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 シンディは先にさっさと更衣室の中に入って行き、チャコはなんとなくほったらかしにされた気持ちになる。

 そばにいるハリーと――

 ハリーと、できるなら、もっといっしょにいたかった!

「──」

 チャコは振り仰ぐと笑顔を作った。

「ありがとう。楽しかった。それと、まだお礼を言ってなかったわね。命を助けてくれて、ありがとう。殴っちゃったりして、ほんとごめんなさい。……また明日。じゃ……」

 歩き出そうとするチャコの腕を、ハリーが掴んだ。

 チャコは振り返り――

「──」

 ハリーは抱き寄せ――

「──」

 唇を重ねた。

「──」

 のけぞって――!

「ハ、ハ、ハリー――!?」

 いきなりだった!

「チャコ……愛してる」

 いきなり――! ――

 ――愛してる?

 え――?

 え――?

 え――?

 ――

 ハリーを見ると――

 顔が真っ赤だ。うわぁあああっ!? 正直な彼だった!

「シ、シ、シンディの方が、貴方にはお似合い――」

 彼は激しく首を振った。

「僕は、君が、好きなんだ! ――明日は、いや明日の夜は、個人的に、君、君だけに会いたい。――いいね?」

「――!」

 ぐわっ!

 チャコは――顔が激しく熱くなり――やがて、ちいさく、はっきりと頷く。ハリーは嬉しそうに顔を輝かせると、もう一度チャコを抱き寄せキスをしようと、して――かろうじてチャコは拒んで――

 瞬間、うろたえたように身を離すと、

「ごめん、強引――」

「あやまらないでっ!」

 あやまられたら――ぶざま――強引なら強引なままで――この人はほんとに――不器用で――本当に――いい子で――スキで――!!!

「チャコ!」

「ハリー?」

「また明日。――今日は、人生最高の一日だったよ!」

「ばか。……ハリー?」

「うん?」

「愛してるって、言ったの?」

 二人は見つめ合い、やがてハリーは真剣に答えた。

「――イエス、チャコ! 愛してる。永遠に――」

「――」

 ――

 ――

 ――!


 そのあとは――!

 二人、あわててトビすさり、はにかみ笑いとテレ臭さでどうしようもなく、「ほんとにバイバイ」と、お前ら子供か、とばかりに手を振り首を振り、あああ、今後一生涯、このことを思い返すたんびに、地面を転がり悶えまくるのだろうという喜劇を演じて、ようやく、チャコは更衣室に駆け込んだのだった。

 だけど──


 扉の裏で、背もたれて、幸福感につつまれているチャコだった。












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