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神に仕える黄金天使  作者: こん
第1章 玉座強奪・諸邦巡遊篇

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第116話

 俺が殿下の部屋に着いても、全員が集まっていた訳ではなかった。まだ何人か来ていない者がいるそうだ。

 最終確認と言っていたが、もうその段階なのであろうか。まだ昼過ぎだが、捕虜を解放し手伝わせたので早く終わったのか?


「ジル卿、始まる前に一つ頼みたい。捕虜の逃走を防いでいた龍?というものを回収して欲しい」


「よろしいのですか?奴らがいることで従順になっている者もいるでしょうに」


 殿下が言っているのはムサシ達のことであろう。


「私もそう思ったのだがな」


「殿下、あのままでは脅しているようではありませんか」


 俺と殿下の会話に横入りしてきたのは、捕虜の管理を任せていたガエルと言う男だ。

 ガエルは俺と殿下が王都から脱出した時から付き従っているので、捕虜に関する全権を与えられていた。元はジュスト殿の副官に当たる人物である。まあ完全に裏方に徹していたそうなので、名前を知ったのは最近である。

 そのガエルが殿下にムサシ達を回収するよう進言したようだ。


「ガエル殿、いつでも回収できるが、アイツらは城壁の代わりのようなものだ。盗賊などから城外にいる者を守っている」


「ただの盗賊は何十万のサヌスト軍に戦いを挑みませんよ。ここら一帯の盗賊どもが協力したとしても、せいぜい五千が限界です。つまり大丈夫と言うことではありませんか?」


「それもそうか。ならば回収しよう」


 俺はラポーニヤ城上空にそこそこ大きな魔法陣を描いた。そしてムサシ達に異空間に帰るよう指示を出した。


「終わったぞ」


「まさか。さすがにあなたでも嘘はいけませんぞ」


「ならば確認すれば良かろう?」


「殿下、少し席を外してもよろしいでしょうか?」


「うむ」


 ガエルは殿下の許可を貰うと席を立ち、部屋から出ようと扉の方へ向かった。

 その時、扉が勢いよく開いた。ヤマトワ兵の一人だ。何かあったのであろうか。


「報告します!突如、巨大な上空に魔法陣が発生し、火炎龍ムサシとその配下の(ドラゴン)が吸い込まれたました!」


「上空に巨大な魔法陣。吸い込まれました」


 そのヤマトワ兵がぎこちないサヌスト語でそう報告した。俺が訂正してやると、頭を掻きながらペコペコお辞儀をした。

 魔法に関することは魔族やヤマトワ兵に任せている。最近はそれ以外の者も魔法も覚え始めたようだが、まだ任務にあたれる程ではない。

 なので、魔法に関する報告などはほとんどヤマトワ兵が行う。


「ジル卿か?」


「その通りです、殿下」


 殿下に尋ねられたのでそう答えると、ガエルが振り向いて驚いていた。


「俺がやった事だ。通達無しにやって悪かった」


「いえ、敵襲でなくて良かたです。では失礼する」


 ヤマトワ兵が帰って行った。やはり、ぎこちないサヌスト語だが、訂正する前に出ていったので、訂正出来なかった。


「ジル卿、うちのガエルが迷惑かけたか?」


 ジュスト殿が近づいてきてそう言った。元とはいえ、副官だった男が俺に絡んでいたので、迷惑と思ったのであろうか。こんなものは迷惑とは思わぬが。


「ジュスト殿、それくらいでは迷惑とは思わぬ」


「それは良かった。ちょっと失礼」


 ジュスト殿はそう言って俺の肩に手を回して、内緒話でもするかのような体勢になった。


「ぶっちゃけ何て呼べばいいんだ?」


「俺はそのままで良い」


「ジル卿ではない。殿下のことだ。国王は死に、王太子は行方不明。もう王になったも同然だが、まだ正式に即位はしていない。つまりどっちだ?」


「そんな事は俺に聞かぬ方が良い。俺よりジュスト殿の方が殿下と長いであろう?」


「それもそうか」


 こんなことを聞くために、こんなコソコソしているのか?まあ殿下に聞かれたら問題なくはないが、殿下はそのような事を気にするような方ではない。笑って流されるであろう。


「それとな、一つ。王都に行ったらオススメの店に連れて行ってやろう。まあ楽しみにしてるといい」


「酒か?」


「いや、違う。女だ」


「ならば断る。俺にはレリアがいる」


「わかったわかった。なら酒場に連れて行ってやる」


「それは楽しみにしておこう」


 王都の酒場か。俺は王都に詳しくないので、ありがたい。だが、そんな暇ができるであろうか。おそらくジュスト殿は殿下の側近として働くこととなる。まあ飲みに行く時間くらいは作れるか。


