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神に仕える黄金天使  作者: こん
第1章 玉座強奪・諸邦巡遊篇

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第198話

 俺は七近衛に撤退するように伝え、結界魔王にはクラウディウスを遣わした。

 俺とアシル、ルチアは周りに被害が出ていないかを確認し、城に戻った。被害は海中の岩がいくつか砕けているだけであった。大きな影響はあるまい。


 城に戻ると、ルカに勝った事を伝えた。実際はほとんど戦っておらぬが、勝ったと言った方がルカも安心するだろう。

 ルカに寝るように伝えた後、アシルとルチアを部屋に帰し、レリアの寝顔を眺めながなら朝を待つことにした。

 

 翌朝。レリアとイリナとの朝食後、会議室に魔界諸侯を集めたとクラウディウスに言われたので、アシルと訪ねた。


「何だ?」


「ジル、妾はキアラ嬢と会っても残るわ」


 結界魔王は魔界諸侯の中心に座ってそう言った。魔界には魔界の者にしか分からぬ格というものがあるのだろう。


「そうか。俺の指示に従ってもらわねばならぬぞ」


「そんな事はいいのよ。それよりも部下を十人程、手元においてもいいかしら?」


「十人…まあ良いか」


「そう。良かったわ」


 結界魔王がそう言うと、魔界諸侯十名が頭を下げた。まさか十人とはこの十人か。まあ良いか。キアラがいれば、キアラに従うだろう。


「それじゃ、妾は城でも建ててくるわ。この城に繋げていいかしら?」


「俺は構わぬが、俺はそのうちこの城を出ていくぞ」


「あら、そうなの?」


「ああ。街を貰い受ける」


「そう。それじゃ、今の話は無しね。もちろん妾にも屋敷くらいくれる予定でしょう?」


「手配しておこう。アシル」


 アシルを連れて来ていてよかった。俺だけであったら、誰に頼んで良いか分からぬ。


「ああ。屋敷の一邸や二邸くらい用意できるだろう」


「あら、一邸や二邸くらいだけなの?」


「…十邸や二十邸くらい…いや、三十邸が限界だ」


「そう。それじゃ、十二邸ね。頼んだわ」


「兄上、これは確実な貸しだぞ」


 アシルは俺にそう耳打ちした。

 今のところ、アシルへの借りは二つある。今の借りとレリアの家族への挨拶の同行の二つだ。他は上官と部下の役割だとして、数えておらぬ。もし数えていたら、返すのに十年以上かかるだろう。アシルにはそれくらい世話になっている。


