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神に仕える黄金天使  作者: こん
第1章 玉座強奪・諸邦巡遊篇

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第189話

 イリナをアシルの屋敷に送り届けた後、俺とレリアはすぐに寝た。お揃いの寝巻きを着ようと思って屋敷に届いてないかアシルに確認したが、届いていないようだったので普通の寝巻きで寝た。


 翌朝。俺は日の出と共に起き、レリアの寝顔を覗き込んだ。やはり眠っているよりもレリアの顔を眺めていた方が心が休まる。


 しばらくレリアの寝顔を眺めていると、給仕が入ってきて朝食の準備を始めた。

 俺はレリアを起こし、水を渡した。レリアはいつも通りに起きた。


 その後、朝食を食べ、着替えた。昨日買った服は一着も届いていないので持ってきた服を着た。

 今日は一日中曲馬団の公演を見る。昼食もついているそうで、朝から夜までずっとやっているそうだ。


「チケット持った?」


「ああ、持った」


「じゃあ、行こ」


「ああ」


 俺とレリアはホテル・ド・エスプリットを出て、曲馬団の公演場に向かった。

 寄り道などせずに来たのですぐに着いた。巨大な天幕で、中から獣の鳴き声が聞こえる。噂によると、獅子や象などが出てくるらしい。


「よぉ、チケットは?ある?ない?買う?買わない?」


 天幕の入口に立っている道化師に話しかけられた。この曲馬団の者か。


「ある。既に買った。これだ」


 俺はレリアの分と合わせて二枚の券を渡した。一番良い席を、とアシルに頼んで予約してもらった。


「失礼しやした。どうぞこちらへ」


 道化師は態度を改め、俺達を案内した。

 舞台が見やすい位置にあり、他の席とは違ってソファのような席になっている。紐で出来た簡単な柵のようなもので他の席と隔てられている。

 良い席を頼んだが、こういうことなのか。


「何かありやしたら、コイツに言ってくだせぇ。何でもしますんで」


「お任せ下さい」


 道化師は近くにいた少年を呼び、そう言った。そして道化師はお辞儀をして去っていった。


「何か特別扱いって感じだね」


「ああ。思っていたのと違ったが、これはこれで良かろう」


「そうだね」


 レリアと話していると、舞台に先程とは違う道化師が出てきた。そして大道芸を始めた。まだ客は集まりきっておらぬので、それまで客を暇にさせぬためだろう。


「もうすぐ始まります。お飲み物などはいりませんか?」


 少年がそう尋ねてきた。何でもすると言うのは世話のことか。芸をするのかと思っていた。


「貰おう。何がある?」


「こちらを」


 少年に木の板を渡された。飲み物や軽食が書かれている。


「レリア、どうする?」


「あたしはこれかな。今日は曲馬団(ここ)だけだからいいでしょ?」


「ああ。別に別の予定があっても飲んで良いがな」


 レリアは柑橘系の果実酒を飲むようだ。俺も同じ物を頼み、軽食もいくつか頼んでおいた。腹が減ったら食べれば良い。

 少年は飲み物を取りに離れた。金を要求せぬところを見ると、無料なのか。いや、先にアシルが払っていたのかもしれぬな。まあ請求されれば払えば良い。


「あ、始まるよ」


「そのようだ」


 座頭が簡単な挨拶をし、道化師や動物が舞台に上がった。獅子や象に加え、虎や熊などもいた。名も知らぬような珍しい生き物もいる。多いな。

 舞台を一周した者から舞台を降り、演目が始まったところで少年が戻ってきた。やはり代金は請求されなかった。

 象の曲芸に始まり、獅子と虎の火の輪くぐり、熊の踊りなどがあった。特に象の曲芸は凄かった。玉乗りをしたり、一本足で立ったり、別の象に前足を乗せたり、他にも色々あって良かった。全体的になかなか面白いものであった。


 昼まで動物の演目があり、昼からは人間の演目が始まった。

 天井から垂らした縄から縄へ跳び移ったり、道化師のナイフ投げなどがあった。道化師のナイフ投げでは、助手の頭に乗せた果物にナイフを投げたり、助手が咥えた果物にナイフ投げたりなど、危険に見えるものが多かったが、こちらも全体的に面白かった。


