0.9 ルールは大事
るーるる、るるる、るーるる。
ルール
ルールです。
いきなり男を家にあげるとか、何事!?尻軽女!?能天気?!って思いますよね。
かくゆう私が、情けなくも、読み返したら、
「うーわっ」と引いたので、一応ちゃんと男女が暮らすルール決めました。の巻。
3人そろってちゃぶ台を囲んで食事を始めた。
「すごい気になるんだけど、2人はどうやって知り合ったの?」
「まあ気になりますよね…笑。昨日私がべそをかきながら帰っていたら、なぜかわかんないんですけど、おじさんの存在に目がとまって、それで気づいたら一緒にお酒飲んで、夢語り合って、酔っ払った勢いでお風呂入れるために連れ帰ってたんです…。」
と玲花は少し酔っ払った勢いの怖さを改めて感じながら答えた。
「まじで?」
と綾川が言い
「まじで。」
と今度はおっさんが答えた。
「うーん。そんなことあるんだ。恐いな。うん、才木の無用心さが恐いっ。俺が言うのもあれだけど、才木は他人をほいほい家にあげすぎ!」
「そんなほいほいだなんて…ちゃんと私も大人ですし、人選んでますよ?!」
「いやいや、俺も上げてもらった身だけど、普通誰でもそんな簡単に他人を家に上げないよ。」
とおっさん。
「まぁ、そうやって心配してくれるところからして、2人が悪い人な訳ないんで、とりあえず私の人を見る目は悪くないのでは?」
「信頼してくれるのは嬉しいけど、今後気を付けなさい。」
と綾川。
「そうだよ。僕みたいなのを上げたりして騙されることもあるんだから。」
とおっさん。
「わかりましたっ。今後は気をつけますから。」
「絶対わかってない。はぁ。」
と綾川。
「これは教育苦労しますな、先輩。」
とおっさん。
「えぇー、なんですかっ!それ。失礼なっ」
これには2人ともスルーさせてもらった。
「じゃあ今日はありがとう。まだちゃんと事情聴取ができてないから、連絡する。」
「はい、って、え??事情聴取はいやなんですけど…。まぁ、わかりました。心配してくださってありがとうございます。私はもう広報部の一員で頼れる人がいる。それだけで心強いです。」
「うん。頼りにしてよ。」
「はい。今後は私が頼ってもらえるように、成長します!」
「うん、じゃあまたな。おじさんも今日はありがとうございました。」
「いやいや、こちらこそ偏見なしに接してくれて本当にありがたかった。君たちを見てたら、一歩踏み出して、やり直したくなった。」
「はい。あなたならきっとやり直せますよ。」
「ありがとう。また…」
また会おうなんて、誰かと約束していいんだろうか。この身分からして不安定な私との約束を誰が信じてくれようか。とおっさんは思い、『また会おう。』とは言えなかったが、
「また、会いましょう。約束です。」
と綾川はおっさんが欲しかった言葉をくれた。
先程綾川と話をしていて、流石に同じ建物で暮らすのはよろしくないのではないかとなり、玲花は今まで通り自宅の方で生活し、おっさんが銭湯の建物の方で生活することになった。自宅と銭湯は繋がっておらず、一度自宅の勝手口を出て裏から行くか、玄関から出て表から入るしかないので、なかなか徹底した線引きができた。
また、風呂の掃除はおっさんが家賃を払えない代わりに毎日行うこととなり、玲花はとても喜んだ。さらに旅館のように風呂の時間帯を決め、台所以外での不意な鉢合わせなどは無いようにと配慮した。
「おっさん〜。本当にそっちで生活できる?大丈夫?」
「いや、全然問題ない。むしろ今までを考えたら贅沢すぎる。雨風や気温の寒暖差との戦いがほとんどなくなるんだから。…本当にありがとう。」
自分でいいながら、おっさんはどんどん感極まってしまった。
「そんな、気にしないで。私1人にはこの家は広すぎるの。ちょうどいい。これから、よろしくね!」
「おう。よろしく。」
お互い名前も知らない。どんな人生を歩んできたかということも知らない。
そんなものは関係ないのかもしれない。
2人は名前も前例もないであろうこの生活を始めた。
ここで暮らしていく。