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神に仕える黄金天使  作者: こん
第1章 玉座強奪・諸邦巡遊篇

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第202話

 馬車を降りると、数名の騎士を伴った騎士がいた。どことなくローラン殿に似ている。


「待っていた。まさかこんな軍を連れてくるとは思わなかったが、レリアの夫にふさわしい。俺は歓迎するよ」


「アラン叔父さんっ!久しぶりっ!」


「叔父さんっ!」


 レリアとイリナが駆け寄った。ローラン殿にはあれほど嫌悪感を示していたイリナだが、アラン殿には好意的なようだ。普段の行いが違うのであろうか。


「お初にお目にかかります。ジル・デシャン・クロードです」


「アランだ。レリアをよく連れ戻してくれた。君には感謝するよ」


「いえ、ご家族にご挨拶に出向くのは当然の事です。礼には及びませぬ」


「ハッハッハ。よくできた人だ。さあこちらだ」


 アラン殿はそう言って歩き出した。アラン殿の部下の騎士達は一人を残して、俺の部下を案内しているようだ。

 俺とレリアの後には、アシル、ファビオ、ルカ、イリナ、ユキ、カイ、ルチア、サラ、ロアナ、人狼五名、人虎五名、エルフ十名が続いた。それ以外はアラン殿の部下に案内され、どこかに行った。


「ああ、そうだ。君は外では使徒だとか、公爵だとか言われてるようだけど、ここではただのジル君だ。特別扱いはできないよ。それでもいいかい?」


「ええ、もちろんです」


「それは良かった。それじゃ、護衛はいらないね。ラスロ、案内して差し上げろ」


「はっ。どうぞこちらへ」


 護衛のエルフ達が引き離された。まあ良いか。護衛など、俺ひとりで充分だ。


「さあ、侍女の方もどうぞ」


 侍女も連れていかれるのか。だが、こんな所でルチアを野放しにできぬぞ。だが、身内とも言いたくないな…いや、別に隠す必要は最初からない。言ってしまえば良いか。


「義叔父様、そこにいるルチアという侍女見習いは、コンツェンからの亡命者です。私には監視の義務があるのですが」


「そんな危険人物、牢に閉じ込めておけばいいだろうに…なぜ連れ歩く?」


「詳しく話せば長くなりますが、理由は主に二つ。まず、その境遇に同情すべきところがあります。そして、暴走した時、私か私の弟妹でないと抑えられないことです」


「こんな華奢な女の子が、か?」


「ええ。一昨日、エジット一世国王陛下の御名で、魔法と魔族について公表がなされたのはご存知でしょう」


「噂程度にはな」


「ルチアの使う魔法が厄介なのです。まず、魔法には属性というものがあります。大きく分けて三つ。天、魔、歪です。天は魔に、魔は歪に、歪は天にそれぞれ強いのです。そして人間や魔族は魔、ルチアは天属性なのです。現在サヌストにいる天属性はルチアを除けば、私と弟、そして従魔のみです。妹は歪属性です。すなわち、ルチアに対抗するには、私か私の弟妹でないといけないと言うわけです。ご理解いただけましたな?」


 厳密に言えば、魔法を使うのは魔属性のみで、他の二属性は使えぬ。

 天属性のほとんどは、天力を魔力に返還して魔法を使うので、天魔大戦という事も起こりうる。稀に天力をそのまま武器として扱う者もいる。ルチアは魔導具に頼ってはいるが、天力をそのまま扱っている。

 一方、歪属性は詳しい事は分からぬ。ただ、ルカは歪力をそのまま鞭のように半実体化させ、これでヘザーやロベルトを殺害した。つまり、天属性に有効というわけだ。


「…難しく言うが、つまりは他の者には任せられないような強者という事かな?」


「ええ。ご理解いただけたようで何よりです」


「大変だな」


「いえいえ」


 ルチアに反抗の意思はなく、むしろ好意的であるので、大変ではない。

 ちなみにアシルにちらっと聞いただけなので本当かは分からぬが、ルチアの監視だけでいくらか報酬が支払われているらしい。それもかなりの額を、だ。普通に暮らすだけならこれだけで充分だ。


