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神に仕える黄金天使  作者: こん
第1章 玉座強奪・諸邦巡遊篇

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第126話

 今回の件は全てデトレフの計画通りに行う事となった。


 エジット陛下と俺、キイチロウを先頭に凱旋する。


 陛下の麾下が千騎、俺の麾下が千騎、東西南北それぞれの将軍と大将軍の麾下が合計千五百騎、ヤマトワ兵が五百騎だ。

 ギュスターヴと将軍四名の遺体も同時に護送される。俺の知らぬところで、ちゃんと保管していたようだ。


 俺と俺の麾下千騎の馬は角がある。全て一角獣(ユニコーン)に進化させているからだ。なので、カモフラージュの為、馬鎧を纏わせる。かなりの重装備となったが、まあそれだけ余裕があると思われるであろうから良い。

 普段はヤマトワ兵もドラゴンに騎乗しているが、今回は馬を貸した。戦闘にならぬのであれば、普通の馬でも問題ない。

 ちなみに正規軍の馬はそのままだ。俺の私兵だから色々と好きなようにできるが、正規軍となればそうはいかぬ。


「陛下、使徒様。準備が整いました」


「うむ」


 ジェローム卿が報告してきた。ジェローム卿は右目の眼帯を薄水色にして、マントの色と揃えていた。昨日までは黒い眼帯だったので、今日の為に用意させたのだろう。

 ちなみに今日の俺は使徒として凱旋するので、使徒様と呼ばれている。その為、鎧の上に法衣を着ている。


「使徒様、参りましょう」


「ええ。デトレフ卿を待たせてはなりませぬからな」


「そうですな」


 よそよそしい会話になってしまうが、仕方あるまい。俺は今は使徒なのだから。


 ジェローム卿を先頭に出発した。ジェローム卿が案内を務めるのだという。俺や陛下でも地図は読めるが、形式上のものらしい。

 ふと、レリアの気配を感じたので振り返ると、城壁上で手を振っていたので、俺も手を振り返した。


 レリア、行ってくる。


 ───行ってらっしゃい、ジル───


 念話でそう言うと、手を振るのを辞めた。

 念話は返事をすることは簡単だ。聞き取れるのであれば、返事はできる。だが、聞き取れるようになるまでが長いらしい。陛下やレリアはすぐにできたが、才能だという。ちなみに話し掛けるのはもっと難しい。


 それからしばらく無言で進んだ。上層部(おれたち)が喋らぬので、誰も喋らぬ。


「おい、何で黙っているのだ?」


 我慢が出来なくなったのであろうアキがそう言った。ちなみに俺、陛下、キイチロウの順で横並びになっているのだが、アキは陛下とキイチロウの間にいる。


「アキ。私語を慎みなさい」


「うるさい!」


「アキ、我々はヤマトワの代表を務めている。我々の言動一つひとつがヤマトワの印象に繋がる。この意味分かるな?」


「ちぇっ」


 キイチロウに怒られてアキが拗ねてしまったが、俺が口出しすることでもあるまい。


「陛下、聖堂騎士団が見えましたぞ」


 ジェローム卿が指した方を見ると、デトレフが馬から降りて待っていた。見た感じではあるが、約百騎の聖騎士がいる。こちらの人数を知らぬので、超えぬように配慮したのだろう。


「デトレフ、待たせたな」


「いえ。早速ですが、民が待っております。行きましょう」


「うむ。そうしよう」


 デトレフは馬に乗ると、すぐに出発した。

 先導する四名の旗手が、陛下の軍旗、俺の軍旗、聖堂騎士団の神旗、ヤマトワのシガマトン領の領旗をそれぞれ掲げている。

 デトレフは、じわじわと俺に近づき、最終的に俺の横に並んだ。


「どうかなされたか?」


 デトレフが何も言わぬので、俺はそう尋ねた。


「いえ。使徒様は教皇として君臨し、我らヴォクラー教徒を導いてくださるとお聞きしたのですが、相違ありませんか?」


「もちろんだ」


 デトレフの印象が大分変わった。いや、少し話しただけなのであまり覚えておらぬが、少なくとも自分から話しかけてくるような人ではあった。


「そうでしたか。昨夜の書簡では、サヌスト王国の将軍として大陸統一にご助力して頂けると伺いましたので。どちらが誤報かと心配しておりましたが、教皇となっていただけるのであれば安心致しました」


