0.7おっさんと私の生活
おっさんと私の生活がまわりだした。
あ〜いい匂いだ。と匂いにつられておっさんは起きた。
ん?朝か?夕方か?とか思っていたら、自分に布団がかかっていて、驚き、ここはどこだ?と一瞬戸惑ったがすぐに思い出した。あのお姉さんの家だ。
すると玲花が台所から、おっさんの寝ている和室の方へ来て、
「起きた?ご飯にしよう」
と言った。
おっさんがまた断ろうと口を開く前に玲花が
「断るのなしだから〜。食べよう。」
「…じゃあ言葉に甘えて。」
「はい。いただきます!」と玲花が言うと「いただきます。」とおっさんも続いた。
ご飯中は2人とも黙々と食べていたので、一言も話さなかった。
ご飯を食べ終えるとおっさんは遠慮がちに、
「お姉さん。昨日落ち込んでたのは大丈夫か?」
と聞いた。
「うーん、まだもやがかかってる…
おっさんの気遣いは嬉しいんだけど、その前にその"お姉さん"って言うのやめてくれない?!私がおっさんより年上みたいじゃない。」
「じゃあおねぇ?」
「いやぁーそれも絶対嫌っ!」
「じゃあ…うーん…姉御っ!姉御はどう?君は俺の人生の中で、尊敬すべき女性だから」
「もっとやばそう。スケ番っぽい。そんな崇めてもらっちゃって恥ずかしい。(笑)けど、まあ、いっか!で、おっさんは、おっさん、て呼ぶのに不満は?」
「ないよ。もうこの際なんでもいい。君に拾われた身だから。」
「ていっ!」
と玲花はおっさんの頭にチョップを入れて言った。
「そんなこと言わない。拾ってない。ちゃんとあなたの意思でついてきたんだよ。」
「ううっ。泣かせるな姉御。」
「おうよ。おっさん。」
この後2人でしばらくあだ名を呼び合い笑いあった。
「あっそう言えば姉御今日仕事は?」
「ん?今日土曜だから休み〜。やっぱ曜日感覚とかないもん?」
「うーん、あんま意識しないかな。たまに落ちてる新聞とかで見て、前後1〜3日ぐらいかな〜とか考えるんだ」
「ほう。それホームレスあるあるかもね。」
「まあね」
午後15時。
プルルルルプルルルル。電話がなった。
「もしもし。綾川さん。すみません。私また何かミスしましたか?」
「いや、してないよ。大丈夫。この1週間様子が変だったから、大丈夫かなって思って、電話したんだ。」
「ありがとうございます。今はそんなこと忘れてました。」
「ん?。そんなことって何だ?会社でのことか?」
「あ、えーっと、なんでもないですよ?!」
「いや、なんでもなくないよな?!才木。指導担当の俺に社内の隠し事は良くないぞ。」
玲花は空気読んでーと思いながら
「いいえ、そんなものありませんよ。」と言った。
これで追及は終わったと思ったのは甘かった。
「ふぅん。あ、あと、一つ頼みなんだが、今日才木の家の風呂貸してくれ。俺の家のシャワーが出なくなったんだよ。」
「ち、近くの銭湯とかじゃダメなんですか?」
「んー、この辺スーパー銭湯しかないんだよ。この間才木の家の風呂入ったら、スーパー銭湯じゃ満足できなくなった!」
「えー!?うーん、わかりました。じゃあ17時過ぎに家来てください。」
「ありがとう。あと夕飯も一緒に食べよう。なんか買ってくから。」
「ありがとうございます。じゃあ後で。」
「姉御、誰から?」
「会社の上司。」
「へぇー。やっぱ俺はここに住んじゃダメじゃないか?」
「へっ?居ていいに決まってるじゃん。突然追い出すなんで絶対しないから!」
「うーん。そう言うことじゃないんだがな。」
とおっさんが小声で呟いた。
「どうしてだろうね。姉御昨日人の気持ちに鈍いって言ってたけど、自分の気持ちにも鈍いよね。まずは自分の気持ちとちゃんと向き合ってあげな。」
「ん。そっか。ありがとうっ!
あ、あと、その上司17時くらいにうち来て、風呂入って、ご飯食べてくから。よろ!」
「えっちょまって、これ完全に俺邪魔じゃない?」
「えっ何で?ちょっと説明に困るけど、普通に紹介するし、いてよ。あと、お風呂掃除手伝って!」
鈍いし、この子はどうしてこう天然なんだろうか。その上司が気の毒だ。来た時にはちゃんと説明しておこう。
「はあ。お風呂掃除は喜んで。」
ありがとうございました。