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神に仕える黄金天使  作者: こん
第1章 玉座強奪・諸邦巡遊篇
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第11話

 俺らが陣に帰ってもアシル達はいなかった。勝ったな、これは。

 一応カールに聞いてみた。


「おい、カールはどこだ?」


「はい、ここにおります、ご主人様」


「アシル達は?」


「補佐様はまだ帰ってきておりません」


「そうか。そうだ、これが今回の獲物だ。二十四頭いる」


「なんと!確実に上達していますな」


「まあ、今回は運が良かったが上達もしてるだろう」


 そう言いながら俺は獲物を置いていく。山になるくらい狩った。

 カール達は獲物を一人一頭回収していく。カミーユもそれに続こうとしたので俺がとめる。


「おい、カミーユはしなくていいだろう?」


「いえ、私もご主人様の従者として…」


「従者は主を一人にし、孤独を味わわせるのか?」


「いえ、ですがご主人様にはオディロン様がいらっしゃるではありませんか」


「俺は今、体を動かしたい。剣と剣で戦いたいな。オディロンが相手では剣と牙になってしまうな」


 そう言いながら俺はカミーユをチラチラと見る。


「左様でございますか。では、お相手致しましょう」


「最初からそう言えばいいのに」


「こちらにもこちらの事情が…」


「そんなものは知らん」


 カールには俺から伝えてやろう。俺だって自分より上の立場の人に自分だけサボるなんて伝えるのは嫌だからな。それくらいの気遣いはできる。


「カール!カミーユを借りるぞ!」


「承知しました」


「さあ、カミーユ。剣を抜け!」


「今日こそご主人様を超えてみせます」


「オディロン、審判を頼む」


 ───承知した。我が吠えたらそれが合図だ。始まりも終わりも───


「オディロンが吠えたら始まり、もう一度吠えたら終わりだ」


「承知しました」


 いつオディロンが吠えるか分からぬからそれまで気が抜けない。ちなみに剣も抜いてない。先程『剣を抜け』と言ったがカミーユも抜いていない。まあ、あれば形式的なものだ。


 オディロンが吠えた。俺は剣を抜いた。カミーユも抜いた。

 カミーユはいつも後ろにさがって相手を引き寄せて戦うスタイルなので俺は一歩踏み込む。だが、いつもとは違いカミーユも踏み込んできた。剣と剣がぶつかった。甲高い金属音が鳴り響く。俺が一歩引きさがるとカミーユは踏み込んできた。いつものカミーユと違う戦い方だ。これはこれで面白い。

 俺とカミーユが打ち合うこと四十合以上。オディロンが吠えた。カミーユの手には剣がない。すなわち俺の勝ちだ。


「いつもと戦略を変えてみたのですがそれでもご主人様には及びませんね。さすがです」


「いや、今回は危なかった。少し休憩しよう」


「では、私はあちらを手伝いに…」


「ダメだ。今回の感想を聞かせろ」


「承知しました」


 俺はカミーユから感想を聞き、俺はカミーユに感想を伝えた。改善点をカミーユに教えたり、逆にカミーユから教えてもらったりしているとカールに話し掛けられた。


「ご主人様、食事が出来ましたがどう致しましょうか?」


「んー、ちょっと待って」


 オディロン、アシル達にまだか聞いてくれ。


 ───承知した。暫し待たれよ───


 俺はオディロンにアシル達へ連絡してもらった。俺はまだ遠距離の念話は出来ないのだ。アシルも送ることは出来ないらしい。俺もアシルもまだまだだ。


 ───アシル殿にもロドリグにも繋がらない。何かあったのかもしれない。どうする?───


 アシル達の場所は分かるか?


