ってやっても良い」


「そんな…背負ってもらうなんて………いいんですか?」


「…構わぬぞ」


 冗談で言ったつもりだが、本気にされるとは…まあ俺が走るのが一番速いのだが。

 プリシラを背負い、狼化した。この姿は速いし、何より気に入っている。妖魔導王様が考案した姿は速いかもしれぬが、あまり好まぬ。最終手段に取っておけば良い。


「これは…」


「掴まり易かろう」


「はあ」


「で、どこに行く?」


「案内します。まず丘を下ってください」


 俺はプリシラの案内に従って駆け出した。俺はこの辺りに土地勘が無いので、おすすめの場所などない。全てプリシラに任せるしかあるまい。


 しばらくプリシラに従って駆けると、昨日とは違う山に登った。

 到着地は、巨大な岩が突き出されて崖となっており、見晴らしの良い場所である事は確かだ。それに近くに小川がある。まあ水は俺が用意した水魔法を使うので関係ないが。


「思っていたより速かったです」


「そうか」


 俺は人の姿に戻り、岩の先端に座った。俺が大丈夫ならプリシラも大丈夫であろう。何しろ俺は常人の三倍以上の体重があるのだから。


「食べぬのか?」


「あの、ちょっと水を汲みに行ってきます」


「いや、川の水など綺麗かどうか分からぬ。腹でも壊したらどうする?」


「安心してください。この川は綺麗な川です。それにせっかくここまで来たんですから、ここの水を飲みましょうよ」


「…分かった」


 もしかすると、これも要望のうちの一つかもしれぬ。天眼を護衛につけ、俺は弁当の用意をした。制御眼を開けば見えるので、二つくらいなら目を離しても大丈夫だ。力加減に気をつけねば弁当箱どころか、大陸を砕きかねぬところが難点ではあるが。ちなみに魔眼や天眼を眼窩から出す時は、その目の色にあった義眼を創造魔法で創って入れている。


 プリシラが戻ってきた。何も持っておらぬ。天眼で見ていたが、しばらく川を眺めていた。水を汲みに行ったのではなかったか。


「川が涸れていたのか」


「…水筒を忘れました」


「そうか。一緒に行ってやろう」


「ありがとうございます」


 俺はプリシラに気付かれぬように天眼を戻し、制御眼を閉じた。これで安心して動ける。


 小川に着き、プリシラが水を汲んでいると、上流から炎が流れてきた。何者かが油を流して火を放ったのであろう。ジスラン様かベルトラン様が放った暗殺者であろうな。

 俺は川の水を凍らせ、壁を作って炎を防いだ。魔力を流し続ければ、氷は溶けぬ。


「プリシラ、水は汲めたか?」


「はい!」


「では行くぞ。俺に乗れ」


「失礼します!」


 プリシラを背に乗せ、狼化して駆け出した。

 昼食を置いてきた場所に戻り、昼食を回収して崖を飛び降りた。十メルタ以上はあるが飛べるので問題ない。


「旦那様まで死んじゃいますよ!」


「安心せよ。俺は死なぬ」


 俺はプリシラを落とさぬように翼を広げ、山頂に向けて空を駆けた。山頂であれば上から火が来ることはあるまい。


「あわわわ!どこに…どこに、行くんですか?」


「山頂だ。そこなら見晴らしも良かろう」


「まだそんなことを…?」


「ああ。プリシラの要望は叶えてやるように、とのご命令だ」


 俺は山頂に降り立ち、プリシラを降ろした。先程の場所より見晴らしが良い。家も小さくだが見える。

 昼食の準備をする間、魔眼を呼び戻して天眼を暗殺者の捜索に出した。


「何をなさっていたんですか?」


「何でもない。小鳥が来たので撫でてやっただけだ」


「そうですか。昼食の準備が出来ましたよ」


「そうか。では食べよう」


 俺の天眼や魔眼が独立した行動できる事はなるべく秘密にしておきたい。下手な誤魔化しであったが、まさか目を飛ばしているなど想像もつかぬであろう。

 ラヴィニアに全品一口ずつ食べさせてから、俺達も昼食を食べ始めた。


 俺は天眼の視界に集中しながら昼食を食べた。プリシラの会話は適当にしておけば良い。


「いた」


「何がですか?」


 プリシラと話していると、暗殺者を見つけた。四名いる。一人はローラン殿だ。

 つい声に出てしまったか。誤魔化さねば。


「いや、先程撫でてやった小鳥があそこにいるであろう」


「どこですか?」


「今日泊まった家の屋根に五羽ほど留まっているだろう。右の二羽が先程の鳥だ」


「…見えません…目がいいんですね」


「ああ。目は良い方だ」


 何とか誤魔化せたようだ。

 プリシラを誤魔化している間にもローラン殿達は山を下っている。天眼でも充分勝てるであろうが、本拠地に案内させた方が良かろう。


「そろそろ帰りますか?」


 天眼がローラン殿達を追跡していると、昼食を片付けたプリシラがそう言った。


「今日の夕食は何だ?」


「まだ決めてませんけど」


「ならばシチューを主菜に考えよ。何か狩る」


「今からですか?」


「ああ。行くぞ」


 俺は狼化し、翼を生やしてプリシラを乗せて飛び立った。プリシラは俺に乗る時、狼の体毛にしがみついているので、今回もそうした方が良かろう。人の姿のまま髪の毛でも掴まれたら動きにくい。

 俺は弓矢を取り出し、獣を探した。探してみると中々おらぬな。まあそのうち見つかるであろう。


 しばらく飛ぶと、鹿を見つけた。ちょうど良い。

 俺は矢を番え、狙いを定めた。幸い、こちらには気付いておらぬ。気付かれる前に矢を放った。無論、風魔法で補助をし、命中率をあげている。

 俺が放った矢は鹿の後頭部に命中し、鹿を絶命させた。即死であろう。俺の弓の腕も上がったものだ。


「すごい強弓ですね…」


「ああ。弓など強い方が良い」


「そうなんですか?」


「使えるのであれば、ではあるが」


 鹿のすぐ傍に降り立ち、小川の近くまで運び、プリシラに処理を任せた。先程の小川とは違うので、綺麗な川であろう。


「すごいですよ。口から鏃が出てます」


「頭蓋を砕いたか」


「それは分かりませんけど」


「そうか」


「ちょっと手伝ってください」


「ああ」


 俺はプリシラの指示に従って鹿の処理をした。血抜きなどは水魔法が便利であった。水魔法で血を全て体外に出したり、手を洗ったり、色々と便利だ。

 内臓などは適当に埋めておいた。土に還るだろう。


 肉を異空間にしまい、時を止めておいた。これで腐らぬ。プリシラが記念に、と矢が刺さったままの鹿の頭を持っていこうとしたので、俺の異空間にしまっておいた。どうにか処理せねば。


 家に帰り、夕食を待った。今日の鹿の肉を全て使ったようだ。まあそれくらい食べるので良いが、明日の分はどうするのであろうか。


 夕食後、片付けを終えたプリシラを個室に帰した。天眼で追っていた暗殺者の本拠地を潰しておこう。

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