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神に仕える黄金天使  作者: こん
第1章 玉座強奪・諸邦巡遊篇
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第133話

 俺は周りに誰もいないことを確認し、例の姿に変身した。


「アキ、乗れ」


 アキは俺の背中に乗ると、地図をなぞり始めた。おそらく道を確認しているのだろう。


「主殿、森も走れるな?」


「走れぬことも無い。おぬしの案内次第だ」


「それなら安心しろ。ワタシに任せておけば迷わん。薙刀の穂を追え」


「わかった。頼んだぞ」


「任せておけ」


 アキはそう言うと薙刀を取り出し、森の方を指した。

 アキは初めて乗せるので、段々と速くしていく。まあアキは普段からドラゴンに乗って高所から奇襲をするので、速いのには慣れているだろう。


「あっはははは!主殿、これは楽しいぞ!今度から騎手はワタシがやってやろう!」


 最高速度で走っているが、アキは片手で俺の首の後ろを掴んでいるだけだ。エヴラールは俺を抱きしめるように掴まっていたので、アキは凄い。

 それにしても、楽しそうだな。俺も乗ってみたくなってきたが、自分には乗れぬ。ファビオには頑張って悪魔になってもらうしかないな。いや、わざわざ子供に期待したくても、他の人狼を鍛えるのも良いかもしれぬ。


「主殿、見ろ!街だ!」


 アキが指した方を見ると、街があった。

 森の中にある街で、レイノルズと言うらしい。この近くの山に鉱山があるらしく、街ができたそうだ。レイノルズと言う貴族が見つけ、色々と整備したらしい。その際、温泉が見つかり、観光地としても栄えているらしい。

 俺はそのレイノルズが整備した道を通ってくるはずだったのだが、近道をする為、森の中を通ったのだ。

 俺は止まってからアキを降ろして、元の姿に戻った。そして穴を開けた。

 俺はアキの方を見て、出発する旨を目線で伝えたが、アキは街をじっと見ている。


「行くぞ」


「主殿、寄るぞ」


「なぜだ?」


「腹が減った」


「まだ食べていなかったのか」


「いや、リンゴを一つ盗って食べた」


 盗んで食べたのか。まあリンゴ一つくらいは良いのか?問題になっていたらリンゴを二つ渡そう。


「そうか。なるべく急いで食べろ」


「いや、持ち帰りでいい」


「ならば俺はここで待っている。買ってこい」


「主殿は?」


「俺は食べた」


「いらないのか?」


「ああ」


「じゃあ、行ってくる」


 アキはそう言って街に向けて駆け出した。金を持っていないはずなので、銀貨が入った皮袋をアキに向けて投げると、アキはこちらを見ずに受け取った。

 ちなみにこの銀貨は、ヴァーノンが何か足りないものがあったら現地調達できるように、とくれた。何枚入っているかは知らぬが、まあアキが夜ご飯を買っても余るくらいは入っているだろう。


 しばらくすると、アキが戻ってきた。色々と抱えている。

 思っていたよりも長かったな。もしかすると、隣街くらいなら着いていたかもしれぬ。まあ途中でアキが疲れて進むのが遅くなるよりは良い。それに夜中にやっている店は意外と少ない。


「主殿、余った」


「そうか。すぐに行けるな?」


「もちろんだ」


 俺は例の姿に変身した。アキは慎重に俺の背に乗った。


「行くぞ。どちらだ?」


「あっちだ」


 俺はアキの指した方へ駆け出した。慣らす必要はもう無いので、最初から全力だ。


「あっ」


 しばらく走ったところで、アキがそう言った。その瞬間、背中が熱くなった。もしかするとアキがスープか何かをこぼしたのかもしれぬな。

 なぜこのような時にスープを買ったのかは、また後で問い詰めよう。今は走らねばならぬ。


「あっ」


 今度は何かが刺さった。肉に刺さっていた棒か?まあ走りながら食べる事を考えると、こういった物の方が良いか。


「あ〜っ!」


 今度は熱い固形物が俺の背に落ちた。可哀想に。ステーキでも落としたのだろう。

 だが、止まってやる訳にはいかぬ。


「…見えてきたぞ」


 アキがそう言った。余程ステーキを楽しみにしていたのか、落ち込んでいる。


「アキ、落ち込むな。これが終われば王都の店に皆で行こう」


 俺は空間に穴を開けながら、アキにそう言った。店はジュスト殿に聞いて、レリアやファビオ達も連れて行こう。


「いや、宮廷料理人を借りろ」


「それも良いな。陛下に頼んでみよう」


「そうしろそうしろ」


「ああ。だが、終わってからだぞ」


「分かっている」


 その後もアキと共に街を回り続けた。

 最後の街と繋いだとアシルに連絡したところ、明け方まで休めと言われた。

 この辺りは王都から見ると南方面である。つまり、コンツェン王国のある方角だ。せっかくなので、アキと共に見に行く事にした。急ぐ必要は無いので、ヌーヴェルに乗っていく。


