世界救出RTA! 2
「リッタだな。私だ。以前、君の妻を診察した医者だ」
開口一番、そう言ってきた。なにやら面倒ごとを押し付けられて嫌々、という顔をしてその医者はやってきた。
リッタは医者の顔を見て睨みつけた。医者は少し引いたが、依然として顔はそのままだ。怒りが込み上げてきた。
言いたいことは沢山あるんだ。
どうして救ってくれなかったんだ、もっと何かあるだろう、王都1の医者じゃないのか…。
拳に思わず力が入り、後ろでギィ、と扉を開ける音が響いた。
ちらりとその方向に目を向けてみれば、ドアから顔半分だけ出して、マークが様子を伺っている。
突然の来客に心配をしているんだろう、だがそのおかげでリックは拳に入った力を緩めることができた。
一呼吸置いて気持ちを落ち着かせて、医者に問いた。
「なぜ今更ここに?妻は治らないんじゃないのか?」
医者はため息を吐き、面倒くさそうに説明を始めた。
「それがな、治る方法があるかもしれないのじゃ」
まさかの回答にリックは驚いた。慌てて「どうやってだ!」と聞くと、医者は宥めるように言ってきた。
「そう慌てるな。詳しい説明はこの国の王、 ライズ様の元で行う。至急王宮に向かう。ついてこい」
妻が治る目処が立ったのはいいがなぜ王宮召喚?どうしてこの二つが結びつくのか、リッタの脳内はその二つがどう絡むのか…と考えている間に、王宮へ連れていかれた。
「控えよ。王の御前である」
重く威圧感のある宰相な声がすっと耳を通る。なんの疑問も感じず、自然と膝を地につけ、顔を伏せた。リッタこの流れるような動作をしていたことを今気がついた。
だが、それよりも威圧感のある声がリッタを包んだ。王だ。
「此度の急な招集に応じたのは、良い心がけだな」
「いえ…」
とても小さな声だったが、勝手に言葉が出た。急に呼び出されて文句の一つでも垂れようと思ったが、全くできなかった。
「面を上げよ」
「はい…」
まただ。王の声に素直に体が反応した。声も喉から絞り出されたような枯れた声がでた。
王は声だけではなく、その身体からもとてつもない圧が出ているように感じる。
王の纏っている装飾された衣服の上からでも、その筋骨隆々な身体がわかる。
それより凄いのは魔力の量だ。あの身体をしているのになぜこんなにも内包しているのだろうか。
自分も魔力は持っているが、比べるだけ…という感想しか出てこない。
枯れた返事に満足したのか、はたまた萎縮している様を見てなのか王はにやりと口角をあげ、口を開いた。
「さて、本題に入ろうか。単刀直入に言おう。貴様、勇者になれ」
「……は?」
一瞬、何を言っているかわからなかった。
いや、訂正。まだ理解できていなかった。
魔力はみなさんの想像しているものに違いありません