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神に仕える黄金天使  作者: こん
第1章 玉座強奪・諸邦巡遊篇
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第177話

 ちゃんとした(キトリーが作った)料理を用意してもらい、それを食べた。

 食後、ファビオ達と少し遊び、部屋に帰した。明日は朝が早いのでレリアも寝た。

 俺は明日の朝使う馬車を王都の屋敷に取りに行き、アルフォンスに手入れと管理を任せた。王都までの送迎はアルフォンスが担当することになったのだ。


 そして今、クラウディウス達に呼び出され、物置となっているレリアの部屋にいる。


「何だ?」


「ジル・デシャン・クロード様、キアラ嬢が生きておられるとの事ですが、なぜ秘密になさるのでしょうか?」


 スイが俺の正面に座ってそう言った。

 キアラが生きている事を隠す理由など俺は知らぬ。


「それは知らぬ。キアラの趣味ではないか?」


「左様ですか」


「それだけか?」


「私奴からもひとつよろしいでしょうか?」


「何だ?」


 リリーも何かあるのだろうか。まあスイのような俺には答えられぬ質問なら帰ろう。


「明日から旅行に行かれるとのことですが、その間、ジル・デシャン・クロード様の護衛はどうなるのでしょう?」


「必要ない。この国で今俺より強い者はおらぬ。それに今回はレリアと二人きりで行けるから、いつもより楽しみにしていたのだ」


「失礼致しました。ですが、元王太子アルフレッドなる者が王位を狙って潜伏していると聞きました。その者は各地で魔物の討伐に当たっていたダークエルフを集めているとも聞きました」


「だから何だ?」


「いえ、魔物とダークエルフ、脅威が二つあるのでは厄介ではありませんか?」


「確かに全てが俺に向かってくれば面倒だが、そんな事はあるまい。だが、心配なのであれば、おぬしらの軍を使ってアルフレッドの捜索と魔物の討伐をすれば良い」


「それは我ら水魔導王軍とリリーの呪魔導王軍を総動員してもよろしいのでしょうか?」


 スイがそう聞いてきた。水魔導王軍と呪魔導王軍を合わせれば二百万を超える。悪魔は魔族の頂点とキアラが言っていたので、少し多いかもしれぬな。獲物の取り合いにはならぬとは思うが、少なめでも良いか。


「いや、多いな。両軍合わせて二十万だ。それ以外は待機せよ」


「は」


「すぐに取り掛かります」


 リリーとスイはそう言って部屋を出ていった。急ぐ必要など無いだろうに。


「ジル様、我らからもひとつ。キアラ様が戻ったら、キアラと七近衛、八人でジル様に挑む。ジル様も格下ばかり相手していると、せっかくの腕が鈍る」


「分かった。その前にアキの修行の成果を見てやる。その後はおぬしらの相手をしよう」


「うむ。我らも楽しみにしておこう。ジル様、時間を貰って悪かった。明日から我らはアティソン爺と魔導具の設置をしてこの城の守りを固める」


「ああ、任せた。ではな」


 俺は部屋から出て、自分の部屋に戻った。

 レリアが気持ち良さそうに寝ているので、起こさぬように隣に寝転んだ。やはりレリアの隣は落ち着くな。


 翌朝。いつもより少し早く起きた俺とレリアは何度も荷物の確認をしていた。荷物と言っても着替えが大半なので、ここまで詳しく確認する必要は無いが、まあこれはこれで楽しいので良い。


「ジル様、馬車の用意が出来ました。いつでも出発できます」


 アルフォンスが部屋に入ってきてそう言った。やっとか。


「レリア、行こう」


「うん。でも王都の城門ってもう開いてるの?」


「日の出と共に開くはずだ。開いてなければ開くまで待とう」


「それもそうだね」


 俺は異空間に荷物を全てしまい、レリアと部屋を出た。

 俺とレリアが廊下を歩いていると、主要な者が見送りに来ていた。必要ないとは言ってあったが、来るなとは言っておらぬ。悪い気はせぬので良かろう。

 俺とレリアが馬車に乗り込むと、アルフォンスが御者台に座った。そして馬車を囲むように四騎が並んだ。


「出発します」


「ああ。頼んだ」


 馬車が動き出すと、レリアはガイドブックを開いて計画の確認を始めた。

 初日は本屋と俺の礼服屋に行く。本屋はそれなりに多いそうなので五軒ほど回る。

 二日目は手芸屋とレリアの服屋に行く。レリアは旅を始めるまで手芸が趣味だったそうだ。時間をかければ服も作れるそうだ。器用なものだ。俺には出来ぬ。

 三日目は曲馬団の公演を見に行く。丸一日あるそうだ。食事も出されるそうなので三日目はここだけだ。

 四日目は食べ歩きをする。もちろんそれ以外にも気になる店があれば入る。

 五日目は何も決めておらぬ。先の四日間で楽しかった所に行けば良い。何も無ければホテルで待機でも良い。ホテル・ド・エスプリットにいれば、暇はせぬそうだ。

 五日目は城門が閉まるまで、つまり日の入りまでに王都を出なければならぬ。アルフォンス達は朝から待機してくれているそうだが、日の入りまで楽しんできて良いと言っているので、楽しんでくる。


「王都が見えたぞ」


「あ、ほんとだ。もう開いてるね」


「荷物を出しておこう」


「うん。お願い」


 城門を通る際、門番に王都に来た目的を聞かれる。そして荷物の確認もされる。その際、目的に合わない荷物であれば怪しまれて面倒なことになる書いてあった。なので五日間の観光なのに荷物を持っていなければ、怪しまれて時間を無駄に消費する。念の為に公爵家の紋章が入った短剣を二人とも持っているので、いざとなれば使えば良い。