「ジル、天属性の娘はどこにいるのかしら?」


「今日は会っておらぬ。寝ているのではないか?」


「そう。妾はもう行くわ。あの娘を近づけないで。不愉快だわ」


「そうか。また何かあれば言ってくれ。出来ることならする」


「その時は遠慮なく言わせてもらうわ」


 結界魔王はそう言って部屋を出ていった。魔界諸侯十名も一緒に出ていった。


「アシル、頼んだぞ」


「ああ。俺も頼みがあれば頼るぞ」


「アシルの頼みであれば、借りなどなくとも引き受けよう」


「俺を狭量みたいに言うな」


「いや、そういうつもりではないのだが」


「分かっている。俺も準備がある。出発前に呼んでくれ」


「ああ。では」


 アシルは転移して行った。王都にでも行ったのだろう。


 俺は会議室を出て、ウルの様子を覗いた。例の布を使った服を着たレノラがウルをあやしているところであった。問題は無さそうだ。わざわざ声をかける必要もあるまい。


 俺の部屋に戻ると、レリアとイリナがルチアと茶を飲んでいた。


「あ、おかえりなさ〜い。お茶にする?茶菓子にする?それともル、チ、ア?はたまたイリナちゃん?」


 部屋に入った途端、ルチアが自らの肩を抱きながらそう言った。


「茶菓子にしよう。用意してくれ」


「…え?ルチアが、ですか?」


「侍女見習いは誰だ?」


「ルチアです」


「では頼んだ」


「はい…」


 ルチアは渋々といった様子で茶菓子の準備を始めた。用意してないのに聞いたのか。


「ジル、あたしが同じ事を聞いたらどうする?お茶かお茶菓子か、あたしかイリナ、どれにする?って」


「決まっているだろう。レリア一択だ。茶や茶菓子など、いつ食べても同じだが、今のレリアは今しかおらぬ。まあどの瞬間のレリアでも俺の好みであろうが」


「あたしも全部の瞬間のジルを独り占めしたいよ」


「それは嬉しいな」


「惚気話より大事な話があるでしょ?お義兄さん」


 レリアとの話を遮ってイリナが話しかけてきた。ちょうど茶菓子と茶の用意ができたようなので、レリアの隣、イリナの正面に座った。


「…何であったか?」


「金貨千枚ですよ。出たじゃないですか、盗賊が」


「忘れていた。申し訳ない」


 俺は異空間から金貨百枚が入った皮袋を十個取り出し、机に置いた。


「これで良いか?」


「天秤とか無いですか?なるべくなら精密な天秤がいいんですけど」


「なぜだ?」


「こんな大金、一気に貰った事なんて初めてなんで、ちゃんと量っておかないと、騙されてるかもしれないじゃないですか。ただでさえ、盲目になっているのに」


「何と、目が見えぬのか。全く気付かなかった」


「ね。そうは見えないよね」


 レリアも気づいていなかったのか。イリナを赤子の頃から知っているであろうレリアですら気付かぬのだ。俺に気付ける訳がない。


「そういう意味じゃないですよ」


「「え?」」


「よく言いません?恋は盲目って」


「そういうことか」


「びっくりさせないでよ」


「逆にびっくりしないでよ」


 さすがに目が見えぬ訳では無いか。それもそうか。服を選ぶ時にも色々と言われたし、他にも色々と目が見えぬと分からぬ事を言われたような気がする。


「ルチアも盲目ですよ」


「お義兄さんに恋してるって素直に言ったらいいじゃないですか」


「イリナちゃんもそう言えば良かったでしょ?」


「それもそうだけど」


「ジルさんはどうですか」


「俺はちゃんとレリアを見ているし、何があっても見失わぬ」


「お姉ちゃんは?」


「あたしもジルをずっと見てるよ。いい意味でね」


「盲目を通り越して目が良くなったんだ。すごいでしょ、うちの姉夫婦は」


 話を聞いていると、イリナとルチアはそれなりに仲良くなったようだ。似たような二人なので別に驚かぬが。


「今はイリナちゃんの姉夫婦かもだけど、いずれルチアが代わるから」


「おい、レリアに妙な事をしてみよ。この世に存在した事を悔やませてやるぞ」


「しませんよ。ルチアが仕掛けるのはジルさんですよ。いずれジルさんが自分の意思で奥さんと別れて、自分の意思でルチアを選ぶように仕掛けるんですよ」


「何億年かけようとこの気持ちは揺らがぬぞ」


「何兆年でもかけますよ」


「そんなに生きれないよ」


「それもそうだ」


「談笑中、失礼。ジル様、ちょっと」


「何だ?」


 クラウディウスが訪ねてきた。俺は茶と茶菓子を一気に口に入れ、飲み込んでから席を立った。


「リリー殿とスイ殿を解放して差し上げた方がいい。結界魔王様が会いたいと」


 忘れていた。二人は戦があったことも知らぬだろう。ただの手違いで閉じ込めてしまったと説明しておくか。

 俺は異空間の穴を開けて二人を出した。


「申し訳ない。手違いで閉じ込めてしまった」


「そうですか。魔法は撃てましたか?」


「ああ。それなりにな。それよりもおぬしらに客だ。行ってやれ」


「は」


 クラウディウスはリリーとスイを結界魔王の所に案内し始めた。

 俺は部屋に戻り、談笑に戻った。

 それから今日は一日中談笑をしていた。結構楽しいものだ。

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