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チャコは動きやすいように(スクール)水着に着替えた。シンディは――そのままだ。
「どうしたの、着替えないの?」
「チャコ、わたしはオカの上でやることがある。あとで必ず行くから、それまで二人でがんばってて」
学習済みである。チャコ、誤魔化されないぞ、という顔に自然になった。
「またなんか企んでいるんでしょ?」
シンディは悩ましげな表情になる。
「ううん……実はオーツ中央通りのショーチク座でね、見逃していたお芝居をやってるの」
「冗談ばっかなんだから……」
切り札だった魔女の身分をバラしてしまった自分だ。それ以上チャコは、あえて問わないことにした。
「チャコ、これ」
「なに?」
シンディが小さな金属片を手渡した。円い形状の一枚板で、中央が膨らんでいる。ひっくり返して反対側を見ると、へこんでいる面に、やわらかな、緑色の苔(?)みたいな物が一面に付着している。
板の端にフックがリンクされているところを見ると――
「『スプーン』と言ってね、ルアーのご先祖様なの。今ではスマートとはとても言えない古い形。ただし、シンディ特製! 材料はラモスのお店の焼け跡から拾った本物のスプーン。水中と水底のカテゴリーで使えるはず――試してみて」
「魔法がかかっているの?」
「そう見える?」
チャコは首を振る。かかっていない。
「そのとおり。とびきりの魔法をかけているわ!」
ピンときた。
「『無害な呪い』ね?」
チャコはシンディと顔を見合わせ――微笑んだ。
「勝ってね」
「うん……勝つよ!」