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チャコは事務所に怒鳴り込んだ――!!!!!!!!
「なんだおめェ――あ、昨日の水着の可愛い子ちゃんじゃ――」
顔に傷がある男だった。
「社長出せ!」
チャコの目が血走っている。
「……ああ〜ん?」
「オトシマエつけさせてもらうわ! よくもよくもよくもやってくれたわね!」
男は最初怪訝な顔をしていたが、すぐ思い当たってニヤニヤしだした。
「お嬢ちゃん、ナニ言ってんだか、わかんねえなあ……」
「ラモスさんとこの火事よ!」
「おお、おお、あのジイ様が、どうかしたかい?」
「火ィつけたでしょうが!」
「こらまた、とんでもねぇ言いがかりだぜ?――しらねえなあ」
「とぼけて!」
「ねえちゃん、そんだけホザくんだ。それなりの、ちゃーんとした証拠ってヤツを、見せてくれるんだろうなあ?」
「証拠だァあア!?」
声がひっくり返った。押さえに押さえていたものがついに弾け飛んだ。瞳に、魔女の光がフレアした――!
瞬間!
家具という家具、ヤクザのワケわからん調度品が、竜巻のごとくメチャクチャに吹き荒れた――!
窓という窓が粉々に吹き飛び――!
破裂音が轟き天井が割れ――!
板材やら太い梁やらが盛大に落っこちてきて――
隣室にいた連中が怒声や悲鳴をあげながら飛び出してきて――
一人残さず壁に叩き付けられ――その壁が向こうへ倒れ――!
「お・の・れ・ら──少しは、思い知れッッッッッ――!」
竜巻はそれから十分はたっぷりと、暴れまわったのだった──
――
――
――
――
青空が見える。
埃がもうもうと舞い上がった瓦礫の中から、傷顔の男が首を出した。怒りで緑色になっている顔に、血に汚れた傷をもう一つ作っている。
「……てめぇ、魔女だったんかい!」
「そうよ! 正真正銘の、まぎれもない魔女よ! それがどうかした?」
男はここで、ある種の、余裕の笑みを、ニヘラ……と浮かべた。
「……ただで済むとは、もちろん思っちゃねーだろな? 憶えと――」
チャコはその顎を思いっきり蹴り上げた。ゴンッ、と男の後頭部が何かと当たる音がした。
「何言ってんの? わたしがなんかした? わかんねぇわ!」
「……こ、こここ、このアマ! てめえが魔力でやったんだろが!」
「さあねえ、知らないわ」
「――はあ?」
「証拠は?」
「――」
男は目を白黒させる――
「この程度で済んで、あんたらすごくラッキー!」
フンッ! と鼻をならす。
「……あのね、社長が謝るまで、もしかして社長のお店全部、こーなるかもしれないわね? ――そう伝えとけ!」
言い捨てるとチャコは背を見せた。かろうじて残っていたドアを手荒くバンッと閉める。とたん、最後の壁が崩れて、男が再び埋まった。