15
ラモスは、急須から緑茶を湯飲みに注いでいる――
「……」
いつしかシンディも黙りこくり――
ハリーが戸惑ったように二人を交互に見比べる。
「あの……?」
急須から、お茶が湯飲みに注がれている――
香りがはっきりと立つ。
鳥肌がたった!
二人同時だった――
「……まさか! まさかこれって、『ウジ』のお茶!?」
ラモスが心底驚いたとばかりに目を見開く。
「……ホウ!? よくわかったね」
「――」
チャコは、淹れてもらったお茶を両手で押し頂き――
慌てるように、それでいて慎重に、一口、口に含む――
この味、この香り――
そのとたん、独立峰シガラ山の風景が、ストライプを成す茶畑の光景が、大自然が、全脳裏に轟と広がる――!
ただよう白い雲――
遊び飛ぶ小鳥たち――
様々な土産物――
畳のお部屋――
盆栽いじり――
振り向く笑顔の女将さん――
……そして。
草が流れる――
斜面を快い痛みとともに転がり落ちて――
心臓バクバク――
かわいい笑い声が天に広がる――
手っ甲脚絆に姉さんかぶりの――
明日のお祭り、かならず見に来てねえ――!
――おおおジャクリーヌ!
いわば見殺しにしてしまった――苦い記憶だった!
――
――
――――――――!
泣き出しそうになる自分を、必死に押しとどめる!
そんなチャコを、何かを察したのか、ハリーが、優しく見守っている。