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神に仕える黄金天使  作者: こん
第1章 玉座強奪・諸邦巡遊篇

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第153話

 あれから俺達は全ての屋敷を見て回った。次の日の朝、いや、昼前までかかったので、ここの使用人に料理を頼んで食堂で待っている。さすがに不味いとは思わぬが、口に合わぬかもしれぬので、確かめておきたいのだ。

 ちなみにエヴラールは逃走経路や侵入経路などを、ロイクと確かめに行っているので、適当な食事を届けるように侍女に言いつけた。


 ロイクの指示で、侯爵家にあった宝石などを現在の価値で計算すると、金貨七十万枚であったらしい。アキが持って行った分は除いて、だ。それとは他に金貨十万枚と銀貨三十万枚があったという。俺の全財産の二倍以上である。

 ちなみに侯爵家以外には金庫などは無かった。


「兄上、今日から休んでおいた方がいい」


 アシルがそう言った。いきなりどうしたのであろうか。


「いや、俺は大丈夫だ」


「そうでは無い。そうだな…七月まで休んでくれ」


「いや、大丈夫だ」


「ギュスターヴ四世戦とコンツェン戦の後始末とか、教皇就任の儀式とかは俺に任せてくれ」


 こんなに言われるのであれば、休んでも良いか。ならば色々と頼んでおこう。


「貴族の面倒事も頼むぞ」


「ああ。兄上は公爵で教皇だ。前代未聞だが、取り入ろうとする者も多かろう」


「今は将軍の席が空いているのであったな。それも頼む」


「いや、軍も色々と改革を進めるらしい。一人の元帥の下に陸軍大将と水軍大将が一人ずつ、その下に数名の将軍がつくみたいだな」


 アシルは情報通だな。いや、こんな大事な情報をなぜ俺に言わぬのだ?俺は兄とは言え、立場上はアシルの上官にあたるはずだ。


「お待たせいたしました」


 料理が運ばれてきた。料理人全員に作らせてみたので、量は多いが、いつもの昼食の二倍程度だ。腹が減っているので食べれるだろう。


「いただきます。で、なぜ俺には情報が来ぬのだ?」


「いただきます。俺のところにも今さっき念話で来た情報だ。ウルファーから五人貰ってヤマトワで仕込んだ奴らだ。兄上には無駄な情報を与えないように真偽を確かめてから伝えるようにしている」


 俺とアシルは食事をしながら会話を続けた。味はまあまあだ。レリアやキトリーには勝てぬが、そこらの食事処よりは美味しいと言ったところか。


「なるほど。アシル隊という訳か」


「いや、影狼衆と名付けた」


 安直ではあるが、分かりやすいな。まあ呼び名などどうでも良いか。


「で、どこに就きたい?一番上か?それとも二番目くらいにしておくか?」


「ジェローム卿やジュスト殿は何と?」


「まだ陛下がジェローム卿と相談している段階だ。ジュスト殿には伝わっていまい。ジェローム卿も何とも言っていない」


「まあジェローム卿は元帥であろうな。ジュスト殿は陸軍大将か将軍あたりであろう。水軍にはなるまい」


 ちなみにサヌスト王国には正規の水軍は少なく、約二万人だ。まあ海が近いクラヴジック城の歩兵のうち、約半数は水兵とする習わしがあるそうなので、合計五万強と言ったところか。


「おい、主殿はその陸軍大将がお似合いだろ。ワタシはその補佐官になってやろう」


「正式な通達はまだだ。改革が行われぬ可能性もあるし、俺が陸軍大将にならぬ可能性もある。だが、その改革が行われるのであれば、陸軍大将が良い」


「俺も同意見だ。改革が始まりそうになったら根回しをしておく」


 俺とアキ、俺とアシルの意見が揃う事はそれなりにあるが、三人の意見が揃うとは珍しい。


「御屋形様っ!」


 アンヌが食堂に駆け込んで来た。大慌てだな。


「大変ですっ!陛下がいらっしゃいましたっ!」


「別に大変では無かろう。お通しせよ」


「はっはい!」


 アンヌはそう言うと大急ぎで出ていった。昨日とは印象が違うな。


「彼女にとっては大変だろう。何事も兄上の基準で考えすぎない方がいい」


「それもそうか」


「いきなり訪ねて申し訳ない」


 陛下が入ってきた。早いな。すぐそこまで来ていたのか。

 俺は立ち上がって出迎えた。


「陛下、どうかなさいましたか?」


「ジル卿、まあ座って食事を続けてくれ」


 俺は陛下に言われて座って食事を再開した。


「コンツェン戦の後片付けを終えて落ち着いたら、色々と改革をしようと思う。まずは奴隷解放、そして軍制改革と政治改革。それからヴォクラー教を国教とするノヴァーク、テイルスト、クィーズスの三国の併呑。そして大陸の統一。協力してくれないか?」


