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13

 シンディはチャコの横に降り立った。お行儀よくサーフボードを邪魔にならない所に置き、丁寧に黒バスをハカリの上に戻し、皆の注目の中、やおらエヘン、と咳払いする。

「みなのもの控えおろう! こちらにおわすこのお方をどなたと心得る――!」

 シンディ、可愛い厳かな顔。一体コノ子はナニをヤラカス気なのだろう!?

「――諸国漫遊中の二級魔女とは仮のお姿! しかしてその実体は、魔女宮公認、チャコ・唐草特一級魔女様であらせられるぞ! ええーい、頭が高ーい! 控えい、控えーい!」

「まさかほんとに芝居小屋に行ってたの?」

 小声でチャコ。シンディはニヤリと答えない。

 さて──

 当然のようにチャウが怒り狂った。

「ウソだ! な、な、なんたる、たわけたことをっ!? この不届き者めがッ! それとも暑さで脳がやられたか!? 皆の者騙されるでないぞ! あんな子供(ガキ)が、特一級の位であるはずがないであろうが!」

 シンディが意地悪に笑み、なにか言い返そうとする。チャコはもう、めんどくさくなって手招いた。

「貴方の自慢の、超魔女級の『あの術』で、こちらにいらっしゃいなさいな。サイフェイ様。できるものならね!」

「なんだと……こ、小娘……!」

「今、このボートの周りに、空間をねじ曲げる力場を張ったわ――」

 チャコ、チャウを見据える。

「わたしがウソつきのただの二級位だったら、こんなバリア、貴女にとって全然障害にならないはず。自由に行き来できるはずよね。違う?」

 チャウ、顔を真っ赤にして、

「痴れ者――今そのメッキを剥いでくれるわ!」

 叫びを残し、姿がかき消え――瞬間移動!――そして――

 ──

 ──そして、いつまでたっても、出現、しなかった。


 辺りを、不気味な静寂が支配する。

「どこに出ちゃったのかしら、ねぇ……」

 とシンディ。太陽を見上げたりなんかしちゃってる。二人を除く全員が青ざめた。

 しばらくしてから、湖の中から、あぶくが浮いてくる。

「……溺れると、魔法も何もあったもんじゃないのよね」

 とシンディは指さし、力でチャウを引っ張り上げ、ずぶ濡れの彼女をゴエモンのボートに乗せてやる。チャウは、水圧と酸欠、何よりもショックで、ガタガタと震えきっていた。ゴエモンにかけてもらったタオルを身体に巻き、隅の方で小さくなる。

「能力がいびつなのよ。一つだけ突出していてバランスが取れてない。だから、テレポーテーションとバリアを破る術を、まんぞくに併用できなかった。恵まれた境遇に甘んじ、まっとうな鍛錬を怠っている証拠だわ……」

 シンディが手厳しく批評する。

 それを聞き終わってから、ゴエモンが悠々と、ボートの上に跪いたのだった。

「へへぇいっ! 負けましてござります……」

 潔く、深々と頭を下げる。クロダも、そして最後にチャウも倣い、シンディは満足げに頷いたのだった。

「これにて一件落着!」












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