「到着しました」


 城門の近くで馬車を止めてもらい、降りた。荷物は俺が背負えるくらいの大きさに纏めてある。どれだけ大きく重くても持てるが、それはそれで門番に怪しまれる。


「礼を言う。また五日後は頼むぞ」


「は。お気を付けて」


「ああ。ではな」


「失礼します」


 アルフォンス達が帰るのを見てから城門に向かった。開門直後は並ぶらしいが、今日は空いている。まあ空いているのは良い。


「行こう」


「ねえ、王都に兄さんがいるって言ったの覚えてる?」


「ああ。確かリノ殿であったな」


「あそこにいるんだけど」


 レリアが門番の一人を指差してそう言った。俺も見覚えがある。確か王都に凱旋し、その後アキとエヴラールと歩いていた時に話しかけてきた衛兵だ。


「挨拶をしに行こう」


「え、今から?」


「どの道通らねばならぬ」


「そうだよね。じゃ、行こう」


「乗り気でないな?何かあったか?」


「ちょっと緊張しちゃってね。久しぶりだから」


「ならば別の門から行くか?」


「ううん、大丈夫。行こう」


 レリアは覚悟を決めたようにそう言った。レリアが嫌なら良いのだが、レリアが決めたのなら俺に異論はない。


「リノ兄さん、久しぶり」


「レリア!どうしてここに?」


「ジルと王都旅行に来たんだけど」


「ジル?」


「うん。あたしの旦那様だよ。ね」


 レリアはそう言って俺の方を見た。俺の方が緊張してきてしまった。それにレリアの兄上と会うとは思わず普段着で来てしまった。


「ジル・デシャン・クロードです。どうぞお見知りおきを」


「その名は…使徒様と同名の者か。縁起が良いな。良し。俺は応援しよう」


「兄さん、同一人物なんだから同名なのは当たり前でしょ?」


「レリア、バカ言うな。お前が使徒様と会えるはず無いだろ。使徒様は公爵に叙されたと聞いたぞ。もし本当に使徒様だったら、お前は公爵夫人だ。夢を見すぎるな」


 どうやら俺が使徒ということは伝わっていないようだ。教えて差し上げよう。


「リノ殿、とお呼びしても?」


「ああ。俺はジルと呼ぶぞ。義弟には気を遣わんと昔から決めている」


「そうですか。こちらを見ていただいてもよろしいか?」


「何だ、短剣なんぞ出して…これは公爵家の?!盗んだのか?おい、レリア、盗人との結婚なら大反対だ!すぐ別れろ!父上達には俺から説明してやるから!な?盗人なんぞ、俺がこの場で切り捨ててやろう」


「ちょっと待ってよ、兄さん。これはジルの弟から貰った短剣で…」


「家業が盗み?!許せん!レリア、目を瞑れ!俺が今すぐ切り捨ててやる!おい、貴様、よくも俺のレリアを誑かしてくれたな」


 リノ殿はそう言って剣を抜いた。それを見た他の門番も槍などを持って出てきた。


「隊長、そやつは何者ですか?」


「盗人だ!公爵家から短剣を盗み、俺のレリアを盗もうとした!ここで切り捨てる!お前らはレリアを守れ!」


「はっ!レリアさん、どうぞこちらへ」


「兄さん!止めてよ!」


 レリアが大きな声でそう言った。俺が先に怒るべきであった。


「レリア、良い。後は俺がどうにかせねばならぬ」


「でも…」


「リノ殿は存在せぬ悪人からレリアを守ろうとしてくれているのだ。誤解を解いてやれば打ち解けられる」


「存在せぬ悪人とはなんだ!お前からレリアを守らねばならんのだ!レリアの為を思うなら大人しく切られろ!」


「レリア、少し待ってくれ」


「うん」


 俺はレリアを下がらせ、剣を取り出して抜いた。そして門番が持つ槍の穂先を全て切り落とした。

 アシルにも念話で連絡しておこう。


「本性を現したな、盗人め!」


「良いのか?俺が本当に公爵であれば、罪に問われるのはおぬしらだ」


「構うものか!お前ら、全責任は俺が持つ!悪人の戯言など聞き流せ!」


 面倒なことになってしまったな。アシルが応援を送ってくれるまで待つしかあるまい。


「こうしよう。俺はおぬしらに手を出さぬ。剣もしまおう。それから取り調べも受けよう。だからレリアの前で乱暴な真似はするな」


「それで決まりだ。剣をこっちに寄越せ」


 俺は剣を鞘に収め、リノ殿に投げた。そして両手を挙げた。


「捕縛せよ!行け!」


「約束が違うではないか」


「盗人め。よく覚えておけ。罪人との約束など守る必要はない」


「兄さん!もう縁切っちゃうよ!」


「おぉ、分かってくれたか。レリア、こっちに来い」


「バカじゃないの?あたしはジルと一緒に暮らすんだから、兄さんと縁を切るの!ジル、行こ」


「あ、ああ」


 レリアが俺の手を引いて歩き出した。門番達も隊長(リノ殿)の妹には手を出せぬのか、道を開けてくれた。


「どいて。ジルに手出ししたら、一生恨むからね」


「待て、レリア…ええい!レリアに恨まれてもいい!そやつを捕らえろ!レリアは俺が落ち着かせる!」


「だから、やめてって言ってるでしょ?分かんない?」


 どうしたものか。レリアがこんなに怒っているのは初めて見た。俺の為に怒ってくれているのは嬉しいが、俺もどうにかせねば。出来ればレリアには笑っていてもらいたい。

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