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シンディが笑っている。
シンディが笑っている。
シンディが笑っている。
「あははははははははははは……」
両手で顔を覆ったまま笑っている――
ああ、シンディが笑っている。
「……ははは、はぁああ、あ……」
なさけない声だ。
「……ああ、魔女だってコトは、最後の、最後の切り札だったのにィ」
「……」
「事前に打ち合わせしてたのにィ」
「……」
チャコは答えない。反省するどころか、まーだ憤怒が治まらない! いきなり風に向かってワンツー・猫パンチを繰り出したりなんかしちゃってる。ここは、疾走するハリーのパワーボートの上。レンタルボートは、ロープで引っ張ってもらってる。
「スカッとしたよ!」
なんてことを、ハリーまでもが言い出す。
「しかし、びっくりした! 二人とも魔女さんだったなんて!? スゲーぜ!」
とたん、顔を上気させてチャコが何か言い出すのにかぶせて、
「いやあん、それほどでもぉっ!」
シンディが答える。もうチャコにはもう、口をきかせないつもりらしい。
「独立のための社会見聞? いいねぇ!」
「そーなのよ! あはは!」
「どーだい、ここ? この町! ここで開業しちゃえよ!?」
「あらまあ、なんて魅力的なアプローチだこと! でもチャ、チャ、チャウ――なんとか先輩二級魔女様がいらっしゃるしぃ」
「別にアマチュアのままでいいじゃん! それでプロを押さえつけて実績ナンバーワンになれば、それこそスゲーじゃん!? どうしても地位がほしかったら、そうやって実力で奪っちゃえばいいのさ!」
「ちょっとわたしたち、自信ないなぁー! なんたって経験浅い、若輩者ですものーっ」
「もちろん協力するさ! 当然だろ!? 二人とも俺、この俺に任せてよ! 親父たちは、そろそろ引退を考えていいころなのさ!」
「いやん、頼もしすぎ! ハリーったら、ステキね」
「ばーか、おだてんじゃないよ! アハハハ……」
「アハハハハハハハ……」
二つの音色の笑い声を吹き流しながら、ハリーのボートは快調に湖を走って行くのだった。