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ハリーがいた。
呆然と、立ち竦んでいた。
チャコはその横を通り過ぎた。
「あ……チャコ!?」
返事もできずにチャコは、お店の火事跡の中に入って行く。
「……」
ハリーとシンディの会話が、後ろに聞こえる。
「ラモスは?」
「病院……重傷……面会謝絶……」
「放火のようね?」
「……! ……! ……!」
「……」
声が、聞こえなくなった――
チャコは裏庭――の跡――に出た。
チャコは見た。
土蔵――お茶の、保存倉。外壁が煤だらけ。なかばすがるように屋根の上を見るも、水タンクは跡形も無く――
外戸は一見、火に耐えられたように見える。
(もしかして――)
取っ手に触れると、脆くもぼろっともげた。
(万が一の可能性が――)
チャコは魔法で戸を外す――
(おねがい――)
二重扉の、中の扉は、一見、まったくの無事でいて――
チャコは──
息を詰めると、ゆっくりと、引き開いた──
「――」
そこにあったのは、光だった。
朝の、光。
見上げると──
天井が、ない。
屋根が、ない。
それは、朝の青空──
そして。
顔を正面に戻す。
見たくなかった。
ラモスおじさんが、丹誠込めて養生させた、お茶――
「――」
お茶が――ウジのお茶が――ジャクリーヌが――焼け死んでいた。
「――! ――! ――!」
ラモスおじさんは、重体だという。
おそらく、助けようと、火を消そうと、無理に体を張ったのだろう……へんくつだから。
それを――わたしは――
のほほんと火事を見ていたわたしは――
なんて節穴で、愚かだったんだろう――!
わたしは――救いようのないバカだった――
頭に血が上った。