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神に仕える黄金天使  作者: こん
第1章 玉座強奪・諸邦巡遊篇
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第15話

 俺とアシルは一晩かけて『エレファントボアの調査報告書』を書いた。リオネル卿が連れて来た兵士や従者に何度も体を心配されたので『使徒が眠らないくらいで驚くな』と答えておいた。これで俺の噂が拡がり、一々心配されなくなるといいが。他にも一晩中報告書を書いていた俺とアシルの為にオディロンとロドリグが獣を狩って来てくれて、それを食べたりした。


 で、その内容の一部がこれだ。


『エレファントボアには全身に九つの魔石があった。眉間、左右のこめかみ、四肢の付け根、尻尾の付け根、心臓。また、心臓の魔石は心臓を覆うようにあった。

 魔脈は牙と爪としっぽに集中していた。討伐の際は気おつけること。

 腹には三つのたまごがあった。二つは既に命を失っていたが残りの一つは命を宿していたので北方騎士団長副官リオネル卿が保護をしている。』


 こんな感じの文章を一晩中書いていたのだ。死ぬかと思ったがこれが世に発表され、図鑑に載ったりすると考えると楽しく書けた。


 朝になり、リオネル卿にこれを渡すと驚いていた。


「一晩でこれを?」


「ああ。アシルと二人でやった」


「仕事が早いですな。私も朝食までに確認をしておきます」


 そう言って幕舎へ戻って行った。


「「「ご主人様、おはようございます」」」


「おはよう。そういえばジェローム卿はいつ頃来るのだ?」


「昼食までにはいらっしゃるとの事です」


 俺とリオネル卿の会話が終わるのを待っていたように従者達に挨拶される。今日はカール班に加え、セザール班もいて、そのことを忘れていた俺は驚いた。俺の問いにはセザールが答えた。


「じゃあ、カミーユはいつ頃だ?」


「ジェローム様を案内すると言っていたので恐らくジェローム様と同じく昼食までには来るでしょう」


 セザールに教えてもらいながら朝ご飯の場所へ行く。火の近くで食べるのだ。

 準備は既に出来ている。あとは俺の挨拶だ。今回は食事風景を紹介しよう。


「皆、揃ったな。では、頂こう」


 俺の言葉を聞き、俺の器に隣の従者、今回はセザールがスープを注ぐ。俺がそれを口にし、こう言う。


「さあ、皆も食べてくれ」


 俺のこの言葉を聞き、皆がご飯を食べ始める。アシルがやれと言った儀式だ。アシルも俺の言葉を聞いてから食べ始める。ちなみにオディロンやロドリグもこの儀式に参加している。

 この儀式が終わると皆、だんだんと喋り出す。フィデールが俺の買い物に誘われた事を自慢したり、まあ自由だ。これはこの一ヶ月でここまで自由な感じになるようにした俺の努力の結晶だ。

