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神に仕える黄金天使  作者: こん
第1章 玉座強奪・諸邦巡遊篇
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第18話

 オディロンから色々教えてもらった。

 その中で一番安全な風魔法を練習する事にした。


 ───ジル様の中の天力を感じろ。ジル様は本天使族といって手足に天脈が集中している種族だ。それを意識せよ───


 天力ってどう感じるんだ?


 ───我が無害の天力を放出しよう───


 ああ、頼む。


 俺が頼むとオディロンがでかくなったような気がする。いや、大きさは変わっていないのだが昨日エレファントボアに殺されそうになった時のような感じだ。心臓がキュッとするイメージだ。


 ───わかったか?次はジル様に支援系の魔術を使おう───


 どんな魔術を使うのだ?


 ───それを当ててみせよ───


 オディロンがそう言って俺を睨む。すると俺の中が熱くなってきた。特に手足が。


 これが天力なのか?


 ───ああ。我ら天使族は天力を無意識の内に操り、生きている。それを認識し、意識することで扱うことが他種族よりも容易になるだろう。ということで魔術を解除する───


 俺の中の熱、天力が引いていく。だが体の中を何かが動いているような感じがする。だが不快ではない。

 それを意識して右の手先に集中させる。天力が体外に出ようとしたので誰もおらず、何も無い方向へ右手を向け、放出する。

 その反動で俺は尻もちをつく。右手にはバチバチとした変な感じが残っている。


 ───やりすぎだ!それとやるならやると言え!我が相殺せねば辺り一帯火の海だ。それに…エレボが起きてしまう…ではないか───


 あ、それはすまん。ところで風魔法はどうすれば良い?


 ───説明か…小さい火を消す時に息で吹き消すであろう?その時のイメージだ───


 あの感じね。やってみる。気をつけてくれ。


 俺は思いっきり息を吸う。それを右の掌から勢い良く出すイメージで天力を放出する。

 すると右手がほわ〜っとした。くすぐられた時のように。


 ───微風程度には出ていた。もっと天力を使ってやってみよ。それと息を吸う必要は無い───


 もっといいの?じゃあ、やるぞ。


 俺はさっきの感じを思い出し、それを強めてやる。

 すると今度はほわ〜じゃなくてぼわ〜っ!と感じた。髪の毛も靡いた。


 ───うむ。今度は成功だ。我が相殺せねば、強風程度にはなったであろう───


 そうか。では、俺の最初の魔法とどちらが強い?


 ───ダメージという点では最初の魔法、火魔法の方が強かった───


 そうなのか。では、最初の感覚で魔法を撃てば魔物も倒せるかな?


 ───いや、魔石を持つ生物に魔法を撃てば、その生物が持つ魔石が暴走し、魔法が暴走する。例えば軍隊の一部に向け、火魔法を撃てば標的は死ぬが爆発し炎が広がる。そしてその繰り返しだ。つまり、敵味方関係無しに全滅だ。術者も滅ぶ。例えるならば油の池に火矢を射るくらい危ない───


 では、どうすれば良いのだ?


 ───魔石を持つ生物は狙わないようにするか、魔法が暴走せぬように魔法の腕を上げるしかない。完全に魔法を制御すれば暴走することは無い───


 オディロンはできるのか?


 ───我も出来ないことは無いが三回に一度程暴走する事がある───


 そうか。では、夜は適当な所で魔法の腕を上げよう。アシル達も誘って。


 ───夜の鍛錬か。面白そうだ───


 アシルに伝えて来る。


 ───承知した。エレボを見ておこう───


 頼んだ。


 俺はオディロンにエレボを任せてアシルを探す。まずは自分達の幕舎から探そう。


「おーい、アシルー」


 幕舎を覗いてみたが誰もいない。次はどこに行こうか。そう思い振り向くとアシルがこちらに向かって歩いてきた。


「あ、アシル。丁度良かった」


「何が『丁度良かった』だ。俺はあんたの代わりにジェローム卿と話していたのだぞ」


「ああ、それは悪い。で、ジェローム卿はなんと?」


「エレファントボアは本来あの程度の強さではないらしい。五百年前のアンドレアス王が率いた解放軍もエレファントボアには勝てなかったらしい。当時エレファントボアが一つの都市を滅ぼしたという記録がある。それも一体で」