「主殿、行くぞ」


「ああ」


 一角獣(ユニコーン)に乗ったアキが急かしている。どうやらこのまま戦に巻き込まれて、戦いたいようだ。しばらく戦は無いと伝えた際、ガッカリしていた。

 ちなみにこの一角獣(ユニコーン)は補欠で、普段はヌーヴェルに鍛えられている。


「戦、戦、主殿が蹴散らす!コンツェンを蹴散らす!主殿がコンツェンを蹴散らす!戦、戦、主殿がコンツェンを滅ぼす!イェイ!」


 アキは駆けながら歌っている。酒は与えておらぬはずだが、酔っているようだ。そんな事より、いつの間に歌など作ったのであろうか。


「アキ、ご機嫌だな」


「分かるか?やっぱりワタシは主殿と一緒に戦いたいのだ」


「そうか」


「さあ、主殿も一緒に歌え」


「断る。一人で勝手に歌っていろ」


「ならそうする。戦、戦、主殿と戦う!」


 アキがまた歌い出した。


 しばらく進んだ所で、野営地を見つけた。

 サヌスト軍の大部隊が使う幕舎は二階建てにできるので、大抵は二階建てだ。サヌスト独自の特殊な布を使っているらしい。だが、この野営地の幕舎は一階建てだ。つまり、この野営地はコンツェン軍のものだ。

 ここはコンツェン王国との国境からはそれなりに離れている。


「アキ、黙れ」


「いきなり?!」


「コンツェン軍の野営地だ」


「何?!」


 アキは俺のすぐ横に近づいてきた。小声で話せということか。


「聖騎士とか言う奴らを送り込んだのではないのか?それに主殿の城に居候していた奴らも二十万人ほど送り込んだと言ったぞ」


「そう聞いているが…」


「もしかして、全滅か?」


「縁起でもないことを言うな。それに聖騎士はともかく俺の城にいた兵は昨日出発したばかりだ」


「そうだったな」


 だが、カプトヴェル城は既に陥落し、攻め込まれているのかもしれぬ。いや、陛下に報せが届くか。陛下に届けば俺に教えて下さるはずだ。

 単に北から攻めようとしているだけかもしれぬ。国境を守るとは言え、国境全てを守っている訳では無い。主要な公路を守っているだけだ。そしてカプトヴェル城は南から敵が来る事を想定して造られている。ゆえに北からの攻撃に弱い。コンツェン軍もそれは知っているはずだ。


「主殿、もう少し近付くぞ。もしかしたら聖騎士かもしれん」


「確かにそうだな」


 俺達は見つからぬようにこっそりと近づいた。

 やはりコンツェン軍の野営地か。兵士たちが聞いた事もない言語で話している。それに鎧もサヌスト軍のものでも無いし、聖堂騎士団のものでも無い。


「黒だな」


「ああ。コンツェン軍だ」


「どうする?」


「報告して指示を仰ぐ」


「そうだな。早くしろ」


 俺はとりあえずここの位置情報をアシルに送った。


 ───何かあったのか?───


 ああ。コンツェン軍の野営地を見つけた。ここで知らぬ言語を話している。


 ───カプトヴェル城はどうなった?そこから見えないか?───


 見えぬな。


 ───陛下に報告する。兄上、絶対に突っ込むな。今の兄上は魔力も消費しているし、走り続けて疲れているはずだ。それとアキも突っ込ませるな───


 もちろんだ。こちらからは仕掛けぬ。


 ───そうしてくれ───


「アキ、待機だ」


「一人くらい捕まえても大丈夫じゃないか?」


「ダメだ。その一人が叫べば、皆が起きる」


「確かにそうだな。じゃあ帰るぞ」


「いや、待機だ」


「主殿、そろそろ日が昇るが帰らなくていいのか?日の出に王都の西門だろ?」


「確かにそうだ。戻らねば」


「ワタシも連れて行け」


「もちろんだ」


 ヌーヴェル達を異空間に帰し、王宮に転移した。

 近くにいた侍女に話を聞くと、陛下やジェローム卿などアルフレッドに呼ばれた者はそれぞれ準備をしているそうだ。

 ジェローム卿とデトレフは戦える。陛下もそこそこ戦える。だが、ヴァーノンは戦えぬので、守らねばならぬ。俺も休んでおくか。

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