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神に仕える黄金天使  作者: こん
第1章 玉座強奪・諸邦巡遊篇
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第20話

 俺らが駆けつけると多くの騎士が倒れていた。ヴェンダース騎兵である。


「シモン卿!」


「おお!これはジル様。魔物の方は倒されたのですな?」


「ああ、もちろん。シモン卿もだろ?」


「ええ。あえて三騎程逃がし、敵の本陣を攻めようかと」


「ここにいる人数で?」


「いえ、援軍を呼びました。ジル様が強いとは言え、ヴェンダース兵の本陣です。さすがに無理があるかと」


「まあな」


 この人の中で俺はどれくらい強いのだろうか?そういえばシモン卿の剣技はまだ見たことがないな。ぜひ見てみたい。


「ご主人様、よろしいですか?」


「どうした、カミーユ?」


 カミーユも俺の従兵としてついてきている。従兵とは戦場の従者みたいなものだ。


「ヌーヴェルはいかが致しましょうか」


「ああ、もう乗っておくよ」


「承知しました」


 俺はヌーヴェルに乗る。さっき、ヌーヴェルから飛び降りた後カミーユがヌーヴェルを回収したのだ。まあ、ヌーヴェルは俺に懐いているから呼んだら来ると思うが念の為にカミーユが回収したのだ。


「アシル、負傷兵はどうなるのだ?」


「シモン卿が手配しているだろう。心配ならシモン卿に聞けば良い」


「そうだな。シモン卿が忘れるわけないか」


 俺がアシルと話していると遠くでラッパがなったような気がする。確かこのラッパはビューグルと呼ばれる物だ。一般的には軍隊ラッパと呼ばれ、軍隊の合図、例えば『突撃』とか『退却』とか色々使われるらしい。


「アシル、今ラッパが鳴ったよな?」


「ジル殿も聞こえたか」


「ああ。今のはどういう意味だ?」


「恐らく『集合』的な感じだと思うが分からん」


「シモン卿に聞くか」


「そうしよう」


 俺とアシルはシモン卿の所へ向かう。後ろからカミーユがついてくる。


「シモン卿、先程のラッパは?」


「本陣に遣わした者が鳴らしたのでありましょう。近くの者は集まれ、と」


「なるほど。ところで敵陣に攻め込むのにジェローム卿やマニュエル卿の許可はいらないのか?」


「これでも私は一万騎長です」


 一万騎長とは一万騎が所属する部隊の長だ。つまり、シモン卿には一万人の部下がいるということだ。


「それに先に国境を侵したのはヴェンダース兵です。私はこれを撃退するだけですので事後報告でも大丈夫なのです」


「以前にもこういうことが?」


「ええ。二、三度ございました」


「じゃあ、大丈夫か。ところで何人呼んだんだ?」


「敵の数が分かりませんのでできるだけ多く、と伝えました」


「なるほど」


 そういえば、そうだな。敵の数が分からない以上、出来るだけ多く呼ぶのが普通か。


「ご報告!ここより北に三・五メルタル程に敵陣を発見!」


「規模は?」


 伝令兵の報告を聞きながらシモン卿は水筒を手渡す。


「は。推定ですが約五千騎でした。敵陣の中心にはなにやら奇妙な装置がございました」


「わかった。では、援軍が到着次第、攻め込もう」


 ジェローム卿みたいに判断が早いな。


「シモン卿、援軍はいつ頃着くのだ?」


「恐らくもう到着するでしょう」


「わかった。ところでシモン卿とかジェローム卿って判断が早くないか?」


「ええ。一軍を預かる者として当然のことであります。指揮官が退き時を見誤れば兵が死にます。そうならない為にも普段から早く、そして正確に判断をするよう努力をしております」


