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神に仕える黄金天使  作者: こん
第1章 玉座強奪・諸邦巡遊篇

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第206話

 二戦目は集団戦だ。

 昼食の休憩を終え、ジスラン様の麾下の騎士ラスロと副官二名を案内兼見張りとして付けられた。逆にこちらはアシルとファビオ、カイを見張りとして付けた。


 屋敷からしばらく離れた所にある簡易的な砦を使うようだ。戦場として用意された領域の南端と北端に砦があり、俺が(シード)砦、ジスラン様が(ナード)砦を拠点とする事になった。互いの距離は十メルタル程度である。

 砦には三千騎が十日間籠城できる程度の食糧、無力化した武器などが置いてあり、自由に使っても良いとの事であった。


 勝敗は旗の奪取又は破壊によってつけられる。旗は両軍とも六十本あり、それぞれが選んだ旗手が半数を持つ。旗手は総指揮官(俺とジスラン様)から離れる事は出来ず、常に一緒に行動せねばならぬ。また、もう半数は砦内の所定の目立つ位置に固定せねばならぬ。

 また、総指揮官が死亡した場合、戦闘は終了となる。総指揮官以外が怪我をした場合、例え軽傷であっても、再び参戦する事はできぬ。旗手は旗を失った時点で戦線離脱する。


 また、二十日以内に勝敗がつかない場合、残っている旗の数で勝敗を決する。旗が同数であった場合は、残っている兵士の割合で勝敗が決まる。


 砦にて、ラスロから説明を受けたが、要するに旗を守りながら敵の旗を奪え、ということであろう。


 ちなみにドニス達は運営に回るそうで、騎兵五百騎が減った。一角獣(ユニコーン)は俺の部下であり、ドニス達の馬ではないので、一角獣(ユニコーン)だけは残った。

 レリア達は勝敗が決するまで自由だが、観戦もできる。戦場を見渡せる場所に塔が建っており、そこで観戦できる。


 現在、作戦室にて作戦会議中だ。ヴァトー、ブームソン、ヴィルトール、ファルジア、ダレラック、ケリングに加え、ラスロと副官二名を集めた。ケリングは隊長という訳ではないが、何となく気に入っているのでこういう場にはよく呼ぶ。

 シャミナードは別室で待機している。特に意見も無いらしく、言われた事を言われた通りにやると言っていた。

 ちなみにラポーニヤ城には各隊長の副官が残っている。バローはシャミナードに留守番を押し付けられたようであるが、とにかく隊長が全員ここにいても大丈夫だ。それにアルフォンスとクラウディウスがいれば、平時はヴァトー達がいてもいなくても同じであろう。


 明日の日の出が開戦の合図である。それまでは自由時間となっているが、基本的に砦から出るな、ということになっている。


「ラスロ殿、やはり魔法の使用は禁じられているのか?」


「いえ、持てる力全てを用いさせよ、とのご命令であります」


「では、魔法で部下を呼んでも良いということであろうか?」


「魔法で…詳しい事は分かりませんが、開戦後の戦力追加は禁じられております。日の出までに私に報告してください。誤差は千人まで許容されますが、なるべく正確に報告してください」


「承知した。では作戦を伝えよう」


 俺は集まった者に作戦を伝え、準備をさせた。

 ラスロには水魔導王軍、呪魔導王軍を含めた兵数を伝えた。合計二百十万千である。信じておらぬようであったが、異空間からスイとリリーが出てくるのを見て、渋々といった様子で認められた。


 夜明け前。俺は(シード)砦の上空に二百万を超える軍を待機させた。水魔導王軍には地上の籠城部隊の援護を任せる。

 呪魔導王軍は俺が率いる攻城部隊と共に打って出る。日が昇り次第、城門を開け、出発する。


「作戦通りにやるぞ。脱落せぬよう注意せよ」


「御意」


 俺の傍には旗手隊の隊長を任せたケリングがいる。


 今回、俺が率いる攻城部隊は、人狼のみで構成された旗手隊三十、人狼隊と人虎隊が百二十ずつ、エルフ魔法隊とエルフ弓箭隊がそれぞれ百五十ずつ、猫人のみの工兵隊が二百の合計七百七十だ。それに加え、呪魔導王軍百万がいる。

 また、エルフと猫人は同じ一角獣(ユニコーン)に乗る。猫人はあまり乗馬が得意ではないようなので、安全の為、一角獣(ユニコーン)にはエルフと猫人が一人ずつ乗る。人狼、人虎は狼化、虎化し、一角獣(ユニコーン)の速度に追いつく。


 一方、籠城部隊はヴァトーの指揮の下、人虎隊八十、人狼隊、エルフ魔法隊、エルフ弓箭隊が五十ずつの合計二百三十だ。それに加え、水魔導王軍百十万がいる。ちなみに水魔導王軍もヴァトーの指揮下に置かれている。


 塔の方からラッパの音が聞こえた。日の出を確認したという合図、つまり開戦である。


 まず、呪魔導王軍が大きな音を立てながら上空を進む。陽動だが、可能であれば旗に火を放つ。

 リリーの合図を待ち、それを確認した兵士が城門を開け、出撃する。


「行くぞ」


 俺は(ナード)砦に向けて、先頭を駆け抜ける。ラスロ達もついて来ていたが、途中で離れてしまった。一角獣(ユニコーン)を貸してやると言ったが、愛馬に乗ると言って聞かなかったので仕方あるまい。