「俺は一人の将として、サヌスト王家にお仕えする。無論、教皇も引き受ける」


「なんと…!前代未聞ですぞ。教皇となられたお方が一国の将として戦うなど。使徒様のお考えをお聞かせ願います」


 考えを聞かせろ、などと言うが、前線で戦う方が俺の性に合っているからだ。俺に出来るのであれば、俺がしたい。その為に、ヴォクラー様から剣を賜ったのだ。

 だが、俺の考えだけではそのうち言いくるめられてしまうであろう。ここはヴォクラー様の名を借りよう。


「ヴォクラー神も俺が戦う事を望んでらっしゃる」


「お告げにはそのような事は無かったと聞いておりますが」


「お告げを授かった時に話したのだ。何か望みはないか、と問われたので剣を所望した。理由を問われたので、弱きヴォクラー教徒を守る為、と答えると、剣以外にも力を賜ったのだ」


「なんと…ヴォクラー神とお話したと?それに力とはどういう…?」


「魔法に関する知識と魔法に詳しい部下だ。普通の魔法であれば、鍛錬次第で誰でも使えるが、俺は膨大な量の魔力を賜った。それこそ常人が一生をかけても手に入らぬほどの量だ」


「魔法…ですと…?」


「ああ。まあその事については、いつか話そう。もう着きそうだ」


「そうですな」


 王都が見えてきた。俺が以前吹っ飛ばした城門とその周辺の城壁は直っておらず、甕城のようなものを作っている途中であった。


「あれは…」


「以前は無かったと思いますが…」


「ええ。以前、使徒様が逆賊ギュスターヴに捕らわれ、脱出する際に破壊されたようです。そして、逆賊ギュスターヴはどうせ直すのならば、と全ての城門前に甕城を作るよう指示を出しました」


 教会では、ギュスターヴの事を神に逆らった不届き者として語り継ぐ為、ギュスターヴに『逆賊』の称号を与えたそうだ。もちろん、ギュスターヴとの対立を避ける為にギュスターヴが出陣した後に与えたそうだ。


 それにしても、全ての城門前に甕城を作るとは良い考えだ。甕城があれば、破城槌なども使えぬ。

 ただ、王都の城壁は戦争用と違って見た目が重視されている。なので、戦争用の城の城壁と比べると脆い。破城槌を使えば突破できぬこともないだろう。


「ジル卿が捕らわれた?」


「仕方ないとは言え、陛下の王都に傷をつけてしまい、申し訳ありませぬ」


「いえ、使徒様が無事なら城門くらい壊してくれて構いません」


「ははっ」


 俺達はそう話しながら、甕城の城門が出来るであろう場所を通った。王都の城門とは少している。ずれていなければ甕城の意味が無いのでこれで良いのだが、少しずらし過ぎなような気もする。


 王都の正規の城門を通ると、民が大勢集まっており、非常に盛り上がっている。


「やはり陛下は歓迎されておりますな」


「もちろん私も歓迎されているとは思いますが、大部分の民は使徒様を歓迎しているのです。さあ、手を振り返してやってはどうですか?」


「そうですな」


 俺は集まった民に向けて手を振った。

 聖騎士たちの警備を越えて駆け寄ろうとした者もいたが、すぐに取り押さえられていた。


「くそっ!あいつは偽物じゃなかったのか!俺の店をめちゃくちゃにしやがって!」


 取り押さえられた男がそう言って俺を睨んでいた。

 思い出した。この男はエヴラールとケリングが暴れた酒場の店主だ。朝からやっているという理由だけで現場に選んでしまった。後で詫びに行こう。


「使徒様、あの男が言っているのは本当ですか?」


「ああ。彼には申し訳ない事をしてしまった。デトレフ卿、彼を解放してやって欲しい。それと、これを渡して欲しい」


「承知しました」


 デトレフは手を挙げて部下を呼ぶと、彼を解放するように言い、俺は袋を渡した。ちなみにこの聖騎士に渡したのは、金貨が入った皮袋である。何枚入っているかは覚えておらぬが、まあ迷惑料くらいにはなるであろう。


「これは…」


 受け取った聖騎士が目を見開いて俺を見た。おそらく手応えで金貨が入っている事を見抜いたのだろう。


「使徒様、銀貨か銅貨かはわかりませんが、どちらにしてもかなりの大金です。大衆の前で渡せば、彼に危険が及ぶのでは?」


「そうか。ではどこかに招いてやってくれぬか?」


「ははっ」


 聖騎士はそう言うと、彼を連れてどこかへ行った。デトレフの屋敷がある方角だが、あちらには教会もあるので、教会に招いたのだろう。


「使徒様、ちなみに銀貨か銅貨どちらですか?」


「金貨です。銀貨と銅貨は手持ちにありませんので」


「なんと…使徒様、私に一度王都を案内させてください」


「?別に良いぞ」


 デトレフはどこに連れて行ってくれるのであろうか。

 俺とデトレフが話している間も、陛下は民に手を振り続けていた。やはり民は陛下を待っていだのだろう。陛下が振り向いた方は歓声が上がる。

 一方、キイチロウやアキは緊張しているのか、全く喋らぬし、全く動かぬ。

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