「なるほど…」


 そうか、そうだよな。俺も近々、直属部隊が作られるから気を付けよう。


「シモン!ヴェンダース兵の陣に攻め込むと聞いたが」


「将軍!援軍が到着次第、攻め込もうかと。将軍自ら援軍に来て下さるとは」


「気にするな。作戦は?」


「援軍の規模を確認してから考えようとしておりました」


「規模は歩兵八千に騎兵五千だ」


「では、騎兵三千と歩兵四千が正面から攻め、残りを騎兵千と歩兵二千に分け、それぞれ左右から攻め込み、なるべくヴェンダース兵を逃がさぬように致しましょう」


「俺の案と凡そ同じだ。俺が本隊を、ジル卿が左翼部隊を、シモンが右翼部隊を指揮する。他に意見は?」


「ございません」


 あっという間に決まった。俺が左翼部隊の三千を率いるらしい。


「ジル卿は?」


「俺もない」


「では、行くぞ」


 俺達はそれぞれの部隊を確認して出発する。出発する時にこう言う。


「ジェローム隊、出撃!」


「ジル隊、出撃!」


「シモン隊、出撃!」


 これを言い、俺は北北西に向かって進む。案内の騎士の後ろをついて行く。この騎士はヴェンダース兵を追跡した隊の一人だ。各部隊に一人ずついる。


 森を抜けると敵陣が見えた。ヴェンダース兵に気づかれないように隠れる。

 作戦はこうだ。まず、ジェローム卿の部隊が正面から攻め込む。ヴェンダース兵が広がったらヴェンダース軍の右翼部隊を俺らが攻撃する。ヴェンダース兵が広がらなかったらヴェンダース軍を二つに分断するように真ん中を攻める。ちなみにシモン卿の仕事は広がった場合は左翼部隊を攻撃し、広がらなかった場合はヴェンダース兵が逃げれないように回り込んで蓋をする形だ。


「…………!」


 ジェローム卿が何かを叫ぶと本隊が雄叫びを上げて突撃した。

 ヴェンダース兵は慌てて馬に乗ろうとするが南側にいた兵士は間に合わぬと判断したのか馬には乗らずに迎撃している。


 俺はヴェンダース兵が広がったかどうかを見なくてはならない。

 あれは広がってるかな。まあ、向こうで臨機応変に対応しよう。

 俺は突撃の為に号令をかける。


「我が隊にヴォクラー神のご加護があらんことを!」


「「「ヴォクラー神のご加護があらんことを!」」」


「突撃!俺に続けぇ!」


 俺の号令で左翼部隊が雄叫びを上げて突撃する。

 ちょうど、シモン卿が率いる右翼部隊も突撃を開始したようだ。シモン卿は広がらなかったと判断したようだ。俺もそうしよう。

 俺が進路を変更すると左翼部隊も進路を変更する。

 俺は進みながらも、ヴェンダース兵を斬る。どうやら側面に対しては油断していたようで一合も交えずに斬れる。

 すると俺の前に他の兵士とは少々違う鎧を纏った騎士がでてきた。


「貴様はサヌスト軍の将か?」

 

 サヌスト語で話しかけられた。


「いかにも!」


 だからこう言っておいた。


「我はこの部隊を率いるモーゼスだ。一騎打ちがしたい」


「受けて立とう!」


 俺がそう言うと周りにいた兵が敵味方関係なく円を作った。この中心で戦うというわけか。面白い。


「では、参る!」


「どこからでも来い!」


 モーゼスは様子を窺ってなかなか攻めてこないので俺はモーゼスを観察する。モーゼスは右手に剣を持っているくせに背中にも二本、剣を背負っている。鎧は全力で斬れば破壊できるであろう。

 観察し終わったのにモーゼスが攻めてこないので俺から攻めよう。


 俺はモーゼスの心臓目掛けて剣を突き出す。それをモーゼスは剣で逸らし、剣を絡め取ろうとする。なので俺はあえて手を離した。予想に反する行動だったのか少しモーゼスが慌てた。

 その隙に俺は背中の短剣を一本抜き、構える。


「それで戦うのか?」


「だったらどうする?」


 俺は短剣を逆手に持ち、モーゼスの顔目掛け、突き出す。そしてそのまま短剣を投げる。それをモーゼスが弾いている間に槍を召喚する。

 そしてそのまま、モーゼスの剣目掛けて突き出し、剣を落とす。


「その槍はどこから出した?」


「教えるわけないだろう」


 モーゼスが背中の双剣を抜くのを待つ。

 モーゼスが攻めてきた。モーゼスは右手の剣で俺の心臓を、左手の剣で首を狙う。俺は右の剣を槍で受け止め、左の剣を避ける。そのまま俺たちはすれ違う。


「貴様はなぜ殺さない?」


「と言うと?」


「いくらでも隙はあったはずだ」


「理由なんてないさ。ただ、強敵との戦いを楽しんでるだけだ」


「フッ、バカめ。そのようなことをしていたらいつか死ぬぞ」


「そうか。では、さらばだ。モーゼス、俺はお前を敬意を持って殺そう」


「やれるもんならや…って…」


 モーゼスが言い終わらぬうちに俺は槍を投げ、モーゼスの心臓を貫く。モーゼスは驚いたように落馬し、絶命した。

 ヴェンダース兵は戦意を無くしたように武器を捨て、鎧を脱ぎながら逃げ出した。


「一兵も逃がすな!」


 俺はそう指示を出す。サヌスト兵がヴェンダース兵の後を追い、殺していく。


「降参した者は助けよ」


 一応、そう言っておく。


 こうして俺の指揮官としての初陣は掃討戦へと移っていく。

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