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神に仕える黄金天使  作者: こん
第1章 玉座強奪・諸邦巡遊篇
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第143話

 俺は第二のシュベンツェインが生み出されぬうちに、ルチアのもとへ向かった。魔法使いは捕らえる、と宣言してしまっているので殺してはならぬ。

 ルチアの目の前に着地し、人間の姿になった。すると、ルチアがへたり込んでしまった。


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。調子に乗りました。ほんっとうにごめんなさい。何でもするんで命だけは助けてください。殺さないでください。お願いします」


「いや、殺さぬぞ」


「ほんとに?!ありがと!名前はなんて言うの?命の恩人の名前だから、絶対に覚えておくから。ね?お願い。教えて?」


 うるさいな。少し脅せば黙るか。


「殺さぬとは言ったがな…静かにせぬのであれば、腕くらいなら切り落とすぞ。俺の腕を見てみよ。それなりに痛いぞ」


「あ、ちょ、ごめんなさい。静かにするんで切らないでください。いや、ちょ、ほんとにごめんなさい。まだ死にたくないんです」


「…」


「あ、黙ります」


 ルチアは俺が睨むと黙った。そしてルチアは両手を後ろに回した。攻撃かと思って警戒したが、拘束しろ、ということらしい。

 俺は土魔法で手錠を作り、拘束した。


「それはそうと、屍どもを止めよ」


 今もヨドークが屍の足止めをしているが、なるべく早く片付けてアキ達の加勢に行かねば、危ないかもしれぬ。


「喋ってもいいんですか?」


「いや、屍を早く止めろ」


「ムリです。もうルチアの言う事なんか聞かなくなっちゃってるんで」


「何?」


「ロベルトに触られると、支配権を奪われるんですよ。あ、あなたも触っちゃダメですよ」


「そうか」


 俺は異空間から縄を取り出してルチアの手錠に繋ぎ、ルチアを連れてロベルトの所に向かった。

 ロベルトは鳥の下敷きになっており、気を失っているようだ。


「おい、起きろ。この者がどうなっても良いのか」


「え、ちょ、殺さないんじゃないんですか?」


「ロベルトが起きぬのであれば、おぬしらは情死したと報告するだけだ」


「ロベルト!起きろ!ルチアはまだ死にたくない!」


 ルチアがロベルトを蹴り始めた。だが、所詮は後衛の女の力だ。止める必要も無かろう。


「…やめろ、馬鹿」


「あ、起きた」


「ロベルトとやら、降伏せよ。そしてヌーヴェルを解放し、屍を土に還せ」


 ロベルトはルチアが俺に拘束されているのを見て、負けを悟ったようだ。だが、降伏は認めぬのか、何やら考え始めた。動かぬところを見ると、怪我でもして動けぬのかもしれぬな。


