ソト
この作品は牧田紗矢乃さん主催、第四回・文章×絵企画の投稿作品です。
この作品は、桧野 陽一さんのイラストを元に執筆しました。この場を借りて、御礼申し上げます。
桧野 陽一さん:https://10819.mitemin.net/
不思議な世界だ。
鉱石のような、それでいて金属のような。
なめらかな石のような何かが、周りを覆っている。
起きた時、これは夢なんだと確認をしていた。
今は、これが夢だとは思えなくなっている。
五感はますますはっきりとして、空気にはわずかな金属の味がする。
光がどこからか注いでくるが、それがどこから来るのかはわからない。
どうしようかと思っていると、ふわと風が吹く。
風が何かと思えば、それは色を持ち、形を作っていく。
「女子、高生……?」
セーラー服からすぐにそう思った。
ただ、どうして、という思いが先に来る。
そう考えると、彼女についていくとは考えられない。
「来ないの?」
階段ができている。
それは壁や周りと同じ材質でできているようだが、はたして体重を支えてくれるものなのか。
それでも彼女がトントンと上がっていくのを見て、ついていくしか選択肢は残されていなかった。
トントントン……とさっきからずっと上がり続けている。
後ろを少し見ると、さっきまでの階段はもうなかった。
ならば、と彼女の少し前を見ると、まだ階段はなかった。
「……あなたは誰?」
歩きながら、彼女は尋ねてくる。
「誰、と言われても……」
そこでふと気づいた、誰だ。
全く記憶がない。
「まあいいや、あなたが誰でも。私のこと、知らないようだしね」
「……すまない、ごめん」
なぜ謝る、それすらわからない。
「どうして謝るの」
「…ごめん」
何が何だかわからない、でもそう答えるしか選択肢がないように思える。
「いいや、着いたよ」
そこは踊り場になっていた。
何か扉でもあるのかと思ったが、それはない。
「……来る?」
彼女が手を差し出す、かと思えば引っ込め、踊り場から一歩、二歩と歩みを進める。
「行くしかないようだ」
やはり、選択肢は残されていないようだ。
路はまだまだ続くだろう、彼女との旅も。
でも、いったんは外へと出ることになるようだ。