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神に仕える黄金天使  作者: こん
第1章 玉座強奪・諸邦巡遊篇

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第136話

 医務室に駆け込むと、陛下が眠っていた。ジェローム卿とジュスト殿、デトレフ、ヴァーノンがベッドの側で座っている。

 この四人が落ち着いているということは、陛下は無事か。


「二十万の援軍が壊滅したかもしれぬ」


「何っ?」


 ジュスト殿が驚いて立ち上がった。他の三人も目を見開いて驚いている。


「いや、アルフレッドの部下がそう言っただけだ。ソイツはこれを俺に渡した」


 俺はスヴェインに貰った手紙を差し出した。


「同じものがこちらにも届いております。敵は現在二万。戦象が五百頭。それに対して、我が軍は五百に満たないと」


 デトレフがそう教えてくれた。やはり戦象は五百頭であったか。

 まあそれもそうか。二千頭など現実的に考えて無理だろう。いや、五百頭でも多い。おそらくだが、コンツェン軍が所有する戦象のほとんどが、参戦しているだろう。それだけ本気ということか。


「ああ。魔法使い三人が主力だそうだ。この三人は俺とアシルとアキが受け持とう。他はそちらに任せたい」


「いや、戦象と正面から戦えるような兵は、全て南方国境に集めている。それが全滅したとなると、いくら数を揃えても…」


 ジェローム卿の言う通りだ。

 騎馬は戦象の発する匂いを嫌うらしい。訓練されておらぬ馬には乗れぬという訳だ。ならば、遠くから矢を射掛ければ良いかと言えば、そうでも無い。象の皮膚は厚いので、効かぬ。

 戦象は突撃を開始したら急な方向転換や急停止はほぼ無理なので、落とし穴などの罠に嵌めるなどの策があるが、そのようなものを作る時間はない。


「とりあえず援軍を送らねばならぬ。ナヴァル城に兵と食糧を送ろう」


「そうだな。ナヴァル城なら大丈夫だと思うが、修繕もしておいた方が良いだろう。ジル卿の麾下の工兵は優秀だと聞いているが…」


「ああ。ラポーニヤ城を建てたのも彼らだ」


「たった数日でな。驚いたものだ」


「俺に案がある」


 しばらく黙っていたジュスト殿が口を開いた。


「象は火と悪臭と大音響に弱いと聞いた。ジル卿、魔法で大爆発を起こし続けることは出来るか?」


「威力が弱くても良いなら、部下達に任せられる」


「よし、それで行こう。臭い物はこちらで用意する」


「ではこちらは魔法兵を編成しておく」


「決まりですな。歩兵や騎兵は我らに任せていただきたい」


 それから更に作戦を練った。

 まず、ジュスト殿が指揮する対戦象部隊が攻撃を開始する。まあ攻撃とは言っても、臭いと音と火だ。これで戦象が暴走する。すると周りの兵を踏み潰してしまう恐れがある為、象使いが象を殺す。殺さなくても、周りの歩兵などを削れるので良い。

 その間に、サヌスト軍と聖堂騎士団が他の歩兵や騎兵と戦う。こちらは合計五万騎が出陣するので、まず負けぬだろう。

 そして、俺とアキとアシルで魔法使いを探し出し、倒す。


 幸いと言ってはなんだが、ナヴァル城の近くの街も訪ねているので、ナヴァル城へはすぐだ。


 対戦象部隊には、俺の魔法兵とその護衛として魔戦士隊を貸し出す。


 ちなみにこの戦が終われば、陛下が集めた兵十五万を正規軍として認めるらしい。まあ二十万以上減っているので、その方が良かろう。

 また、聖堂騎士団も新たな聖騎士を募集するらしい。こちらも大損害を受けているので当たり前だ。


 ヴァーノンが作戦を纏める為に退室したのをきっかけとして、俺達は解散した。充分に休むように、との事だ。


 俺はエヴラールを回収し、ラポーニヤ城に戻った。


「あ、ジル!おかえり」


「ただいま、レリア」


 俺の部屋に転移すると、レリアは起きていた。それもそうか。いつもなら既に朝ご飯を食べ終わっている。


「朝までお疲れ様」


「ああ。朝ご飯は食べたか?」

 

「まだだよ。一緒に食べようと思って待ってたの」


「それはすまぬな。すぐに食べよう。サラ、エヴラールを頼む。それと、今日の朝ご飯はいつもの夕食の二倍で頼む」


「に、二倍、ですか?」


「ああ。腹が減った」

 

「分かりました」


 俺はサラにエヴラールを任せて、ソファに倒れ込んだ。ベッドに倒れ込むと、寝てしまうような気がする。


「そんなに疲れたの?」


「まあサヌストを一周したからな」


「え?!一晩で?」


「ああ。その後は…アルフレッドを追い詰めて…コンツェン戦の作戦を立てた」


 改めて言ってみると、働き過ぎだ。王宮襲撃の対処をして、サヌスト国内を一周する。サヌスト国内一周は俺以外には出来ぬだろうから、と思ってやったが、他のやり方があったかもしれぬな。


