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プロローグ
ピュア湖――
ザパーン国、最大の湖である。
面 積:約 6.7 億平方m
平均水深:約 40 m
最大水深:約 100 m
体 積:約 275 億立方m
生息する生物は、魚類53種に貝類46種。その他、甲殻類や水生高等植物なども含めると、まさに「最大の湖」その肩書きに恥じぬ豊かさを誇っている。生態系の巨大さ、食物連鎖のバランスの精緻さは、まるで神の御技の……完成された別世界、もう一つの宇宙のようでもあった。
地元住民の食卓に上る料理の中で、ピュア湖のもっともポピュラーかつ美味しいものと言えば、なんと言っても「アユの天ぷら」にとどめを刺す。
ピュアのアユは陸封された回遊魚であり、そのため体長は10cm程度にしかならない。
その分、味が濃いとも言える。
すなわち、体長ゆえ塩焼きには適さなかったが、天ぷらでその真価を発揮したのである。
現在、誰もが認める、ピュア湖一番の名物だ。
アユ――湖を生活の糧とする漁師たちの、大切な水産資源であった。