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神に仕える黄金天使  作者: こん
第1章 玉座強奪・諸邦巡遊篇

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第99話

 俺がレリア達と話していると、サラが食事を持って戻って来た。


「ジルはまだ動いちゃダメだから、あたしが食べさせてあげる」


「食べさせていいのか?主殿には流動食とやらを食べさせるとテクが言っていたぞ」


 レリアが食べさせようとしてくれているのに、アキが邪魔しようとしている。おそらく流動食とは、薬が入っている食事の事だ。俺の予想だが、薬を気付かぬうちに摂取できる代物だろう。なので普通の食事も食べて良いはずだ。


「良い。せっかく用意してくれたのだ」


「では準備しますね」


 サラがオーバーテーブルを持ってきて、その上に食事を並べた。いつもの食事よりは少ないが、怪我人が食べる量ではない。まあ俺は食べるが。


「じゃあ口開けて。あ〜ん」


 俺はレリアの言う通りに口を開けた。顎に攻撃は受けておらぬ。以前、一度だけアキに殴られただけだ。

 痛みを我慢して呑み込むと、更に痛くなった。体内に異物が入り込んだのだ。傷ついた内臓では耐えられぬのか。まあ痛いだけなので良い。


 俺は痛みに耐えながら、食事を続けた。食事を終える頃には満身創痍となってしまった。所々、血が出ている。


「本当に大丈夫だった?」


「ああ。痛いだけだ」


「大丈夫じゃないじゃん。テクさん呼ぶね」


「いや、テクは呼ばなくても良い。痛いだけなら耐えれば良い」


「え、でも…」


「これまで殺してきた者の反撃だと思えば軽いものだ」


「ほんとにいいの?」


「ああ。大丈夫だ」


 俺はそう言いながらも口から血が出た。血が減ったので肉を食べねば。


「サラ、追加でステーキを頼む」


「大丈夫なんですか?」


「ああ。五枚ほど頼む」


「分かりました」


 サラが一礼して部屋から出て行った。


「ファビオ、カイ、ユキ、頼み事がある」


「なに?」


「アシルを連れて来てくれ」


「「「わかった!」」」


 ファビオとカイとユキが元気そうに走って出ていった。


「レノラ、俺はもう大丈夫だから部屋に戻ってウルをベッドで寝かせてやってくれ」


「分かりました。あの、先程はすみませんでした」


「いや、良い」


 レノラは一礼すると、ウルを抱いて出ていった。


「先程ってなに?」


「ああ、レノラに説教をされてな。レリアを一人にするな、と」


「あ、そうなんだ。一人にしないでね」


「ああ。もちろんだ」


 レリアが抱きついてきたが、抱き返せぬ。腕なども動かぬようだ。


「あ、主殿、ワタシも」


「ダメだ。アキは力加減ができぬ。それに俺はレリアの夫だ」


 なぜかアキも俺に抱きつこうとするが、断った。アキに抱きつかれたら治るものも治らぬ。それ以前に俺はレリア以外の女を抱くつもりはないし、抱かれるつもりもない。


「ワタシだって力加減くらいできる」


「俺はアキに殴られた顎が痛い」


「主殿を殴ったりはせん」


「いや、殴った」


「殴ってたよ。サヌスト(こっち)に来た時に酔っ払って殴ってた。たしか『顎が外れたらこうすればいい』って言ってたと思うよ」


「姫までワタシが殴ったと言うのか?!」


 どうやら本当に覚えておらぬらしい。アキは酔っ払うと記憶を失うのか。覚えておこう。まあ俺も人の事を言えぬが。


「ジル様!ジル様!ダメです!ジル様、ダメです!」


 テクが駆け込んできた。その後ろをサラがついてきた。


「何事だ?」


「何事だ、じゃないです。ジル様、私が用意する流動食以外は食べないでください」


「なぜだ?たくさん食べた方が早く治るだろう?」


 何の肉のステーキか知らぬが、肉であるなら生物であったはずだ。その一部を食べる事で、俺の失った血肉が回復する。俺は常にそう考えてたくさん食べている。


「ジル様のお体は内も外も傷ついております。食べすぎては早く治るどころか、身体に負担をかけ、逆に悪化します」


「何?なぜ早く言わぬ?」


「いや、その、言ったつもりだったんですが…伝わってませんでしたか?」


「そうか。ならば先程食べた物を吐こう。サラ、バケツか何か持ってきてくれ」


「お待ちを!」


 サラがバケツを取りに行こうとすると、サラの肩をテクが掴んだ。アキがテクの腕を掴み、サラを解放した。そしてテクを転ばせた。アキはテクが動けぬように、テクの背中に乗った。


