11.普通の日常
お久しぶりです。
「おっさーん!行ってきますーす!!」
「はいよ、行ってらっしゃい」
そんなやりとりをしてここ最近玲花は家を出ている。人に見送ってもらえることがいかに安心できるかということを実感している。
「おはようございます。」
「おはよう」
「おはようございます」
玲花は先週までの出来事も跳ね返すように、明るかった。仕事も順調で、今日は定時に上がれそうだという勢いだった。
「才木、昼行くぞ」
「はい」
という綾川の呼びかけにも、女達の視線を気にすることなく答えた。
「今日調子いいな」
「はい。おかげさまで!」
「おー元気そうだし。社内で話せそうな人はできた?」
「まだですね。できれば女性社員の方とも仲良くなりたいんですけど。広報の方達は色々濃いめなので…」
半分あなたのせいで友達ができないんですよ。
なんて思いながら答えた。
「そうか。今度同期と飲むから才木も来てみなよ」
「いいんですか?」
「うん。話しつけとくよ。しかも場所は違うけど、同期入社だったし。」
「じゃあ遠慮なく。よろしくお願いします」
「よし。じゃあ午後からの仕事もよろしく」
「はい。」
「お疲れ様です。お先に失礼します」
と玲花が言うと
「お疲れ様ー。オフも大事よ。そんな申し訳なさそうな顔しないで!」
と先輩の女性社員が言ってくれた。
「ありがとうございます!では失礼します。」
家に帰ると荷物を置く前に、風呂屋の方に表から顔を出して
「ただいま。」
と言った。
「お帰りー」
とおっさんも新聞を読んでいた顔を上げていった。
「ご飯まだだよね?」
「おう。ごめんな。作っといたりしてなくて。」
玲花はおっさんの服の裾に少し泡が付いているのを見つけて、
「ううん、大丈夫だよ。しかもお風呂洗っといてくれてるんでしょう?」
といった。
「おう!ご飯食べたら好きな時間に入ってくれ。」
「ありがとう!じゃあご飯できたら呼ぶね!
今日はわたしの機嫌がいいからビールまでついてくるよ〜」
「やった、じゃあよろしくー」
「はーい」
食卓には、米、生姜焼き、たくあん、味噌汁、納豆、枝豆が並んでいた。
「今日も今日とて飯がうまいのぉ。」
「おっさんどうしたの?その喋り方?笑」
「久しぶりにテレビ見させてもらって、流行りの芸人の喋り方が頭から離れんくて」
「わははーまたその喋り方になってるしー!
あれでしょ、広島の方出身の!」
「そうそう!」
「おもろいよねー」
「彼らは漫才よりもロケの方が向いてるような」
「漫才も面白いけどね」
「間違いない」
「じゃあお休みー」
「お休み」
今日も夜更けていく。
こんな日常が続いて欲しいと願うばかりの2人だった。
ありがとうございました。