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神に仕える黄金天使  作者: こん
序章
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第1話(後編)

「えーと…選ばれたってことはなにかした方がいいですか?」


「うむ。貴様には三つの世界のうちの一つ、ヒルデルスカーンに行ってもらう」


「え?」


「なに、難しいことではない。少しの間、体を貸してくれればそれで終わりだ。心細いであろうから、貴様と気の合いそうな魂を選んだ」


 体を貸す?まぁ、いいか。俺の魂を集めてくれたってことは、命の恩人ってことだろ?つまり、ヴォクラー様に恩が返せるという訳だ!嬉しいぞ!


「その魂に今、会えますか?」


「うむ。しばし待て。アシル!」


 二人で新しい世界に行くってことは相棒ってことだよな?


 確かヴォクラー様はヴォクラー教の神様って言ってたからそのヴォクラー教に尽くそうかな?うん、そうしよう。


「お呼びでしょうか、ヴォクラー様」


「こいつが例の天使族だ」


 ん?今、天使って言ったよな、ヴォクラー様。俺天使なのか?


「こいつが…よろしく。俺はアシル=クロードだ。アシルと呼んでくれ」


 アシルか。呼びやすい名前だな。


「あぁ、よろしく。俺は」


「こいつはジルだ」


 ん?俺の名は泉谷龍斗では?ヴォクラー様が俺の言葉に被せるように言った。


「え?俺って泉谷龍斗じゃないんですか?」


「違う。その名は捨てろ。それに貴様はもう人間ではない。天使族だ。天使族のジルだ。分かったな?」


「は、はい」


 俺はもう人間ではないのか。ん?待てよ。天使って人間より格上じゃないのか?そうだよな。ということはヴォクラー様に認められたってことだよな。それは喜ばしいことだ。


「これから転移の準備を始める。少し時間がかかるゆえ、待っていろ。その間この神殿には誰も近ずかぬようにするから、親睦を深めるのもよかろう。ああ、それとな、ジル。分からぬことがあればアシルに聞けば良い。アシルには全て話した」


「え?なんで俺には話してくれないんですか?」


「少なくとも貴様よりアシルの方が賢いゆえに。では、私はこれで」


 ヴォクラー様が行ってしまった。


「あー、改めて。俺はジルだ、よろしく」


「あぁ、ジル殿。よろしく頼む」


 そう言って俺たちは固い握手を交わした。


「俺のことはジルって呼んでくれ」


「いや、そういう訳にはいかぬ。俺はあんたを補佐するように承った。つまり、あんたは俺の上司だ。上司を呼び捨てるわけにはいかぬ」


 ん?俺の補佐?まぁいいか。ヴォクラー様が俺の事を心配に思ってつけてくれたんだろう。


「分かったよ。じゃあ俺の補佐を頼んだぞ、相棒」


「あ、相棒?」


「あぁ。新しい世界に共に征く相棒だろ?」


「そうだな。そういえばなにか聞きたいことはあるか?」


 聞きたいこと?そうか、ヴォクラー様に俺よりも賢いと言われて調子に乗っているんだな?じゃああれを聞こう。


「ヒルデスカーンに行ったら何がしたい?」


「ヒルデルスカーンだ。俺はあんたの補佐をずっとするよ」


「なぜ?」


「俺は使徒に選ばれなかったから自由に生きる権利などない。ゆえに、せめてヴォクラー様に恩返しをしようと思ってあんたの補佐を買って出たんだ」


 おい、初めての単語が出てきたぞ。


「使徒って何だ?」


「ヴォクラー様から聞いてないのか?」


「体を借りると言われた」


「そういうことだ。ヴォクラー様自らヴォクラー教徒へご神託を与えるのだ。その際、元人間の天使族それも神体適性がある者の体を借り、世界へ降臨する。その天使族を使徒と呼ぶ。だが、ヴォクラー教徒には天使族だと言ってはならぬ。分かったな?」


