21
その夜。
シンディは単独で夜の町に繰り出し、チャコは一人、部屋の中で留守番をしていた。
「……」
思い出されるのは、昼間の、ハリーの、体温。
肩を掴まれた感触――
唇の熱さ――だった!
「……」
明日の夜、二人っきりで会おう、と約束した。
いったい、どうなってしまうんだろう?
期待と不安に一人、身をもむチャコだ。
ふと――
窓の外に、赤い明かりが見えることに気付いた。
ベランダに出る。ここは湖側の、四階のツインルーム。結構遠くまで見晴らしがきく。
湖の左。南の方。かなり向こうが、小さく明るい。
「あ、火事か……」
チャコはようやく明かりの正体に気付く。
これだけの数の町だ。
なかには、今日この日に、火事を起こしてしまう民家があっても、そう不思議ではない。
思わず空に出動しかけて──
──その体の動きを止めた。
今から駆けつけても、間に合わない。
昼間の、「魔女の身分を隠して」というシンディの言葉も、ついでによみがえった。
「……」
火事――あんまり規模は大きくないようだ。
「……」
ここはさすがに設備が揃った町だ。やがては無事、鎮火されるのだろう。が、火事に遭われた方は、気の毒なことだ。
慰めにもならないが、そう思った。
そのときは、そう思っただけだった。
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