二日目・1
目が覚めると、隣のベッドにシンディが戻っていた。満ち足りた、安らかな寝顔をしている。一体いつまで遊んでいたのだろう、タフな子だった。
遠慮なくたたき起こす。
朝食を取るためホテルのレストランに入った。
昨夜は何をしていたのか聞いたところ、案外すなおに答えがあった。これはこれは! 「今回は事前になんでも打合せする」と昨日彼女自身が言ったことをちゃんと守っている。さすが、と少し見直したが、
「う〜ん……結局、踊っただけで終わったわ」
……まあ、こんなオチだったけど。
逆に、「チャコの方は?」と訊かれる。
「部屋から出ていない」
と答える。今夜はどうかわからないけど、とこっそり思う。
ハリーとの、昨日のことを思い出し、ぼうっとなりかけて、慌てて話題を探し、火事を目撃したことを喋った。
「へえ……で、場所はどこ?」
「そうね、部屋もこのレストランも、同じ湖の方を向いているから……あっち」
チャコは南を指さす。湖の左の方向である。とたん――
シンディがいきなり厳しい顔になり、コーヒーカップを静かにソーサーに戻した。
「念のため聞くけど……距離は、どれくらいだった?」
「かなり遠かった。水平線の向こうだった」
「――出ましょう」
「シンディ?」
「――」
事情がわかったのは、それから一時間後のことだった。
まず、ホテルを出た二人は湖に来て、貸しボートをレンタル。目立たぬよう、オールを漕いで沖に出る。これで三十分。そこからは魔法力全開――水面すれすれを滑空する。コントロールはシンディが受け持った。そのスピードはハンパでなく、ハリーのパワーボートを凌ぐという凄まじさで――三十分。計一時間。到着した場所は――
「……」
「……」
ラモスおじさんのお店。
ラモスおじさんのお店が、全焼していたのだった。




