表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/40

 互いにそれぞれのボート――ゴエモンのはゴテゴテに装飾された同型機だった――に乗り、沖合に出た。不正を防止するために、お互いが見える位置での、同じ場所における勝負である。つまり逆に言うと、ポイント探しはしなくていいということだ。純粋に釣りの腕比べになる。

 ハリーが声を張り上げた。

「用意はいいかあーーー!? じゃ、レディーーーー」

 GO――!! チャコとゴエモンの同時のキャスティングでスタート! とたん、チャコのリールは『お祭り』をおこしてしまった。すかさずハリー、慌てず騒がず用意していた別のロッドを手渡す。アドバイスを受け、再キャスティング――今度はうまくいった。リーリング開始――!


 ハリーはひどく忙しい!


『お祭り』の処理、ロッドの準備、ルアーの選択、キャスティング、リーリングのアドバイス。そしてボートの操船……。

 向こうで歓声が上がった。見ると、かかっている。操船していたクロダが、タモ(玉網)を持ち出して来てかまえる。チャウが満面の笑顔で湖面を見つめている。やがて、ゴエモンは目の前で、らくらくと取り込みを成功させたのだった。ゴエモンは尺上の獲物を振りかざし、残りの二人は親指を突き立てて、こっちにガッツポーズを見せつける。

「……」

 ぐうう! 動揺しない!

 と自分に言い聞かせていたのに、やっぱり焦ってしまう。チャコは気持ちを押さえつけ、無言でキャスティングした。ところが──

「!」

 ゴエモンにまた来た! これで2匹目である。わたしの数は、今のところゼロ。これは……これって……。

 この、お互いの数が丸わかり、オープンになっているということは、メリットでもあるしデメリットでも、あるんだなぁ……。世の中の真理におののくチャコだ。

「!」

 ゴエモンにまた来た! げげっ、3匹目! 相手はトロフィー保持者だという事実! その実力は、本物だったということだ。

 甘かっただろうか? 謙虚になろう――そう思った。ゴエモンを盗み見る。

「……キャスティングの差かしら? あっちは腕力があるから、遠くに飛ばせる。そしたらリーリングの時間を長く取れるし、ヒットの確率もそれだけ上がる」

 パンパン、というハリーの鋭く手を叩く音。

「集中! 今やれることを、丁寧にやろう! リーリングを工夫してみよう。バスに魅力的なアクションを、イメージしてやってみるんだ」

「わかった……!」

 とは言うものの――

 ゴエモンにまた来て。ゴエモンにまた来て。ゴエモンにまた来て。その差は広がり――


 気づいたときには、ゼロ対17匹になっていた。さすがにハリーの顔が青くなっている。

 チャコは――












評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