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神に仕える黄金天使  作者: こん
第1章 玉座強奪・諸邦巡遊篇
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第171話

 妖魔導王様がしばらく歩くと、巨大な扉に着いた。俺が通った扉ではない。


「サスキア、開け」


 ───了───


 妖魔導王様が指示を出すと、扉が開いた。妖魔導王宮内の扉は全てサスキアとやらが操っているのか。キアラの城のリンも俺が知らぬだけで、他の扉の管理もしているのかもしれぬ。

 扉が開くと、十二名の悪魔を先頭に数千を超える悪魔が跪いていた。クラウディウス達はおらぬようだ。


「良う聞けい。ここにおるジルは妾の未来の旦那様じゃ。準妖魔導王じゃから、逆らうでないぞ」


「アリマーダス様、それはどういう経緯で…?」


 先頭にいる十二の悪魔のうちの一名が前に出てそう言った。下半身が魚のようになっているので、おそらく水の悪魔であろう。


「ジルはグルの生まれ変わりに等しい。妾の旦那様に相応しかろうて」


「左様でございましたか」


 水の悪魔はそう言うと一歩退いた。

 次は全身が燃えている悪魔が前に出てきた。おそらく火の悪魔であろう。


「我ら十二魔導王、新たなる準妖魔導王ジル・デシャン・クロード様を歓迎いたします」


「うむ。解散じゃ。此度の試験はジル一人で行なう。それ以外の参加者には、乱入か自死を選ばせてやれ」


「御意」


 火の悪魔がそう言って右手を挙げると、跪いていた悪魔が一名を除いて消えるように去った。残ったのはローブのフードを深く被った悪魔だ。


「リリー、異議があるなら早う申せ」


「準妖魔導王様は妖魔導書を取得されていないようですが、よろしいのでしょうか?」


「今から取得する。問題は無かろうて。それともなんじゃ?妾に逆らうのかえ?」


 幼子の姿をしている妖魔導王様だが、リリーと呼ばれた悪魔に対する威圧感が凄い。リリーも見たところ、それなりに強いはずだが、妖魔導王様に気圧されている。


「いえ…」


「なら帰れ。解散と言ったはずじゃ」


「ですが、此度の試験の担当は私奴でありますので…」


「ならば早う始めんか」


「は、はい」


 リリーは返事をすると、飛び立った。何度か俺の方を振り向いている。


「ジル、行ってやれ。あやつは呪魔導王リリー・ディミーじゃ」


「分かった。ララちゃんはどうする?」


「妾は祝賀会の準備をしておこうぞ」


「そうか。では行ってくる」


 俺はリリーを追って飛んだ。ある程度離れた所で待っていてくれたらしい。


「ジルだ」


「り、リリー・ディミーでございます。私奴の事など、覚える必要はございませんので…どうか、楽にお過ごしください」


「そうか。で、どこに向かっているのだ?」


「僭越ながら、私奴の居城にて試験を行ないますので…」


「そうか。そう畏まる必要は無かろう。おぬしこそ楽にせよ」


「ですが…」


「まあ良い」


 接しにくいな。まあ外部からやって来て、いきなり自分を越えられたらこうなってしまうのも仕方ない。


「そう言えば、他の取得希望者はどうするのだ?」


「乱入した者は殺してください。それ以外は私奴が呪殺いたします」


「そうか」


 こんな謙っているリリーだが、妖魔導王様に認められ、魔導王となっているのだ。それなりに強かろう。


 しばらく飛ぶと、禍々しい魔力が漂う城が見えてきた。リリーがその城に着地すると、城門が勝手に開いた。

 リリーが中に入っていったので、俺も後を追った。

 しばらくついて行くと、中庭のような場所で止まった。


「どうぞこちらへ」


「ああ」


 俺が中庭に入ると、リリーはどこかへ行った。

 しばらくすると、中庭全体が結界に覆われた。この結界は内から外へ出るのを防ぐもので、侵入は容易かろう。


「試験を始める。参加者は中庭へ、十数えるまでに行け。間に合わなかった者は呪殺する」


 城全体に響くようにリリーの声がした。


「…八、七、六、五、四、三、二、一」


 八名ほどの悪魔が飛び込んできた。こんなに少ないものか。


「結界内の悪魔を全て滅せよ。期限は定めないが、遅い場合は呪殺する。それでは始めなさい」


 リリーがそう言うと、結界ごと転移した。

 転移先には万を超えるであろう下級悪魔がいた。結界も広くなっているようだ。

 結界内の下級悪魔はこちらを襲う気は無いようで、それぞれ好き勝手に動いている。


「とりあえず下級悪魔(ザコ共)を全滅させるまで協力しねえか?」


 飛び込んできた悪魔の中で一番の大男がそう言った。『悪魔を全て滅せよ』という事は、他の参加者も含まれているのであろう。そうでなくても俺は他の参加者を全て殺さねばならぬ。


