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神に仕える黄金天使  作者: こん
第1章 玉座強奪・諸邦巡遊篇

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第103話

 俺は部屋に戻ると、セリムを呼んだ。お昼ご飯にはまだ早いので、それまでに例の事を聞いておけば良いだろう。


「ジル様、お元気になられたようで良かったです」


「ああ。俺の呪いについて何かあるそうだな?」


「はい。ジル様、妖魔導書を覚えていますか?」


 魔剣を作る時に借りた本だ。


「ああ、覚えている。魔法の事なら何でも載っているものであろう?」


「そうです。その妖魔導書の取得条件がジル様の呪いを解くのにちょうど良いのです」


「教えてくれ」


「まず、悪魔であること。そして、二日以内に二千の下位悪魔を滅すること。この二つです」


「俺は悪魔ではないが?」


「ジル様なら血を飲めば、悪魔になれます」


「そうか」


 下位悪魔がどれほどの強さかは知らぬが、セリムが取得できたのなら、俺もできるであろう。

 二日かかるのであれば、明日からの方が良いであろうな。今日は予定がある。


「明日から俺もやろう」


「あ、いえ、この試験は常に行われている訳ではありませんし、誰でも参加できるという訳でもありません」


「そうか」


 セリムはそう言うが、何か策があるのだろう。セリムは無駄な事は言わぬ。


「ですが試験はちょうど二ヶ月後にあります」


「ならばそれに参加しよう。もう一つの条件はなんだ?」


「妖魔導書の所有者からの推薦です。私が推薦致しますので、こちらは大丈夫です」


「頼んだ」


「私は妖魔導王様にお伝えしなければなりませんので、魔界へ行ってもよろしいでしょうか?」


 妖魔導王様は誰か知らぬが、セリムが様付けするような相手だ。妖魔導書の管理をしている者かもしれぬ。


「分かった。妖魔導王とやらにはよろしく頼んだ」


「は。ヨルクの同行も許可して欲しいのですが」


「なぜ?」


「妖魔導王様は妖魔導書の所有者が単独行動をするのを嫌います。以前、私が一人で妖魔導王様を訪ねたところ、『妖魔導書の所有者たる者が従者も連れておらんのか。次、一人で来たら、妖魔導書の所有権を剥奪する』と言われましたので、ヨルクには従者役をお願いしたいのです」


「そういうことなら良いぞ」


「は。では行って参ります」


 セリムがそう言うと、ヨルクが現れ、セリムと共に消えた。


「ジル様、今の話、聞いたぞ」


 クラウディウスが現れてそう言った。ある程度、魔法が扱える者なら異空間の中から外の様子を伺うことが出来る。それに俺も特に制限しておらぬので、魔法が使えれば、外が見えるだろう。


「我の血をお飲みになるか?」


 取得条件の一つに悪魔であること、が、あったな。


「貰おう」


 俺がそう言うと、クラウディウスは魔法でコップを創り、自らの血を注いだ。

 俺は息を吐き出し、一気に飲んだ。血など美味しいわけがない。採れたてだろうが何だろうが、不味い。


「ぐ…」


 飲み干した瞬間、目玉が飛び出るかと思うほどの衝撃が体内に走った。

 俺の背中で布が破れるような音がした。

 頭から何か生えるような感覚がある。

 魔力が大幅に増えたような感覚に陥った。

 犬歯が伸び、歯が全体的に鋭くなったような気がする。


「ジル様…?!」


 エヴラールが気を失い、倒れてしまった。俺はエヴラールをソファに寝かせた。


「これは…グル・ウィット・ジャビル様の再来…」


 俺が振り向くと、クラウディウスは恭しく跪いた。グル・ウィット・ジャビル様とは誰であろうか。


「クラウディウス、顔をあげろ」


「ははっ」


 クラウディウスがいつもと違う。


「グル・ウィット・ジャビル様とやらは誰だ?」


「全ての悪魔を統べた王であり、ジャビラの父です。後にも先にも全ての悪魔を統べたのはグル・ウィット・ジャビル様のみです」


 ジャビラの父という事は、堕神ということだ。つまり、強い。


「クラウディウス、全身鏡を用意してくれ。姿を確認したい」


「仰せのままに」


 クラウディウスがこんな感じになってしまうと、やりにくいな。


 俺はクラウディウスが創った全身鏡の前に立った。

 頭からは禍々しい角が生えている。形はヤギの角に似ているな。

 歯は鋭く、四本の犬歯が長い。

 手を見ると、爪が黒くなっている。

 顔には太い線のような刺青がある。いや、刺青ではなく、俺自身の模様か。

 そして目を引くのが、背中から生えている一対の翼だ。コウモリの羽に似ている。動かそうと思えば、動かせるので、飛べるかもしれぬな。翼は非常に大きく、片翼の大きさは俺の身長ほどある。両翼を伸ばせば、かなり大きい。普段は畳んでおこう。