 後半になるとレリアも良い感じに酔いが回り、助手の募集に参加したりしていた。もちろん危険そうなものは止めたが、ナイフを投げる側をやった。危うく道化師に当たりそうになったが、まあ何かあれば俺が何とかできる。存分に楽しめたようで良かった。


 ちなみに昼食付きとは軽食の事であった。レリアは足りたと言っていたので良かった。俺は少々物足りなかったが、別に少しくらい食べなくても死なぬので良い。


 夜になり、公演が終わってホテル・ド・エスプリットに戻ると、レリアは夕食も食べず、すぐに寝てしまった。レリアの服を寝巻きに替え、レリアの隣に寝転んだ。良い夢を見ているのか、笑顔で寝ている。

 俺はしばらくレリアの寝顔を眺めてから給仕を呼び、夕食の準備をさせた。死なぬとはいえ、空腹感はある。


 夕食後、俺は荷物を片付け、本などを纏めておいた。来た時のような問題が起こらぬように、ホテル・ド・エスプリットまでアルフォンス達が馬車で迎えに来る。貴族御用達とあって、ホテル・ド・エスプリットは馬車を何台か停められる。


 俺は再びレリアの隣に寝転び、レリアの顔をしばらく眺めてから眠った。


 翌朝。今日も日の出と共に起きたが、隣にレリアがいない。

 飛び起きて辺りを見回すと、お茶を飲みながら本を読んでいた。先に起きていただけか。良かった。安心した。


「あ、おはよう、ジル」


「おはよう、レリア。もう起きたのか?」


「うん。お腹すいて起きちゃって、それから寝れなくなっちゃった」


「そうか。大丈夫なのか?」


「うん。夜中だけど用意してくれたから」


「それは良かった」


 夜中に起きたのか。確かに昨日は寝るのが早かったので、起きるのが早くなってしまっても仕方ないか。


「あ、手紙が届いたって言ってたよ。ほら、これ」


「手紙?」


 俺はレリアの隣に座って手紙を受け取った。

 手紙を開けて読んでみた。アシルからであった。

 影狼衆がイリナを狙ってアシルの屋敷を襲撃した刺客を二十名ほど捕らえたそうだ。辻斬りは含まれておらぬそうだが、ヴァルンタンの手の者だそうだ。新たな情報があれば、また知らせてくれるそうだ。


「何だった?」


「イリナを狙った刺客を捕らえたそうだ。大胆にも二十名ほどでアシルの屋敷を襲撃したらしい」


「大丈夫だったの?」


「ああ。強者はいなかったようだ」


「それならいいけど…」


「もし心配なのであれば、ラポーニヤ城でイリナを匿うが、どうする?」


「んー…大丈夫って事が分かったし、別にいいかな。あ、イリナに聞いてみて、匿って欲しいって言うなら、あたしからもお願いするね」


「分かった。今日はアシルの屋敷に寄ってから行くか」


「そうだね」


 俺は手紙をしまって着替えた。レリアはもう着替えていたようで、いつでも出掛けられるようだ。


 準備を終えて出発した。いつもより少し早いくらいだが、新鮮で良いな。


「朝から行って大丈夫かな?」


「大丈夫であろう。アシルはいつ寝ているか分からぬほどの短眠者だ」


「それって良いの?早死しちゃうって聞くけど」


「アシルは、短眠者で早死する者は魔力の回復が下手くそな者だ、と言っていた。普通の者は眠っている間に魔力の回復をし、魔石を休ませるが、短眠者にはそれが出来ぬ者が多いので、短眠者は早死する者が多いと言う話になったそうだ」


「ちゃんと休めれば大丈夫ってこと?」


「ああ。休むのが下手くそな者は、短眠者であろうとなかろうと、早死する」


「じゃあ、あたしは長生き出来そうだね。ジルの横で寝てたら、これ以上ないくらい休まるもん」


「俺もだ。レリアの隣が一番落ち着く」


 俺とレリアは手を繋ぎ直して、アシルの屋敷に向かった。

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