「ああ。つまり体を貸した後は自由になるが天使族だと名乗らず、使徒と名乗れば良いのだな?」


「そういうことだ」


 アシルが賢くて助かるな。


「ところでジル殿は何をするのだ?」


「俺は騎士になる!騎士になって弱きヴォクラー教徒を護ろうと思う」


「それは立派だな」


 俺は昔、本で読んだ騎士に憧れてるんだが、このことは初めて他の人に話した。相棒には隠し事なんてしたくないからな。


 その後も他愛ない話をしていたのだがアシルが気になる事を言った。


「次の世界は未開拓の地が多いらしい」


 との事だ。


「どういう事だ?」


「世界ができてまだあまり時が経ってないらしい」


「なるほど」


 その後、新しい土地を開拓してみたいことや、何か動物を飼いたいことを伝えたり、それを補佐すると言われて笑ったり、他にも色々説明を受けたりして俺たちは楽しい時を過ごした。


「準備が出来た。最後になにか望むものはあるか?」


 ヴォクラー様が入ってきた。準備が出来たらしい。望むものも聞かれた。ということは何がくれるってことだよな。


「では。俺から、良いですか?」


「なんだ、ジル」


「向こうに着いたら騎士になりたいので、剣をください」


「騎士か、面白いではないか。それは言わずとも与えるつもりだったゆえ、他になにかないか?」


 他か。大きくて使用人が沢山いる家とかか?あと動物も飼いたいしな。大きな庭も欲しい。


「では、大きくて使用人が沢山いて、大きな庭がある家が欲しいです」


「それは望まぬとも我が信徒たちが用意するであろう。他は?」


 他?じゃあここで動物を言ってみるか?


「では、強い動物が飼いたいです」


「そうか。ならば、オディロン!こいつを連れていくと良い。何かと役に立つであろう」


 ヴォクラー様が呼ぶとさっきの虎が来た。


「良いんですか?」


「ああ、良い。ロドリグもいることだ。遠慮せずに連れていくが良い」


 おー、虎が来た。


「俺はジルだ。よろしく頼む」


「我はオディロンだ。よろしく頼む。ジル様、あなたは一時的ではあるが我の主だ。なんなりと申し付けよ」


「じゃあ、オディロン!俺を乗せて走れ!」


「御意!」


 オディロンがそう言うと鎧の上に鞍が現れたので座った。オディロンはぐんぐんスピードを上げて走り、時々跳んだ。



「ジル!オディロン!」


 しばらく楽しんだらヴォクラー様に呼ばれたのでオディロンから降りてそちらへ向かった。


「アシルの願いは叶えた。装備も与えた。あとは貴様だ。欲しい装備を想像せよ、私が具現化してやる」


 俺が欲しいのは黄金の鎧に虎を象った兜、それに漆黒のマント。マントの裏地は誠実さや平和を意味する青。剣は叩き斬るように使う西洋の剣と切り裂くように使う東洋の剣を併せた一本の直剣。それを腰に帯び、手には槍を持ち、背中にはマントで隠すように二本の短剣。


「想像しました!」


「要望が多いな。まぁそのくらい細かく指定されたのであればこちらも楽で良いが」


 ヴォクラー様が俺に手をかざすと俺の要望通りの武具が現れた。


「うむ。似合っているではないか」


「そうですか?ありがとうございます」


「容姿も変えれるがどうする?」


 容姿って見た目だよな。好きなようにいじれるのは嬉しいな。


「変えたいです!」


「では想像せよ」


 背は平均より少し高く、筋肉もそれなりについていて、髪は黒く、精悍そうな顔で、目は右がエメラルドグリーン左がターコイズブルーのオッドアイ、左耳には二つのピアス。


「想像しました!」


「それで良いのか?」


「はい!」


「では変えるぞ。睡魔に襲われると思うが、そのまま眠ってしまって良い。目覚める頃には全てが終わっているだろう」


 全てが終わる?見た目を変えることか。あー、本当に眠くなってきた。眠ってやろう。

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