 解放軍とは魔王軍と戦った反魔王軍のことだ。人々を恐怖から解放したことに由来する。


「その都市の規模は?」


「人口は五十万程だったと。援軍を呼ぶ為に隣の都市へ向かった者以外は全員殺されたんだと」


「当時の兵は魔物のことを知らなかったのでは?」


「いや、魔王軍は魔物を操り、戦わせていた。魔王軍の主戦力は魔物だ。魔王も人間が魔物化し、知恵を取り戻した怪物という説もある。つまり、当時の兵の方が魔物に対しては秀でていたのだ」


 ちなみに魔物と普通の生物の違いは魔石の数だ。魔石を二つ以上持つ生物は魔物とされる。つまり、魔王のあの説が正しければ魔王は魔物だ。


「では、魔物の狩り方は引き継がれて来なかったのか?」


「ああ。魔王がアンドレアス王に討たれてからは魔物は徐々に姿を消していったらしい」


「では、なぜ今魔物がいるのだ?」


「分からぬ。ただ只事ではないことは明らかだ」


 そんな真面目な話をしていたのか。俺も呼んで欲しかった。


 ───助けてくれ。エレボが起きてしまった───


 おう、待っていろ。


「アシル、頼みがある。牛乳を温めて持ってきてくれ。エレボが目を覚ましたらしい」


 俺はオディロンに返事をしてアシルに指示を出し、エレ坊の所へ向かう。


「エレ坊〜」


 エレ坊が俺を見つけ、こちらに走ってくる。俺の解釈だがエレ坊はサミュエル卿のことを親と思い、俺の事を友人と思っている、多分。

 俺はエレ坊を抱きしめる。エレ坊はキュッキュッ〜と鳴くとても可愛い。


「エレ坊〜」


 俺がエレ坊とじゃれあっているとオディロンが来た。


「オディロン、アシルに伝えてくれ。『やっぱり牛乳いらない』と」


 ───承知した───


 俺はエレ坊が別に牛乳を飲みたい訳では無いということを見抜いた。なぜそんなことができるかは魔力が関係している。

 実は俺の眼も天眼という眼らしい。俺の天眼は魔力を読み取ることに長けているらしく魔力の揺れとかで感情を読み取ることが出来るらしい。天眼は使えば使うほど成長するらしいのでよく使うようにしている。


 ───アシル殿が怒っていたぞ。それとアシル殿の頼みだ。エレボから少し離れてくれ───


「え、なんで?」


 ───いいから早く───


 俺はオディロンの言う通りにエレ坊から離れる。エレ坊がキュ〜?と首を傾げている。

 可愛い。ただただ可愛い。

 俺がそんなことを考えてエレ坊を眺めているとオディロンに押さえつけられた。


「おい、オディロン!何すんだよ」


 俺がオディロンに問うもオディロンは答えない。エレ坊が心配そうにこちらを見ている。

 するとアシルが両手にバケツを持って来た。

 アシルは右手に持ったバケツを置いてこう言った。


「ジル殿、覚悟!」


 俺は水をかけられた。

 ちなみにオディロンはタイミングよく離れた為、俺だけ濡れた。


「エレボ〜、牛乳飲むよな〜?」


 アシルはもう一つのバケツをエレ坊の前に置く。エレ坊はバケツの中を覗き、顔を近づける。


「まさか!」


 アシルがこちらを見てニヤリと笑った。


「何が『牛乳いらない』だ?飲むではないか」


 アシルがそう言った途端エレ坊が顔を上げた。


「ほら、エレ坊が気を使って飲んでくれただけではないか。俺の勝ちだ。ははははは!」


 アシルがこちらを睨む。


 ───まあまあ、二人とも争わなくても良いではないか。エレボを独占するのではなく共有すればエレボも人気者になるし、我らも癒される───


「「エレ坊(エレボ)をモノ扱いするな!」」


 ───す、すまぬ───


 オディロンが申し訳なさそうに謝った。ん?待てよ。オディロンがエレボで癒される?なんだ、オディロンもエレ坊に魅了された側ではないか。

読んでくれた方は評価とブクマをしてくれると嬉しいです。

それと活動報告更新しました。

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