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とどのつまり、
「水泳は体力である!」
というのがシンディの実体験から生まれた持論だ。
それに基づく実際の泳法修得の手だてについては、まず、
「水泳は水面に浮かぶ必要なし!」
という逆説的な見識があり――
具体的な方法論として、
「初めての人は『平泳ぎ』からやるべし!」
と、いうのが彼女の信念だった。
「――だいたい、『クロール泳法』なんて、初心者には難しすぎるのよ! そう思わない? 両足を交互に上下にバタバタさせながら、かつ、その運動と関係なく、腕はグルグル交互に回転させて、その回転の合間にスパッ、プー、スパッ、プー息継ぎしろ、なんて、そんな器用なこと初心者にできますかってぇーのっ!」
「はあ……?」
……すぱっぷーて、なによ? そもそも――くろーるって、なにものよ? 困ってしまうチャコだ。
「第一、ヒレもないのに、ばた足ジャバジャバでまともに進めるわけないじゃん? 素足だったら水をグンッと蹴る! これが一番よ!」
「……ごもっとも?」
「理解してもらえて嬉しいわ!(ぱんぱん!――手を叩く音) さあやってみよー!」
(ひえええええっ!)
シンディにしごかれるチャコだ。
もっとも、その甲斐はあったと言えるだろう。
一時間ほどシンディと水遊びをした頃には――気付かぬうちに、まず水に対する『構え』が消え。
そのあと水中、すなわち浮く必要のない『潜水の平泳ぎ』をやらされ――
息をがまんし、ぐんぐんと力強く水を蹴り、掻いているうちに――あれ?
(わたし水の中で前に進んでいる? これって泳いでるの――?)
スピードが上がり、すると自然に体が水面に向かって上昇し――
水面上にぽっかりと頭が飛び出て――
そのまま二度と沈み込むことなしに――
水を力強く掻き続ける限りいつまでも――?
「――! ――シンディ? きゃーシンディッ!? きゃーきゃーきゃーきゃー!!!」
「はいはい、オメデトさん!」
満足げに鷹揚に頷くシンディだった。