「主殿の命令だ。早くバケツを持って来い」


「あ、は、はい」


 サラがバケツを取りに行った。


「テク、主殿の命令を受けたサラの邪魔をしたな?」


「…ジル様の為を思ってのこと…です」


 テクが可哀想なので、アキに解放するように言った。まあアキなら俺が言わなくとも、解放しただろう。多分。


「ジル様、食べた物を吐き出すのは、それはそれで体力を消耗します。なので、私の方で調整しますので吐かなくて結構です」


 調整とはなんだろうか。まあ後で聞けば良いか。


「そうか。アキ、早とちりをするな」


「ワタシは主殿の命令を…」


「アキ、サラにバケツはもう要らぬと伝えてくれ」


「仕方ない。主殿の為にテクを取り押さえたのに、主殿は……」


 アキは何やらブツブツ言いながらサラが行った方へ向かった。遺跡に入る前より素直になったな。いや、気のせいか。アキは元々こうだったか。


「テク、すまぬな」


「いえ。私も言葉足らずでした」


「ところで調整とはなんだ?腹を裂いて食べた物を取り出すのか?」


「いえいえ、そのようなことは致しません。薬や食事の量の調整だけですので。今日はもうお休みになってください。明日からは私が許可を出したもの以外を食べないようにしてください」


「ああ。気をつけよう」


「では失礼します」


 調整とは薬の調整であったか。まあそれもそうか。腹を裂いて食べた物を取り出す方が、俺の負担が大きい。それに傷も増える。

 レリアは何かを考えるようにこちらを見ている。


「ジル、あたしは部屋に戻るね」


「戻るのか?」


「うん。だって一緒に寝たら寝返り打つの怖いもん」


「それもそうか。おやすみ」


「うん、おやすみ」


 レリアが部屋から出て行った。五日間も看てくれていたのだ。一刻も早く休みたいだろう。

 俺も眠ろう。



「起きろ。人を呼んでおいて寝るな」


 俺の耳元で誰かがそう言った。いや、アシルの声だ。呼んでいたのを忘れていた。


「すまぬ。侍医(テク)に休めと言われたから寝ていた」


「そうだろうと思った。で、用件はなんだ?」


「呪いの詳細を教えて欲しい」


「俺より兄上の方が詳しく分かるだろう」


「いや、俺は天眼()がこんな状態だからな」


「分かった。説明してやる」


 アシルの説明を聞くと、単純だが強いものであった。


 まず、俺に回復魔法をかけては、逆効果になる。その上、古傷も開く。


 この呪いは代償に俺の魔力と血肉が使われた。

 この呪いの術者は俺で、対象も俺となっている。まあ簡単に言えば、落とし穴に落ちたようなものだ。自分のせいではないが、自分が犯したミスで命の危機に陥るということである。


 術者の死亡、もしくは対象が千の命を奪うことで解呪される


 呪いは基本的に代償を必要とするので面倒だ。魔法は魔力があれば良いが、人を呪うとなるとそれなりの準備が必要になる。まあその代わり、魔法と違って誰にでも扱える。


「俺は兄上に謝らねばならないことがある。兄上が呪いにかかっているとは思わず、全力で回復魔法をかけてしまった。そのせいで傷がさらに開き、皮膚も所々裂けた。申し訳ない」


「気にするな。そのおかげで呪いに気づいたのだ」


「そう言ってくれるとありがたい」


「そうか」


「主殿、戻ったぞ!」


 アキとサラが戻ってきたので、子供組(ファビオ、カイ、ユキ)をサラに預けて部屋から出て行ってもらった。まあこの三人なら大丈夫だろうが、配慮した方が良いだろう。


「アキ、俺が気を失っていた間、何があった?」


「ワタシが教えてやろう」


 アキの説明を簡単に纏めると、以下の通りであった。

 俺が気を失う直前、矢と槍の攻撃が止んだ。被害を確認した一行は、出口へ向かった。その時、怪我を負った者を背負って進んだ。

 途中でジュスト殿の援軍と合流し、無事脱出。


 脱出後、伝令が城まで走り、アシルに伝えた。アシルは自身の部下とテクを連れてすぐに駆けつけ、回復魔法をかけてくれたが、逆効果。


 そしてアシルは俺をテクに任せ、アキと五十人を連れて遺跡へ入った。その際、祭壇の広場まで行き、死した者の亡骸を回収。

 その時、王太子がダークエルフ三人と現れたが、遺跡が崩落し始めた為、追跡を断念。


 俺の指揮の遺跡突入での被害は死者十一名、重傷は俺を含んで二名、軽傷三名。また、ルイス殿下の護衛デヴィッドは二人を庇って死亡。ルイス殿下とアズラ殿下は無傷。

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