 会話の一部をここに記そう。


「草なんていらないよ」


「いえ、これは食べていただかないとお体に悪うございます。ご主人様にはいつまでも健康でいていただかなければなりません」


「いいか?とても大事なことを言うぞ。この肉が生きていた頃、草を食べてるだろ?そうでなくても草食獣を食べてるだろ?だから良いんだよ」


「いえ、ですが…」


「俺の体はお前らの体と違うんだよ、仕組みが。だって俺は使徒だもん」


「そうですか。いつか分かる日が来ますよ、野菜の大切さが」


「そういうもんか?」


「はい」


 まあ、こんな感じだ。実は俺、野菜が嫌いなのだ。あんな草を食べるなんていも虫と一緒だ。あ、これはベジタリアンを見下してるわけじゃない。


 そんなこんなで朝ご飯を食べ終え、ジェローム卿を待つ。


「ジル殿、暇か?」


「ああ、暇だ。何か案があるのか?」


「ああ。この陣地の周りの木に縄を張り、わかりやすくしないか?」


「どうせなら柵を作ろう」


「お、大きく出たな」


 俺らは昨日切った木が置いてある場所へ行き、手頃な木を選ぶ。

 そして十字に組み、紐で結ぶ。それを繋げていけば柵になるだろう。仕事が無かった従者が集まってきて順調に進む。


「これで完成か。あとは木に結びつけるだけか」


「ああ。それは俺に任せろ。ジル殿はジェローム卿を出迎える準備をしておいてくれ」


「もう昼か?」


「まだか?」


「さあ?」


 俺は一旦、休憩する。

 ぼーっとしていたが良い案が浮かんだ。家を作ってずっといられるようにしようかな。そして井戸を掘るか水を引いてくるかして水も得られるようにしようか。


「おーい、アシル!」


「どうした?こちらは終わったぞ」


「家を建てよう。豪華な家じゃなくていいから」


「え?家?まさかジル殿、ここに住む気じゃないだろうな」


「住みはしないが狩りの時、長期滞在できるだろ。一々、帰らなくても荷物を置いておける」


「んー、カールやセザールと相談しておく。どうせ建てるなら大工に頼もう」


「水が得られるようにもしたい」


「井戸を掘るのか?」


「ああ、そうだ」


「それもプロに頼もう。素人がやって穴だらけになっても危ないから。まあ、カール達と相談してくる」


「ああ、頼んだ」


 俺はアシルに家を頼み、散歩することにした。オディロンを連れて。


 ───ジル様、家を建てるなら馬小屋も作った方が良いと思う。それと我の部屋も───


 じゃあ、俺の家とアシルの家と馬小屋を建ててもらえば良いか。従者達には分かれてもらって。


 ───追加があるならアシル殿へ伝えよう。ジル様の家とアシル殿の家、そして馬小屋を建てるように、と───


 ああ、頼んだ。金はアシルが持っているから。


 ───元々、ジル様に与えられた金だ。ジル様が無駄遣いしないようにヴォクラー様がアシル殿へ預けただけだ。一割はアシル殿に与えられた物だが───


 え?そうなの?初耳だ。そんなことアシルは一言も言っていなかったぞ。


 ───そうだったか。まあ、知って損はあるまい。それに使いすぎてもジル様ほどの活躍をすれば金貨百枚などすぐ稼げるであろう───


 え?そうなの?そんなに稼げる?だって金貨百枚って言ったらすごいぞ。


 ───ジル様にはそれほどの価値があるということだ。まずい、もうすぐ天気が悪くなる。急いで帰ろう───


 分かるのか?


 ───ああ。急ごう───


 俺とオディロンは急いで帰った。すると雨が降り、雷もなり始めた。


「エレファントボアを幕舎に入れろ!濡らしてはならぬ!」


 リオネル卿の指揮の下、兵士達がエレファントボアを片付けている。濡らしてはならぬらしい。


「もうこれ以上入りません!どう致しますか?」


「仕方ない!我らの荷物を外に出し、そこに入れろ!」


 土砂降りの中、兵士達が荷物を出し、そこへエレファントボアを入れている。

 入れ終わったようだ。

 それを待っていたかのように雷が落ちた。昨日、エレファントボアを狩った方向で。


「木から離れろ!雷が落ちる!」


 それを言い終えぬうちに雷が近くに落ちた。いや、近くではない。エレファントボアの頭を仕舞っている幕舎に落ちた。幕舎が燃え上がり中からエレファントボアが出てきた。


「リオネル卿!たまごはどこに?」


「頭と一緒に!まさか…」


「産まれたかもしれぬ」


 背中に炎のを纏ったエレファントボアがこちらを、いや、俺を睨み、走ってくる。


「俺から離れろ!奴の狙いは俺だ!」


 エレファントボアが吠えながらこちらに来る。

 母親のエレファントボアは大人の象くらいの大きさの猪だったが、こいつは子象くらいの大きさしかない。

 オディロンやロドリグは雨が苦手らしく、幕舎に篭っているが、こいつになら俺一人で勝てる。勝てる勝てる勝てる!


「アシル!援護を!」


「おう、任せろ!」


 俺は鎧を纏い、剣を抜く。

 子エレファントボアは俺の方へ走って来たが剣の間合いギリギリで急にアシルの方へ走り出した。アシルは木に登ろうとしていたが子エレファントボアの突進で木が根本から折れる。落ちたアシルは子エレファントボアに後ろ足で蹴られ深手を負った。


「アシル!」


 俺はアシルの方へ走り出した。子エレファントボアもこちらに向かって走り出した。俺と子エレファントボアは正面衝突した。俺は吹っ飛んだ。

 子エレファントボアは俺に追撃をしようとこちらに走ってくる。


 あ、終わった…


 俺は目を瞑り、助かるように祈る。

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