 ───天力を辿ればなんとか分かる───


 アシル達の所へ行こう。


 ───承知───


「アシルを迎えに行く。カミーユ、何度もすまんが一緒に行くぞ」


「は!」


 カミーユがヌーヴェルを連れて来て俺が乗る。カミーユも馬に乗った事を確認するとオディロンは走り出した。

 しばらく行った所でオディロンが俺に伝える。


 ───この辺りで天力が途切れている。ここからは目視で探すしかない。本格的に何かあったのかもしれん───


「ここからは目視で探す」


 俺がオディロンの言ったことをカミーユに伝える。


 俺達が何か痕跡がないか探しているとカミーユが叫んだ。


「ご主人様!オディロン様!これを見てください!」


 カミーユの方へ行くと人の胴体ほどある石があった。それには何か紫色の文字が刻まれている。


「オディロン、これはなんて書いてある?」


 ───これは…これをあと三つ探さなければアシル殿達が危ないかもしれん───


「分かった。カミーユ、これをあと三つ探せ」


「は!」


 すっかり日が暮れ、夜になった頃三つ目を見つけた。オディロンが順番に睨みつける。オディロンの目は天眼という特別な目らしい。

 最後の石を睨みつけるとガラスが割れるような音がする。すると血だらけのアシル達が倒れていた。


「おい、アシル!ロドリグ!フィデール!馬!」


 アシルの馬の名など知らないので馬と呼んだ。

 俺らはアシル達に近付く。オディロンがそれぞれ順番に近付いて生存確認をする。


 ───大丈夫だ。気を失っているだけらしい。この血も獣のものだ───


「良かった。そういえばさっきの石ってなんだ?」


 ───あれは結界魔石と呼ばれるものだ。百以上の魔石を魔術でくっつけ一つの魔石にする。それを四つ集めで並べると結界ができる。今回のは偽装結界と呼ばれる結界の中でも上位のものだ。詳しくは後で教えよう───


 魔石とはヒルデルスカーンに暮らす生き物なら全てが持っている。もちろん人間も例外ではない。人間の場合、眼球と眼球の間にある。だから眉間を打ち抜かれると即死だ。ちなみに俺らにはないらしい。


 ───これだけ上位の結界魔石を用意しておいてこれだけなのか?───


 アシル達が想定以上に強かったからこれくらいしかできなかったんじゃないか?


 ───気を失わせる方が殺すよりも難しい。まさか…───


 どうした?


 ───陣が襲われているかもしれん。我は先に陣に戻る。時が経てば彼らは目覚める。ジル様はアシル殿達が目覚めしだい帰って構わない───


 お、おう。よく分からないがアシル達が目覚めたら帰る。


 ───頼んだ───


 そう言い残しオディロンは去っていった。

 オディロンが去っていってしばらくした時、アシルが乗っていた馬が目覚めたようだ。フィデールが乗っていた馬も目覚めた。フィデールも目覚めた。続々と起きてくるな。その次の順番としてはロドリグの次にアシルだった。


「おい、アシル。何があった?」


「え?ジル殿?なんであんたがいるんだ?」


「遅いから迎えに来た。それより俺の質問に答えろ」


「ん?ああ。ロドリグに獲物を探してもらっているとヴェンダース王国の兵士がいたから様子を見ていたんだが見つかってしまってそれからの記憶が無い」


 ヴェンダース王国とはサヌスト王国の北側に位置する王国だ。確かリシャール教を信仰している国だったな。


「そうか。それはまた明日、エジット殿下に言っておけ。今回の勝負は俺の勝ちだ。腹が減ったからさっさと帰るぞ」


「こっちは狩りどころじゃなかったんだがな」


 アシルは文句を言いながらついてくる。


 俺達が陣に帰る途中、戦闘音が聞こえたのでそちらを振り向くとオディロンと残りのカール班が戦っていた。戦えないと言えど弓くらいは扱えるのだ。


「加勢するぞ!」


 俺達はもちろんオディロン側に加勢する。


「ヴェンダース兵だ!」


「こいつらが?」


「ああ。顔は覚えていないが装備はこれと同じだった」


「一人を残してあとは斬るぞ」


 事情を聞くために一人を残すことを指示する。幸い数が少なかったので俺達の圧勝だ。


 ───帰る道すがらこいつらを見つけたのでカール達を連れて来た。念話は通じなかったが我のただならぬ雰囲気を感じとりついてきてくれた───


 そうか。感謝する。


 ───また我の真似か───


 オディロンがフッと笑ったような気がしたので俺はオディロンに笑い返した。

 ここはリーダーである俺が皆に指示を出さねば。


「よし、一度陣に戻ろう」


 そう指示を出し、各々の返事を聞き、俺達は陣へ向け出発した。

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