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AI歌人 与謝野A(K)I子++  作者: 青海 嶺
7/8

AI短歌史前史(七) 「ひきこもり俳人」・「詠み人いらず」・「坑夫」

 AI俳句・短歌の急激な発展に対して、人間俳人・人間歌人の側にはどのような動きが見られたであろうか。


 一言で言えば、それは不可視化された=地下に潜ったのである。

 オンラインからオフラインに「ひきこもった」とも言える。

 既に、歌誌、句誌からは人間製が駆逐されつつあり、人間俳人・人間歌人がネットに発表の場を求める動きも見られた。

 その一方、AIに親和的なネットという場自体を倦厭・忌避する流れが強まり、ネットやAIを拒絶する「秘密結社」が流行するに至って、人間俳人・人間歌人の姿はネット上からもほぼ姿を消した。


 「秘密結社」は、オフライン=リアルでのみ集会を行う一種の文芸カルト集団である。

 その集会に於いては、全てが紙に手書き(!)

 スマホもタブレットも一切持ち込み禁止。禁を破れば破門となる。

 中には自宅にPCを隠し持っているだけで「総括」されるような反電脳原理主義的グループも存在したと言われる。

 「秘密結社」においては、自由に作句・作歌が楽しまれ、その結果は各々の手帳に手書きで筆写され、結社同人に共有されたと言われている。

 その実物を目にすることは現時点では不可能に近く、文学考古学者による発掘作業が期待されている。

 不可視となった彼らの動向は、ネット上ではいわゆる「オフ会のお知らせ」としてのみ記録が残っている。

 「オフ句会」「オフ歌会」は、それぞれ「お福」「お風太」と隠語で呼ばれた。

 今もネットを検索すれば「○月○日0900お福@浅草寺」などという痕跡が見出される。


 人間がすっかり姿を消した、ネット上の俳句界・短歌界では、当然AIが活動を牽引した。

 そこでは、俳句AI・短歌AIの性能の向上すなわち俳句・短歌の質の向上であった。

 この状況を称して「詠み人おらずの時代は過ぎ、詠み人いらずの時代が到来した」と言われたものである。


 人間の俳人・歌人が自ら作品を作ることをしなくなった理由として、既述したが、データベース検索に費やす時間・手間・費用が捻出できないという実際上の問題があった。最初からネット上での公開を拒絶する地下「秘密結社」であれば、このデータベース検索の壁に突き当たることはなかったわけである。

 このような「ひきこもり=地下化」の流れとともに、目立ったもう一つの動きがある。それは、AI俳句・短歌の選出作業をアルバイトとして行う俳人・歌人の増加である。

 それは実際、いい金になったし、俳人・歌人にとっては専門的技能を活かせる職種である。在宅ワークの人気職種として、求人はすぐに応募で埋まるのが常であった。

 その作業は、鉱山で金脈を発掘する作業に似ていたため、詩人らはそのアルバイトを自嘲的に『坑夫』と呼んだ。

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