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神に仕える黄金天使  作者: こん
第1章 玉座強奪・諸邦巡遊篇

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第182話

 俺は給仕にもう休むと伝え、部屋に戻った。朝食は少し早めに頼み、朝食の時に寝ていた場合は起こすように頼んだ。

 俺が部屋に戻ると、レリアは気持ちよさそうに寝ていた。俺はレリアを起こさぬように隣に寝転び、しばらくレリアの寝顔を眺めることにした。


 やはりレリアの顔はいつまででも眺めていられるな。そう思っていると、給仕が入ってきた。まだ朝ではないのに何をしているのか、と思って窓の外を見ると、日が昇り始めていた。

 やってしまった。ちゃんと休まねばならぬと言っていた俺が眠っておらぬ。たまにこういうことがあるのだ。悪い癖とは思わぬが、いつか治さねばならぬ。いざと言う時に寝不足だったら大変だ。


「おはようございます。もうお目覚めですか?」


「いや、眠ろうと思っていたが、つい見惚れていた」


「お気持ちは分かります。奥様は大変お美しい寝顔でいらっしゃいますから」


「…おい、レリアをそういう目で見るな」


「…?申し訳ありません」


 俺は給仕の男に別の者に朝食を持ってくるよう伝えた。知り合いでもない男にそんな事を言われると、警戒してしまう。ヴァルンタンの手の者かも知れぬのだ。知り合い以外は警戒しておかねば。

 それに俺以外の男にレリアを狙われると不快だ。大変不快だ。


「レリア、朝だ。起きてくれ」


 俺はレリアの体を揺らしながらそう言った。


「……ん…」


 レリアはいつも通り眠そうに体を起こした。俺は魔法でコップを創り、そこに水魔法で水を注いだ。そしてコップを渡すと、レリアはそれを一気に飲み干した。


「おはよう、ジル」


「ああ、おはよう。レリア、朝食が運び込まれる前に着替えてしまおう」


「食べた後でいいんじゃない?」


「それもそうか」


 レリアはベッドから出て、食卓に座った。俺は隣に座り、朝食を待った。もしヴァルンタンの手の者が襲撃してくるのであれば、近くにいた方が守りやすい。そうでなくても、レリアの近くにいたい。


「失礼致します。何か気に障るような事がございましたか?」


 昨日、出迎えの時に先頭にいた者が来てそう言った。おそらく先程追い出した者の上司か何かなのだろう。いや、もしかするとこの部屋の担当の責任者なのかもしれぬな。


「いや、そういう訳ではないが…あの者は最近入ったのか?」


「いえ、五年ほど前から働いております」


「そうか。最近入った者はなるべく近づけるな。それとヴェンダース出身の者もな」


「承りました」


 責任者はそう言うと部屋を出ていった。他に警戒すべき者は思いつかぬが、まあいざとなれば斬れば良い。


「ねえ、何か変じゃない?」


「何が変なのだ?」


「ジルってそんなに厳しくなかったでしょ?」


 俺が最近入った者を近づけるな、と言ったのをサービスが不満だから、とレリアは勘違いしてしまったようだ。


「いやな、実は昨日アシルが訪ねてきたのだ。俺がレリアと出逢う前に一騎討ちで屠った将軍の長子が俺を恨み、もしかすると危ないかもしれぬ、と」


「それって大丈夫なの?」


「ああ。暗殺者如きに負ける俺ではない。それにアシルが影から護衛してくれるだろう。だが、念の為になるべく俺から離れるな」


「じゃあ大丈夫だね。あたしはジルから離れないもん」


「ああ。俺もレリアから離れぬ」


「朝食をお持ちいたしました」


 レリアに昨日の説明をしていると、朝食が運び込まれた。

 思ったのだが、料理に毒でも入っていたら、俺はともかくレリアが危ない。だが、毒見をするのも色々と失礼だし、食べかけをレリアに食べさせるのも気が進まぬ。天眼で詳しく見るだけで良いか。人が死ぬような毒が入っていれば分かる。


