18
シンディは先にさっさと更衣室の中に入って行き、チャコはなんとなくほったらかしにされた気持ちになる。
そばにいるハリーと――
ハリーと、できるなら、もっといっしょにいたかった!
「──」
チャコは振り仰ぐと笑顔を作った。
「ありがとう。楽しかった。それと、まだお礼を言ってなかったわね。命を助けてくれて、ありがとう。殴っちゃったりして、ほんとごめんなさい。……また明日。じゃ……」
歩き出そうとするチャコの腕を、ハリーが掴んだ。
チャコは振り返り――
「──」
ハリーは抱き寄せ――
「──」
唇を重ねた。
「──」
のけぞって――!
「ハ、ハ、ハリー――!?」
いきなりだった!
「チャコ……愛してる」
いきなり――! ――
――愛してる?
え――?
え――?
え――?
――
ハリーを見ると――
顔が真っ赤だ。うわぁあああっ!? 正直な彼だった!
「シ、シ、シンディの方が、貴方にはお似合い――」
彼は激しく首を振った。
「僕は、君が、好きなんだ! ――明日は、いや明日の夜は、個人的に、君、君だけに会いたい。――いいね?」
「――!」
ぐわっ!
チャコは――顔が激しく熱くなり――やがて、ちいさく、はっきりと頷く。ハリーは嬉しそうに顔を輝かせると、もう一度チャコを抱き寄せキスをしようと、して――かろうじてチャコは拒んで――
瞬間、うろたえたように身を離すと、
「ごめん、強引――」
「あやまらないでっ!」
あやまられたら――ぶざま――強引なら強引なままで――この人はほんとに――不器用で――本当に――いい子で――スキで――!!!
「チャコ!」
「ハリー?」
「また明日。――今日は、人生最高の一日だったよ!」
「ばか。……ハリー?」
「うん?」
「愛してるって、言ったの?」
二人は見つめ合い、やがてハリーは真剣に答えた。
「――イエス、チャコ! 愛してる。永遠に――」
「――」
――
――
――!
そのあとは――!
二人、あわててトビすさり、はにかみ笑いとテレ臭さでどうしようもなく、「ほんとにバイバイ」と、お前ら子供か、とばかりに手を振り首を振り、あああ、今後一生涯、このことを思い返すたんびに、地面を転がり悶えまくるのだろうという喜劇を演じて、ようやく、チャコは更衣室に駆け込んだのだった。
だけど──
扉の裏で、背もたれて、幸福感につつまれているチャコだった。