「皆、集まったようだ。始めよう」


 殿下がそう言った。

 それなりの人数が集まっている。おそらく八十はいる。まあこの部屋は広いのでこれくらいは入れるが、本来この人数を集めるなら会議室に集めるべきであろう。

 実際、座れずに立っている者がほとんどである。


 それぞれが殿下に報告を始めた。

 特に俺に必要な情報以外は聞き流したが、問題なかろう。


 会議の結果、転移を少し早める事となった。

 本来は夕食後しばらく経った後、転移する予定であったが、日没と共に転移を始めることになった。


 今から日没までに全員に通達しなければならぬ。と言っても俺はレリア達に伝えれば良い。人魔混成団からはドニスとヴァトーがこの会議に参加しているし、ヤマトワ兵からはキイチロウが参加している。


 そして通達が完了しルイ殿に報告すれば、明日の夜もしくは明後日の朝まで休みだ。


 実質、俺は今から休みだ。


 そう思って部屋を出ようとすると、知らぬ騎士に止められた。おそらく喋った事はある。だが、戦場で会ったこと以外覚えておらぬ。


「ジル卿、王都に行けばあなたは教皇になられると聞きました。その…あなたのような優秀な将が失われるのは残念ではありますが、今までありがとうございました」


 何を勘違いしているのであろうか。優秀な将(おれ)が失われる?意味が分からぬぞ。


「何か勘違いしているようだ。俺は軍を辞めぬぞ。このまま一人の将としてサヌスト王家に仕える」


「では、その…教皇にはなられないということですか?」


「いや、なるぞ。ヴォクラー教徒を導くにはその立場は必要であろう?」


「つまり…兼任なさると?」


「ああ。何とかなるであろう」


「そうですか。それは良かった。では私はこれで失礼致します」


「ああ」


 勘違い騎士は納得したように、ジェローム卿の後を追った。

 思い出した。ジェローム卿の部下だ。確かケフィとか言う名であったはずだ。


「エヴラール、あれはケフィ殿だな」


「そうですが、なぜです?」


「いや、どこかで会ったような気がしてな」


「そうでしたか」


「そうだ。明日はおぬしもゆっくり休むといい」


「そうさせていただきます」


「ではな」


「は」


 俺はエヴラールと別れた。久しぶりにエヴラールが離れた。

 思えば、エヴラールには休みなく仕えてもらっていた。俺よりも遅く寝て、俺よりも早く起きる。その上、寝ている間も外敵が来ても良いように、警戒していた。ゆっくり休んでもらおう。


「アキ、行くぞ」


 俺が歩き出すと、アキが俺の隣に並んだ。


「主殿、ワタシは休み無しか?」


 アキも休みが欲しかったのか。


「アキは勝手に休むであろう」


「な?!ワタシはサボったことなど無いぞ。失礼だな」


「違う。エヴラールが休んでいるところなど見たことも聞いたこともない。だが、おぬしはそれなりに休んでいるであろう?それに二日酔いで休むこともある」


 エヴラールが寝ているところを見たのは二度しかない。それにそのどちらも剣を抱いて寝ていた。それではゆっくり休めぬであろう。


「いや、それは体調の問題だ」


「そういうことだ。エヴラールに体調を壊されたら、アシルの負担が増える。それに可哀想だ」


「主殿は書類仕事をしないのか?」


 痛いところを突かれた。俺は実際、書類仕事などせぬ。アシル達に任せっきりだが、それでも問題は無いので大丈夫なのだ。たまにアシルに文句を言われるだけである。


「…まあ適材適所と言うやつだ」


「サボっているだけではないか」


「俺もアキが書類仕事しているところは見たことがない」


「ワタシに回ってこない。ワタシなど階級的には部下を持たない下級兵だ。ただ主殿に気に入られているだけのな」


 確かにアキは下級兵と同じだ。だが、俺のサムライになると言っていたし、俺もそれを承認した。

 俺はサムライとやらをよく分かっていないが、大きな権限を持つと聞いた。だが、その代わり失敗は死を意味するとも聞いた。

 聞く限りでは、アシルの立場と似ている。まあアシルは失敗しただけでは死なせぬが、大きな権限を持つという部分は似ている。

 だがまあ、分かりやすい階級を与えても良いかもしれぬな。


「それもそうか。ならば昇格させてやろう」


「何にしてくれるのだ?」


「そうだな…従騎士補佐はどうだ?エヴラールの下で色々と働いてもらおう」


「それは嫌だ。他のは無いか?」


「ならば俺の補佐官でどうだ?」


「気に入った。それにする」


「そうか」


 アキが俺の補佐官となったところで、部屋に着いた。

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