 (ナード)砦の手前、約四百メルタの距離で止まり、陣を敷き、本陣とした。投石器や弓矢が届かぬ距離だ。

 (ナード)軍は上空に現れた数え切れぬ程の大軍、すなわち呪魔導王軍の対応で手一杯のようだ。


「ではファルジア、ダレラック、頼んだぞ」


「「御意」」


 エルフ魔法隊とエルフ弓箭隊は猫人を一角獣(ユニコーン)から降ろし、それぞれ出発した。

 ファルジアとダレラックはそれぞれ東と西から(ナード)砦を攻める。また、その護衛として人狼隊と人虎隊を付けた。本陣に残ったのは旗手隊三十名、工兵隊二百名、そしてようやく追いついたラスロと副官二名だ。


 シャミナード達は俺の異空間から出した投石器で攻撃を開始した。ただの投石器ではなく、魔導具なのでこの距離からでも城壁に当てることはできる。気を引けるのであれば、充分だ。

 言ってしまえば、本陣すら囮なのである。ファルジアとダレラックが上手くやるまで、負けぬようにすれば良い。まあ俺が(ナード)砦に攻め入り、旗手隊が全滅しても、シード砦に残した旗を死守すれば良いので、俺が攻め入っても問題は無い。


 しばらくすると、(ナード)軍が突撃してきた。数は約三百騎。旗が無いところを見ると、ジスラン様は出てきておらぬようだ。


「ケリング、骨の一本や二本、折ってやっても良い。だが殺すな」


「心得ております」


「では行ってくる」


 俺はケリングとヌーヴェルを本陣に残し、狼化して旗手隊十名と進んだ。指物という旗を使っており、これは体に固定するのである程度は動ける。人狼として本領は発揮できぬかもしれぬが、今は充分だ。


「奴ら、獣の格好を…」


「構わんっ!(シード)軍旗を背負っているのが見えんのか。ジル君は近くにいる!探し出して討て!」


 ローラン殿が率いているようだ。ローラン殿は魔闘法を無意識にではあるが使うので、俺が脱落させねばこちらの旗手がやられるかもしれぬ。


「ローラン殿、義甥はここにおりますぞ」


 俺はローラン殿の目の前に立ち、狼化を解いた。


「貴様、獣であったか…ますますレリアたんはやれん。奴を殺せ!俺が個人的に報酬を出す!」


「遠慮はいらぬが、殺すでないぞ。では行け」


 俺とローラン殿の指示で両軍がぶつかった。

 誤って斬り裂いてしまわぬように、人狼達は爪を立てず、騎士や馬を殴った。基本的に一撃で脱落させているようだ。

 俺も再び狼化し、ローラン殿の顔面に飛び蹴りをした。歯が何本か折れた感触がし、ローラン殿が口を押さえたまま落馬したので、俺の勝ちだ。


「骨折くらいなら治してやろう。気兼ねなく来い」


 俺は他の兵士にも殴りかかり、骨や歯を折り、脱落させていった。

 百人ほど脱落させたところで、退却していった。

 地面に倒れたままのローラン殿達を、ドニス達が回収に来た。

 回収される際、ローラン殿は何やら呟いていた。近くにいた旗手は聞き取れたそうだ。


「許さんぞ…俺の歯を…大人の歯だぞ…」


 と言っていたらしい。何歳か知らぬが、ローラン殿に子どもの歯が生えているわけがあるまい。なぜわざわざ大人の歯である事を言ったのであろうか。


 俺達は本陣に戻り、再突撃に備えた。(シード)軍側の脱落者はおらぬ。


「さすがです」


「いや、もう少し数を減らしておきたかった」


「あの惨状を見れば、しばらくは出てきませんでしょう」


「ああ。機を見て攻め入るか」


「その時はここで待ってるニャ」


「あの…」


 ケリングとシャミナードと雑談をしていると、ラスロが話しかけてきた。最初は魔族に怯えていたくせに、もう話を遮るまで慣れたのか。


「何だ?」


「再起不能な傷はなるべく避けていただきたいのですが」


「ああ。後で治してやろう」


「はあ…」


 回復魔法で怪我が治るのは知っているくせに、まだ心配なようだ。まあ別にラスロが信じようが信じまいが、効果は変わらぬので良いが。


「さすがリリー様です。もう旗がありません」


 ケリングが言うように、既に(ナード)軍旗は燃え尽きており、残りはジスラン様と行動を共にする旗手隊のみとなったようだ。


「あとは旗手隊か」


「はい。総指揮官殿が出てくれば良いのですが」


「ああ。だが、このまま二十日間、籠城しても我が軍の勝ちは揺らがぬぞ」


「その通りですが、やはり気が急いでしまいます」


「気にするな。俺も早く勝ちたいのは同じだ」


「では?」


 ケリングは意外とせっかちなようで、突撃をしたいようだ。まあ俺としてもこのまま二十日間も待つつもりは無い。


「ああ、そうしよう。シャミナード、突撃するが、おぬしらはどうする?」


「ここで待ってるニャ」


「そうか。では護衛を…ヌーヴェルしかおらぬな」


「充分ニャ。じゃあ、ここは任せるニャ」


「ああ。健闘を祈る。では」


 俺は狼化し、旗手隊を伴って駆け始めた。

 それに応じてかは知らぬが、(ナード)砦の南門が開き、騎兵隊が突撃してきた。数は分からぬが、先程とは比にならぬほど多い。

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