「よく分かんないけど、普通の人の一生分くらい働いたんじゃない?」


「いや、精々十年分だろう」


「それでも凄いよ。今日は休み?」

 

 どうであろうか。陛下が出陣すると言えばすぐにでも行くが、陛下が待機と言えば待機だ。


「陛下次第だな。コンツェン軍をどうにかせねば」


「大変だね…」

 

「全くだ。コンツェン戦が終われば二ヶ月ほど休みたいくらいだ」


「そうした方がいいよ、絶対」


 冗談のつもりで言ったが、レリアが賛同してくれるなら休むしかあるまい。どうにかして休もう。


「あ、あたしアキ達呼んでくるね」


「いや、別に良いが…」


「じゃあ行ってくるね」


 レリアが出て行ってしまった。アキなら念話で呼べば良いのだが、まあレリアが行きたいなら別に良いか。

 俺はレリアが出ていってからしばらくぼんやりしていた。


「主殿、戻ったのか!」


 扉が開け放たれると、アキが入ってきた。


「ああ。何も無かったか?」


「ワタシがいたからな。ユキ達も無事だ」


「そうか。レリアはどうした?」


「知らんな。ワタシを呼びに来た後にどっか行ったぞ。カイ達の所にでも行ったのではないか?」


「そうか」


 アキはソファの方までどかどか歩いてくると、ソファに飛び込んだ。揺れるのでやめて欲しいが、もう飛び込んだ後だ。次、飛び込まれそうになったら止めるか。


「それでユキはどうした?一緒の部屋であろう?」


「まだ寝ているぞ。子供たちは主殿を待つ姫と一緒に夜更かししていたらしいぞ。四人ともすぐに寝たみたいだが」


「そうか。連絡しておけば良かったな」


「主殿。ワタシに頼み事があるのではないか?」


 アキに頼み事?何かあっただろうか。特に無いな。


「無いぞ」


「何?コンツェンの魔法使いの一人をワタシに倒させようとしているのではなかったのか?」


「それは頼みでは無い。命令だ」


「なっ…ワタシはその作戦の要と聞いたぞ」


「ああ。要とも言えるだろうな」


 敵の部隊は二万もいるそうだが、それは魔法使い三人の護衛と聞いている。戦象も主力となりうるだろうが、戦象は防壁代わりに使っているのだろう。


「ジル〜、ご飯出来たよ〜」


 レリア達が朝ご飯を持ってきてくれたようだ。俺はすぐに立ち上がって食卓に座った。


「はい、どうぞ」


 レリアが俺の前にオムライスを置いてくれた。


「これはあたしが作ったの」


「食べても良いのか?」


「うん、食べて食べて」


 俺はレリアが作ってくれたオムライスを食べ始めた。

 やはりレリアのオムライスは美味いな。

 確か、初めてレリアの料理を食べた時もオムライスだったはずだ。あの時は外で材料も限られていたが美味かった。だが、今回は材料が揃っていたのか、更に美味い。


「どう?」


「美味しいぞ。頬だけではなく、全身が溶けてしまいそうだ」


「頬も溶けないよ。落ちるんだよ」


「ならば、全身が落ちてしまいそうだ」


「よかった。前のとどっちが美味しい?」


「どちらも美味しいが、今日の方が美味しいな。だが、条件が違うでは無いか。野営地であれ程美味しい物が食べられる事など、ほとんど無いぞ」


「ほんと?」


「ああ。レリアに嘘はつかぬ」


 レリアと話しながら食べていると、最後の一口になってしまった。

 最後の一口は特に味わって食べた。


「じゃあ、他のもちゃんと食べてね」


「ああ」


 俺がオムライスを食べ終わると、レリアも朝ご飯を食べ始めた。

 俺はサラが並べてくれた朝ご飯を食べ始めた。キトリーは凄いな。いきなり夕食の二倍を頼まれてもすぐに作ってくれた。


「ねぇねぇ、あたしの料理とどっちが美味しい?」


「俺はレリアの料理の方が好きだ。味も然る事乍ら、多大な愛を感じる」


「ほんと?じゃあ、これからは一食につき一品ずつあたしが作るね」


「良いのか?」


「うん。あたしもジルに嘘はつかないよ」


 一食につき一品と言うことは、一日三品か。楽しみだな。一食につき一品ならば、食事の回数を増やせば増えるのか?いや、それはやめておこう。レリアの負担が増えるのは望まぬ。


 俺は昼食を楽しみにしながら、朝ご飯を食べ終えた。


「じゃあ、ジルはこれ飲んで」


「これは何だ?」


 朝食後、レリアに謎の液体を渡された。いや、レリアがくれた物なので怪しくはないが、何かは分からぬ。


「疲れが取れる飲み物なんだけど、味は苦いよ」


「では貰おう」


「一気に飲み干してね」


 俺はレリアから受け取った、疲れが取れる飲み物を一気に飲んだ。

 少し頭がクラクラしてきたな。こうやって疲れは取れるのか。


「どう?」


「効きそうだ」


 少し意識が朦朧としてきた。効いているが、効きすぎなのか?


「ごめんね」


 意識が朦朧とする中、レリアにそう言われた。

 そして俺は気を失った。

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