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 話し合いの結果、チャコとゴエモンのサシの勝負、ということになった。


 方法は、バスフィッシング――!


 真っ青になったハリーがチャコを部屋の隅に引っ張って行って、声を潜めて猛反対した。

「親父は10(テン)ポンドバスクラブの会員なんだ! それこそ昔、ザパーン国クラシックトーナメントの優勝トロフィーだって、獲ったことさえある! だめだ、絶対勝てっこない!」

 チャコは血が沸騰しまくってる。忠言を聞く耳なんか、ちっとも持ちあわせていないのだ。

「ハリー、これはチャンスなの! 勝てば無条件全面謝罪付きでラモスさんの補償、慰謝料、今後の非干渉を引き出せる! これで指くわえて見逃すなんて、できゃあしないじゃんわ!」

 言葉遣いがメチャクチャだ!

「もし負けたら――!?」

 ヤクザのふしだらな、いかがわしい夜の店で奴隷働きである。ハリーは怒りで顔を真っ赤にさせた。

「――それに、万が一勝ったとしても、アイツは素直に約束を果たす人間じゃない!」

「そうなったら願ったり適ったり! こっちも遠慮なく実力行使!」

「見たろ? 向こうにはあのチャウがいる!」

「ハリー、実はわたしは――」

 シンディが速攻で割り込んだ!

「10ポンドバスクラブって、なんなの?」

「──あ? ああ、その……魚、バスの、重さのことだよ」

 まごついたものの、さすがはハリー、意識をシンディに振り向けるとよどみなく説明をはじめる。

「普通……てか、このザパーン国では、一般に魚の大きさは、その体長で計られているんだけど、海外では違ってるんだ。

 バカバカしいことだけど、こんなのにも国際ルールがあってね……とにかく、魚の大きさの公式記録は、重さで計ることが決められているんだ。

 で、10ポンドバスクラブだけど。文字通り、10ポンド、約4.5キログラム以上のバスを釣り上げた釣り人(アングラー)だけが、入会が認められたクラブなんだ。

 このメンバーになれるというのは、その世界では大変な名誉なことで、実際、国際的に通用する権威を持っているんだよ」

「ふうん、それで、今までの最高記録は?」

「発掘された太古の記録を信用するなら……旧アメリカ帝国、ジョージ・W・ペリーが、古歴1932年に釣り上げた、10.9キログラムということになっている。太古の世界って、どんなだったんだろう? すごいことに、これが未だに破られていないんだ。

 ちなみに現代の公式記録では、ジュンイチ・I氏の7.12キログラムが、最高記録だ。参考までにそのバス、体長70センチで、胴回りが60センチ。人間の子供くらいのサイズがあったそうだ」

「その記録塗り替えてやるわっ!」

「ああ、チャコ、お願いだから冷静になってくれ! ピュア湖のバスは、たった三年前に密放流されたものだ! ワールドクラスの大物なんかいないんだ」

「じゃあ数の勝負ね? 当然、ハンデを要求するわ!」

「チャコの一匹に対して、あちらは五匹、でいいんじゃない?」

 シンディは真剣な顔で面白がっている。ハリーは顔を両手で覆った。元気のない声を出す。

「君たちの釣りの腕前は、僕は十分知っている。ああ……」

「ハリー、あなたが頼りだわ」

 彼は弱々しく微笑んだ。

「イエス……チャコ。わかったよ。わかった。ただし、1:10だ……」












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