「クラウディウス、これは何だ?」


「悪魔の姿でございます。ジル様が知っている、我やキアラ様の姿は仮染めの姿であり、本来はこのような姿になります」


「そうか」


「主殿に何をしたっ!」


 アキが気配を感じさせず、俺に近づき、斬りかかってきた。俺は咄嗟にアキの刀を右手で握ってしまったが、不思議な事に全く斬れていない。


「やれっ!」


 アキが叫ぶとアシルが俺に向けて、三本の矢と五発の火魔法を放った。

 俺はアキに当たらぬように、三本の矢を羽で防ぎ、火魔法を水魔法で相殺した。


「主殿を返せっ!」


 刀を手放したアキが俺に体当たりをした。いや、体当たりではなく、隠し持った小刀による刺突であった。アキの小刀が俺の腹に刺さったが、不思議な事に小刀が折れた。


「ワタシごとぶっ飛ばせ」


「ああ!」


 アキの指示でアシルがそこそこ大規模の雷魔法を撃った。俺は同じ規模の雷魔法を撃ち返し、相殺した。だが、大規模な魔法同士がぶつかり合ったせいで、部屋に置いてあった物が吹っ飛び、めちゃくちゃになってしまった。本当に大事なものは異空間にしまってあるので良いが、ベッドが壊れた。アメリーが拘っていた花瓶は、壊れておらぬ。


「待て、俺が何をした?」


 アキが俺に馬乗りになり、俺を殴った。だが、特に痛くない。


「主殿を返せっ!」


 アキは俺を殴りながら、そう言った。返せと言う主殿(おれ)を殴りながら。そのアキの瞳には涙が浮かんでいる。


「いや、俺はジルだ」


「嘘だ!」


 嘘ではないのだが、どう説明したら良いのだろうか。


「待て。俺が確かめる」


 アシルが近づいてきて、そう言った。俺は本人だが、なぜか緊張する。


「バスティアは何の魔法が使える?」


「時空間魔法であろう?リピエッツが言っていた」


「あんたは誰に仕えている?」


「ヴォクラー様とエジット殿下だ」


「これが最後だ。ミドは誰だ?」


「………」


 ミド?知らぬな。だが、知らぬと答えると本人ではないと言われるかもしれぬ。何か適当に言ってみるか?いや、それで違ったら本人ではなくなる。正直に言うか。


「ミドなど知らぬ。誰だ?」


「本人だ」


「我が保証しよう」


「「クラウディウス…!」」


 気づいていなかったのか、アシルとアキが驚いている。


「主殿、早く元の姿に戻れ。姫が来るぞ」


 レリアが来るのか。ならば早く戻らねば。

 俺はエルフの耳を隠した時のように、戻れと念じた。確かあの時は創造魔法の逆バージョンで戻ったな。


「戻ったか?」


「主殿、歯。歯がまだ長い」


「どうだ?」


「戻った。姫を呼んでくる」


「ああ」


 アキが出て行った。アシルはエヴラールを揺すって起こそうとしていた。だが、アキが出ていったのを見て、エヴラールを揺するのをやめ、こちらに来た。


「兄上、どうしてあんな姿に?」


「後で説明しよう。アシルはなぜ来た?アキのことを嫌っていなかったか?」


「嫌ってはいない。苦手なだけだ」


「そうか。なぜ来た?」


「フーレスティエと話していたら、アキがノックもせずに駆け込んで来て、『主殿が乗っ取られた!』と言ったから、ついてきた。『主殿は助けられたら助ける。助けられなかったら仇を討つ。その時はワタシごと攻撃してもいい』との事だ」


「それにしてもアキがおぬしを頼ったか」


「この城にいる中ではアシルが一番マシだ」


 アキが戻って来ていた。

 後ろにいるレリアが散らかった部屋を見て驚いている。レリアの手にはお盆があり、そのお盆には白いスープが載っている。あれが俺の為に作ってくれたお粥か。

 ロアナとアメリーが瓦礫を片付け始めた。サラはバーカートを持っている。


「ジル、大丈夫?角が生えたって聞いたけど」


「ああ、大丈夫だ。見るか?」


「また生やせるの?」


「ああ。この通り」


 俺はそう言って角のみを生やした。顔が変わったり、羽が生えたりはしていない。


「触っていいの?」


「分からぬ。触った事も触られた事も無い。安全が確認されたらどれだけ触っても良いぞ」


「わかった。ジル、お昼ご飯できたよ」


「楽しみにしていた。すぐに食べよう」


 俺はそう言って机を取り出した。この机は廃棄予定だったが、レリアが気に入ったので、シャミナードに言って修理させた。セットの椅子もあり、こちらはバローに修理させた。

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