「さあジル君、心の準備はいいかい?深呼吸するなら最後だよ」


 アラン殿が屋敷の前で立ち止まった。見張りの兵が扉を開けようとしたが、手を上げて制した。


「いつでも構いませぬぞ」


「ちょっと待って。あたしが深呼吸するから」


 レリアはそう言って深呼吸を始めた。


「あー、ジル君ひとりで行ってもらうことになっている。レリアもダメだ。さあ、ジル君以外は彼に従ってもらいたい」


 アラン殿はそう言って部下の一人にレリアやアシル達を案内させた。一人で行け、という訳か。

 アラン殿が扉を開けさせると、リノ殿ともう一人、知らぬ騎士が立っていた。おそらくリアン殿というレリアの兄上だろう。


「リアンだ」


「ジル・デシャン・クロードです」


「リノと叔父上から話は聞いた。あまり期待していないがよろしく頼む」


「は」


 リノ殿とローラン殿から話を聞いたと言うが、そうであれば俺の印象はどうなっているのであろうか。一方は俺の事を嫌い、一方は好いてくれている。ちょうど良い感じに認識してもらえていると良いが…


「ところで一つ聞きたい。俺の号令ひとつで二千騎からなる騎兵隊を動かせると思って答えてくれ。レリアと別れろ、と言ったらどうする?」


 リアン殿はお父上と共に騎士をやっていると聞いたが、既に二千騎を指揮下においているのか。総勢を知らぬが、少なくはあるまい。


「騎兵隊を蹴散らし、問います。何と仰ったか、と」


「二千騎を蹴散らす戦力を呼ぶ前に君の首を討ち取れる。どうするつもりか」


「部下を呼ぶ必要などありますまい。私ひとりで充分です」


「そう言って叔父上に負けたのではないのか」


「そうですが、それは試合の話でしょう」


「驕るな。できもしないことを言う奴に、レリアはやれん。兄弟一同、抵抗する」


「まあまあ、ジル君の話はあながち嘘じゃない。俺が殺す気でぶった切った時も治りやがった。今朝の話だ。どうやっても殺せん気がする」


「叔父上…」


 ローラン殿が二人の背後から現れ、そう言った。俺を殺す気であったのか…


「それにな、俺の情報が正しければ、ジル君は一晩で国内を一周できるほど足が速い。仮にジル君自身が弱くても、部下を呼びに行ける」


「そこまで調べておいででしたか」


「まあな。噂程度だが、話は聞いている」


「叔父上、俺は反対です。このような男、例えヴォクラー神の使徒様であろうと、ここで切ってしまうべきです。先日の内乱もお告げが原因と言うではありませんか」


 今まで黙っていたリノ殿が急に叫び出した。切られるくらいなら別に良いが、この場合、死ねという意味であろう。それは困る。


「馬鹿か」


「リノ、それはヴォクラー神とエジット一世国王陛下への侮辱と捉えられかねんぞ。訂正せよ」


 ローラン殿とアラン殿がリノ殿に対して怒りを表した。いや、そういう訳ではないか。怒っているようで、心配しているのか。


「そういう訳では…ただ…その…申し訳ありません」


「それにな、リノ。俺は参加してないから知らんが、コンツェンの攻撃もジル君がいなければ防げなかったと聞く。それでも切るべきと言うのか?」


「それは…」


 リノ殿は返す言葉が見つからぬのか、黙ってしまった。

 確かに俺がいなければコンツェンの攻撃も防げなかったであろうが、そもそもお告げがなければカプトヴェル城には十万の兵が控えており、攻撃を仕掛けられなかったであろう。いや、それでも攻撃はされたか。実際、コンツェン軍の魔法使いにより、二十万の援軍が討たれた。俺がいなければ、もっと被害が大きくなっていたのか。


「リノ、レリアたんを取られたくないのは分かるが、駄々をこねるな」


「そういう訳ではっ…」


「どういう訳でもいい。とにかく行くぞ。こんな所で立ち話をしていたら、兄が怒る」


「さあジル君、遠慮せずに行こう」


 ローラン殿とアラン殿が話を切り上げてくれたので、ようやく進むことになった。

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