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一日目・1

 暑っつい風が体を包む! 汗がダラダラ!

「気を付けてね――」

 太陽が轟々と音をたてんばかりに火炎のような光線を吹き付けてくる!

「やっぱりこれだけの大きさになると――」

 眼前にドンと広がる青い水の大平原! 水平線が、その背中に夏の大空を隠している!

「海ほどではないにしても――」

 右を見る! 湾を形作り、地平線まで続く白い砂浜。その広い浜辺にうち寄せる――きらめく透明な波の優しさよ!

「うねりがあるから――」

 左を見る! おお湾を形作り、地平線まで続く白い砂浜! その焼けついた浜辺にうち寄せる――さらりと崩れる波の涼しさよ!!

「沖まで行ったら――」

 遠浅の湖! チャコは辛抱たまらなくなった! 黒髪をなびかせ、水しぶきをあげ、歓声をあげて走り出す――!

「流れに引きずり込まれる――て、チャコっ!」

 シンディが怒鳴った。

「アンタ泳げるの!?」

 チャコの足がピタリと止まる。

「ぶーーーっ!」

「ぶーじゃないの!」

 とたん、どっと大勢の明るい笑い声があがる。口笛も聞こえるぞう!?

 びっくりして振り返ると茶髪やらニセ金やら、ほんものの金髪やら銀髪、赤毛黒毛、あらま坊主頭、長髪、モヒカンなど、真っ黒に日に焼けた男の子たちが群れを成している。そんな彼らを背にして、白いワンショルダー・ハイレグ・ワンピのシンディが、腰に手を当て、まさにクイーン然として突っ立っていたのだった。

 その彼女たちの背後、白い浜のさらに向こうに、ケバケバしく広がる観光街――

 レイクサイドホテル、民宿、観光センター、飲食店、土産物屋、貸しボート、釣具屋、ゲームセンター……。

 白黒、赤青黄色、緑にダイダイ、ピンク色――などの塗料をそのまま塗りたくった強烈な色彩感覚!

 奇ッ怪な動きをして客を呼び込もうとしている、眼鏡小僧や巨大蟹など趣向を凝らしたカラクリ看板が、町中目の及ぶ限りゴテゴテと飾り付けられている。

「……あはははは」

 湖を背にして笑ってしまう。ここは、ピュア湖の都市(まち)、オーツ。

 ザパーン国にその名も高き、最大の湖を管轄する、シュガー県の県首都なのだった――!


         ※


 センシュウの森の(へり)を歩き、北上すること一週間。

 森が背後に去り、かわりに砂と草々の大地が広がり――

 遠くイヴキ山地を見やるその手前、太陽光線をギラギラと反射させる一枚の鏡のような――

 ザパーン国最大の湖――ピュア!

 そのピュアのほとりに開けた、大都市・オーツが、ここだ。

 老いも、若きも、国民だったら一生に一度は訪れる、と地元民の豪語する、一大歓楽地であった。


         ※

 

 ここから浜辺を見渡すと、男も、女も、大人も、子供も、老人も、みんな同じ姿だった!

 そういうわけで、チャコは自分の水着姿に男の子たちの視線を浴びても、ようやく平気になってきたところだ。今では逆に、快感すら覚えちゃうカンジだキャーーー <ハート>

 自分で勝手に顔を赤くして、この子はまったく世話がいらない。

 シンディはというと、その男の子たちに押し合いへし合い、言い寄られていた!

「ねえ、二人だけ? どお? オレら――(ばきっ)」

「どけやコラ――へへっ、一緒に遊びましょ――(ごきっ)」

「ハ〜イ! いいね、それ、クールだ――(べしっ)」

「名前なんて――(むはっ)」

「ああん、なんでも聞いて! お願い! お願――(がしっ)」

「こんなやつらほっといてさ、あっち行こうよ。ぼく、オモシロイとこ知ってん――(ぼこっ)」

「ねえねえねえねえ、ねえどっから来たん――(ぐへっ)」

「――(どしっ)」

「――(めりっ)」

「――!」

「!」

「!」

 ……


(うわあ……なんかすごいぞ……よりどりみどりだ)

 と、人ごとのように思っていたら、シンディは――?

 シンディは、言い寄ってくる彼らに、チャコですらゾッとする流し目をくれてやり――

 そして、こっち見て意味ありげにウィンクした。

 チャコ、いきなり緊張する!

(まさか……えーうーえーえーえー……どうしよう、ココロの準備ができてないよー………………♪)


 シンディは、異議は認めんとばかりに威厳を込めて、御託宣を下したのだった。

「……まずは、水に顔をつけることからはじめましょ!」

 チャコと男の子たち――ダァ、とこけた。











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