 天眼で見てみたが、この朝食は大丈夫なようだ。まあそれもそうか。ジュスト殿が勧めてくれた宿だ。危険なはずあるまい。

 それにしても朝食にしては多いな。俺はいつもこのくらいは食べるが、その旨は伝えておらぬ。アシルが伝えてくれていたのか。


「では食べよう。いただきます」


「いただきまーす」


 俺とレリアは朝食を食べ始めた。俺は眠るのを忘れていたので、その分食べねばならぬ。


「ジル、そんなに急いで食べなくても、取ったりしないよ」


「急いでいるつもりはないが…急いでいるように見えたか?」


「うん。急いで食べるなら、喉に詰まらせないように気をつけてね」


「…急いでおらぬ」


 急いで見えるようなら仕方ないが、急いでいるつもりは無い。だが、レリアが急いで見えると言うのであれば、急いでいるように見えるのだろう。


 しばらく食べて、空いた皿が増えてくると、給仕達が慌て始めた。耳を澄ませて部屋の外の会話を聞いてみると、この食事は本来すべて食べるものでは無いらしい。大量の料理の中から好きな物を選んで食べるのだが、俺が全て食べてしまう勢いなので、追加分を作るべきか話し合っているようだ。


「おい」


「はい、何でしょうか?」


「追加はいらぬぞ。ここにあるだけで足りる」


「分かりました」


 給仕が俺の言葉を部屋の外にいる給仕に伝えに行った。追加分が運ばれてきたら、出発が遅くなり、早く出ようという約束が守れぬ。


 食後、片付けを終えると給仕を全て追い出した。


「ジル、どっちがいいと思う?」


 レリアが服を二着並べて俺に聞いてきた。

 白いシャツと黒いスカートの組み合わせと、青いワンピースだ。


「考えても良いか?」


「うん。ちなみに今日着る服だよ」


「ああ。どうしたものか…どちらのレリアも見たいが……こちらが良いがこちらも捨てがたいな……良し、今日はこっちが良い」


 俺は結局青いワンピースを着てもらうことにした。理由は特にないが、レリアに似合わぬものは無いので良かろう。


「え?ほんとに?あたしもそっちがいいと思ってたんだよね」


「だが、こちらを着たレリアも見たい…」


「じゃあこっちは明日着るね」


「そうしてくれるとありがたい」


 やはり明確な姿が分かるとより楽しみになるな。今日も楽しみだが、明日も楽しみだ。


「ジルはこれね。前から決めてたんだ」


「ではそれを着よう」


 俺はレリアが前から決めていてくれたという服を着た。俺は普段からどんな服を着ているかなど気にせぬが、普段と同じような服だろう。


 着替えも終え、身だしなみも整えた。アシルが送ってきてくれた金貨も異空間にしまった。


「では行くか」


「うん。何かこれだけで楽しいね」


「ああ。今のうちに遊んでおかねば七月からは忙しくなるらしい」


「今はそんな事考えたらダメだよ」


「ああ。楽しむ事だけ考えよう」


 俺は部屋を出て鍵を閉めた。新鮮だ。俺は初めて出掛ける時に鍵を閉めた。


 俺とレリアはまず手芸屋に向かった。レリアの作品を見たことはないが、おそらく職人が作ったと言われても信じられるくらい上手なのだろう。


 手芸屋に入ると、布や糸が置いてあった。他には道具らしきものもあるが、俺には何が何か分からぬ。

 レリアが手に取って説明してくれるが、理解できなかった。そもそも基礎知識すら無いので仕方あるまい。


 結局、布や糸、道具などを一式買い揃えた。他にも手で縫うより早く縫える機械や糸から布を作る機械など、大型の専門的な物もいくつか買った。

 金貨五百枚程であったが、この額でレリアが楽しめるのだ。安い。

 大型の機械などは繊細で素人が下手に運ぶと壊れてしまうらしいので、王都の屋敷に運んでもらうことにした。王都の屋敷に勤めている者の中に一人くらいは詳しい者がいるだろう。

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