「いや、その必要は無い。俺が全て殺す」


 俺はそう言って破裂魔法の大砲を千門用意した。


「自害するなら見逃す。それ以外は殺す」


「お前の理論だと、誰も生き残らねえじゃねえか」


「そう言ったのが分からぬか」


「おい!まずコイツを殺そうぜ。こんな野郎は妖魔導書を持つに値しねえ!違うか!」


 俺と大男の会話を他の参加者は見守っている。まあ仕方あるまい。


「自害する者はおらぬか。ならば仕方あるまい」


 俺はそう言って破裂魔法の魔力弾を乱射し始めた。これだけいれば狙わずとも当たる。それに俺に当たっても何も起こらぬ上、敵しかおらぬので、気を使う必要も無い。


「遠距離魔法が得意か。肉体強化の悪魔であるこの俺様が捻り潰してやる」


 大男はそう言って俺に向かってきた。

 俺は両腕に殴殺魔法・改を纏わせ、魔眼を飛ばした。こうすれば他の参加者と下級悪魔が俺に向かってくれば、すぐに分かる。

 大男は俺を掴もうと両腕を伸ばしたので、両腕を掴んでやった。


「馬鹿め。力比べでこの俺様に勝てると思ったか」


「馬鹿はどちらだ。誰も力比べをしようなどと言っておらぬぞ」


 俺は天眼で奴の体を詳しく見て、魔石を探した。そして殴殺魔法を脚に纏わせて、胸にあった魔石を蹴り抜いた。


「ぐっ…」


「砕けぬか」


「これくらいっ!なんともない!」


 大男はそう言って俺の両腕を振り払おうとしたが、力比べをしても俺が勝つので、振り払えぬ。


「馬鹿な」


「分かったなら、魔石を晒せ。楽に殺してやろう」


「誰が…!」


 わざわざ魔石を晒してもらわずとも、俺は奴の魔石を砕ける。肉体強化の悪魔と言えども、二度目の蹴りには耐えられぬようで、魔石は砕け、奴は死んだ。


 俺が大男と戦っている間、他の参加者と下級悪魔が戦いを始めていた。大男の言った通り、参加者同士で協力しているようだ。

 俺の撃った魔力弾は当たった直後には何も起こらぬので、害がない見せかけの魔法と思ったか、下級悪魔は避けようともせぬ。さすがに他の参加者は避けている。

 魔力が浸透した悪魔を全て破裂させた。三千ほど減ったか。


 俺は残った悪魔を一掃する為、魔眼を戻して巨大な魔力弾を作り始めた。別に大砲を使わねばならぬ訳ではない。大砲を使えば、簡単な指示だけで連射ができるので、楽をしているだけだ。

 俺は全魔力の二割を使って巨大な魔力弾を作った。下級悪魔と他の参加者は近くにいるので、撃てば全員に当たる。


「自害する者はおらぬな」


 俺はそう警告をしてから、魔力弾を撃った。まあ呟いただけなので、この警告が聞こえた者はおらぬだろうが。

 俺は魔力弾と同じ速さで奴らに向けて飛んだ。即効性がある訳では無い。期限を知らされておらず、なるべく早く終わらせねばならぬので、できる限り自分で殺す。


 魔力弾の着弾と同時に俺は参加者を急襲した。協力していると言っても、敵同士なので、互いにある程度の距離はある。


「自害するか?」


「しない。さっきから何なんだ、あんたは」


「準妖魔導王だ。来世は俺に仕えるか?」


「逆だね。嘘つきは僕が今ここで殺す」


「そうか。やってみよ」


 一人目の参加者は遠距離魔法が得意なようで、魔法陣を構築している。俺は魔法陣には詳しくないのでどういう内容かは知らぬが、まあ当たっても死ぬことはなかろう。


「まだか?」


「ちょっと待てよ」


「遅い」


 あまりにも長かったので、魔石を剣で貫いて殺した。魔法で殺さねばならぬとは聞いておらぬのでよかろう。


 次の参加者を襲おうと思ったが、着弾した全ての悪魔に魔力が浸透したようなので、破裂させた。

 残った悪魔は一人もおらぬので、終わりか。


「リリー、終わったぞ」


 俺がそう言うと、中庭に戻った。誰もおらぬようだが、待てば誰か来るだろう。

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