「もちろんでございます」


「ではまず、軍制改革について、私の考えを話す」


 それから陛下は軍制改革を含めた改革について語った。


 まず、軍制改革について。

 陸軍と水軍を束ねる元帥。

 その元帥の下で陸軍を束ねる陸軍大将、水軍を束ねる水軍大将。

 陸軍は騎兵隊、歩兵隊、魔法隊、山岳隊など十の部隊に分け、十名の将軍が束ねる(陸軍大将はこの十名の中から選出される)。

 水軍の事は詳しくないので聞いても分からなかったが、そちらも将軍が十名(こちらも水軍大将はこの十名のうちの一人)。

 それから元帥直属の部隊も創設される。その部隊の他に、国王親衛隊もある。国王親衛隊も選び直すらしい。まあ俺が壊滅させたので、ちょうど良かったか。


 ノヴァーク、テイルスト、クィーズスの三国に併呑ついて。

 クィーズス、ノヴァーク、テイルストの順で併呑する。国の規模やサヌストとの友好度などからこの順になったそうだ。

 併呑の方法についてだが、書物のやり取りで併呑出来れば良し。出来なければ、俺が使徒として、教皇として出向く。それでも拒否されれば、宣戦布告をして降伏勧告をする。それでも拒否するのであれば、王の首に刃を突きつける。

 まあ俺が出向いた時点で併呑されるであろう。いや、ヴォクラー神のお告げには逆らわぬだろう。


 政治改革について。

 今までは国王を中心に執り行っていた。それだと、国が広くなれば、国王の負担は増える。それに暗愚な王が即位しても、王を止める者はおらぬ状態になる。強いて挙げるなら宰相が考え直すように進言出来るかもしれぬ。だが、それで止まるようであれば、暗愚とは言われぬ。

 議会の創設だ。国王と議会の権力を同等のものにすれば、少なくとも妙な政策は止められる。つまり国王と議会はそれぞれに対する拒否権を有する事となる。

 人数などは未定だそうだが、併呑した国からも議員を選べば良いとの事だ。


 奴隷制の廃止について。

 これもヴォクラー神のお告げだ。

 まずは新たな奴隷を買い取る事を禁じる。

 それから既存の奴隷は国が買い取り、解放するそうだ。奴隷の主人にとって奴隷は財産なので、タダで解放せよ、と命じても応じぬだろうとの事だ。

 奴隷がサヌストに入国した場合、国が保護をする。主人がいても奴隷の代金は支払われぬ。

 また、解放奴隷の働き口として開墾を行うそうだ。サヌスト国内にはまだまだ開墾の余地があるそうなので、そこに送る。もちろん希望した者のみだが。


「どうだろうか?」


「まだまだ詳細は決まってないのでしょうが、概ね賛成です」


「それは良かった。ああ、ジル卿は私に将として仕えてくれると言ったな?」


「ええ、言いました」

 

「なら陸軍大将はジル卿に任せたい」


「よろしいので?」


「うむ。ジェロームには元帥を頼んだし、ジュストには国王親衛隊部隊長を頼んだ。他にも私が知っている者には声をかけておいた」


 やはりジェローム卿が元帥か。まあ生き残っている将軍はジェローム卿だけなので、必然的にそうなるだろう。


「ああ、それとな、ジル卿。父上が用意していた街なんだが、住民を集めていなかったみたいだ。これから募集しようと思うのだが、街の名はどうする?」


「街の名…ですか」


 街の名か。サヌストでは新たな地名は英雄の名を残すと言っていたな。英雄…か。

 いるではないか!


「アンセルム卿の名を使わせて頂きたいのですが」


「アンセルムか。よし、なら聖都アンセルムだな。決まった決まった。では住民を募集しておく」


「はっ」


「じゃあ私はもう帰るが、ジル卿は来なくていい。左腕が治るまで一ヶ月と聞いた。余裕を見て六月中は休んでくれ」


「よろしいので?」

 

「うむ。ではまた七月に会おう」


 陛下はそう言うと帰って行った。アシルが先に伝えていたのか?

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