「…アルド!コイツを殺せ!左腕を落とした!後はお前が首を斬れ!」


「アルドもロベルトに支配されてるから、気をつけて」


 ルチアが妙に協力的だ。ロベルトやアルドに無理矢理戦わされていたのかもしれぬな。


「主殿!そっちに行ったぞ!」


「任せろ!」


 血だらけのアキがこちらに手を振っていた。おそらく半分は返り血だろうが、もう半分はアキ自身の血であろう。

 それはそうと、アルドがこちらに向かって来ている。だが、俺の右手はルチアに繋がる縄で塞がっており、使えぬ。


「ヨドーク、半分で良いぞ」


「きゅ?」


「アキ!そちらに屍が向かう!頼んだぞ!」


「任せろ!」


 俺は破裂魔法の砲台を解除し、魔法を使う事にした。ヨドークとアキが五割ずつ受け持てば、負けぬだろう。

 土魔法と水魔法を使い、アルドの近くの地面を全て泥濘にした。そしてアルドが泥濘に足を踏み込んだ瞬間、固めた。

 アルドは勢いよく走っていた為、顔面から地面に突っ込んだ。地面は硬くしてあるので、歯が折れてしまっているようだ。


「ロベルト、アルドを止めろ。さもなくば、全身を石に変える」


「アルド!自爆しろ!」


 アルドは頷き、魔力を暴走させ始めた。

 俺は何とか止めようと思ったが、手は塞がり、魔眼も使い物にならぬのでどうしようもない。

 出来るとすれば、アルドの体内で爆発させる事か。俺達が巻き込まれるよりはマシか。


「アルド、すまぬな」


「え?」


 アルドは驚いたような表情をした。その直後、アルドの目玉が飛び出し、臓物が飛び散り、血を吹き出して死んだ。

 最期の瞬間、自爆が失敗する事に気付いたのだろうか。もしかすると、ロベルトの支配から逃れたのかもしれぬな。


「第十七号!周りの屍どもを吸収し、俺を助けろ!」


「おい、次は何だ?」


 俺は当然のようにルチアに聞いたが、ルチアは命が惜しいらしいので、素直に答えるだろう。


「言っても怒らないって約束してください」


「早く言え」


「ちっちゃい女の子が死体を吸収して、強くなっちゃう魔法。ヘザーさんが仕込んだ魔法だから、結構えげつないですよ」


「おい、ヘザーさんとは誰だ?」


「ルチア達のボス。今はリヒャルドの野郎と一緒にいるんじゃない?」


「何?」


 まずい。ヘザーさんとかいう魔法使いがサヌスト軍と戦ってしまっているのか。


「あ、ヘザーさんの魔法は強いけど時間かかるから、今なら動けるんじゃない?」


「そうか。ルチア、おぬしはそこでロベルトを見張っていろ」


「ルチアとロベルトは仲間なんだけど」


「そうであったな。仕方あるまい」


 もう一人魔法使いがいるのであればなるべく魔力を使いたくなかったが、この二人に逃げられては意味が無い。

 なので、土魔法で地面に穴を開けて、首から下を埋めてしまった。


「ヨドーク、こやつらを見張っていろ」


「きゅ!」


 俺はアキ達が戦っていた方へ向けて駆け出した。


「アキ!アシルはどこだ?」


「あっちだ!そんな事より屍が消え始めたぞ!何かあるのか?」


「小さい女の子の屍に注意せよ」


 アキには最低限の指示を出して、アキが指さした方に駆け出した。そこにはアシルとロドリグが横たわっていた。

 俺はすぐに二人に回復魔法をかけた。やはり回復魔法は便利だな。


「兄上」


「アシル、説明している暇は無いが、少し説明する。黙って聞け。敵の魔法使いは捕らえた。ヨドークが見ている。本陣攻めに魔法使いが参加しているかもしれぬので、俺はそちらへ行く。それと念話は使えぬから、オディロンとロドリグは、後方支援に専念させよ」


「俺は何をすれば?」


「魔法使いの監視とアキの援護を頼む。あ、それと黒衣の男には触れるな」


「分かった。それより腕と目は大丈夫なのか?」


「今は大丈夫だ」

 

「俺の情報収集不足だ。すまん」


「後でゆっくり聞く。こちらは任せたぞ」


「ああ、任せてくれ」


「ではな」


 俺はアシルの肩を叩いてから本陣に転移した。


「ぐっ…」


 マスクをするのを忘れていた。既に臭いの壺を使っているらしい。

 俺は慌ててマスクをした。だいぶマシになったが、まだ少し臭うな。まあ良いか。

 俺は近くの適当なサヌスト兵に話しかけた。


「陛下はどこに?」


「使徒様!お怪我をなさっているではありませんか!」


「大丈夫だ。陛下はどこにいる?」


「確か騎兵隊を率いてコンツェンの王弟を捕らえに向かわれたそうですが…」


「何っ?!本当か?」


「は、はい」


「分かった。礼を言う」


 まずいな。魔法使いはリヒャルドと一緒にいると言っていた。

 俺はすぐに悪魔の姿になって飛び上がった。空から探した方が早かろう。


 ───ジル様!聞こえますか?ジル様!───


 ヴァトーか。どうした?


 ───ご無事でしたか───


 ああ。何かあったのか?


 ───敵に魔法使いの女が一人確認できたそうです。現在はエルフの魔法兵で足止めをしているそうです。どうかご指示を───


 分かった。すぐに行く。


 俺はヴァトーから魔法使いの位置を聞いてすぐに向かった。

 近づいてみると、紫色の球が結界に閉じ込められているのが見えた。ルチアの紫色の球と全く同じ色だ。

 辺りを見回すと、陛下の姿が確認できた。


「上空から失礼します。陛下、ご無事ですか?」


「ジル卿か。私は大丈夫だ」


 陛下はそう言いながら顔を上げて俺の方を見た。


「!ジル卿こそ無事ではないではないか!すぐに手当をしなければ!」


「私は大丈夫です。それよりも魔法使いがこちらにもいたとは…申し訳ありません」


「私は大丈夫だ。ジュストの指示でジル卿の魔法兵が二十人、私の護衛についてくれたからな」


「ジュスト殿が…」


「ジル卿、無理をしない範囲で彼らの援護を頼めないか?」


「私にお任せ下さい。では失礼します」


 俺は陛下のもとを離れ、魔法兵の代表らしき男に近づいた。


「無事か?」


「ええ。今は何とか耐えていますが、そろそろまずいかもしれません」


「そうか。おぬしら魔法兵は防御に専念せよ。一般兵に魔法を当てさせるな。俺は魔法使いをどうにかする」


「ご武運を」


「ああ」


 俺は魔力の痕跡を辿り、魔法使いを探した。天眼を使っているのですぐに見つかった。

 そちらを見ると、白象がおり、その背には屋根付きの輿が乗っていた。輿にはクッションが多数置いてあり、一人の男が寛いでいる。コンツェンの王弟、リヒャルドであろう。

 そしてその屋根に一人の女が立っている。魔法使いの女だ。


「リヒャルド!その命、頂戴する!」


 俺はそう叫びながら、真っ直ぐ白象に向かった。当然、魔法使いの女が俺に攻撃をしてくる。そうなると、エルフ魔法兵の負担が減る。

 俺はもちろん結界を張って防いだ。

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