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晴天に、彼女は笑う。

作者: 桐山ルイ

 「近寄らないで。」


空は青く澄み切っており、日差しも強くとても眩しい。こんないい天気だって言うのに…


 目に涙を浮かべた少女がそこに立っていた。一歩でもそこから動けば転落し、大ごとじゃ済まないだろう。本来そんなことにでもなれば学校内でも大騒ぎだ。

出来れば僕としては、こんなに良い天気の日は平和に、穏便に過ごしたいところだ。でも――


「やめなよ、一人で死ぬなんて。」

今にも屋上から飛び降りそうな女の子に掛けられる言葉なんて限られているに違いない、現在進行系で生きている人間に関しては。



「綺麗事ね。もううんざり。私は飛び降りる為にずっとここに居るんだから邪魔しないで!」


「わかってるよ。邪魔したりしないし。それと聞いて欲しい、実は僕もなんだ。」


すると彼女はとても嬉しそうに笑った。肩までしかないショートヘアが風になびく姿は、本来なら太陽すらも眩しいと感じさせる笑顔なのだろう。状況が状況でなければだが。


「それならさ、一緒に飛んでくれないかな…。1人だとやっぱり少し寂しくてさ…。」

 僕は出来るだけ笑ってるであろう顔で頷く。最初からその為に来たのだから。


僕は彼女に近づく。ゆっくり、ゆっくりと。彼女の横に立つと僕と彼女はそれとなく手を繋いだ。


「悔いは無いかい?」

と彼女に最後の確認をする。必要な事だ。

「そうだね…悔いなんてないよ!」


人は地に足がつかなくなった時何を思うか。例えば教室で椅子に寄り掛かって後方に傾けていたとする。体重をかけ過ぎてバランスが取れなくなった一瞬、時が止まったかのような感覚を覚えるんじゃないかな、人は。


そう、まさに、今。この瞬間。僕は彼女と飛んだ。

「ありがとう。一緒に飛んでくれて。」

彼女は最後にそう言って空に飛んでいった。いや昇って行ったというのが正しい表現だろう。


 

一人と言うのは寂しいものだ。彼女は元々自殺なんてしようとしてなかったのではないだろうか。周囲の気を引く為だとしたら少々やり過ぎだとは思うが、まあ彼女の秘めた想いなど彼女自身にしかわからんさ。





まあ僕も最初から死んでいるからなんとも言えないんだけどね。











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