「はじまり」
世界は──光と爆音に包まれた。
白、白、白。
雪で埋め尽くされた荒野を、「銀世界」なんてポエジーに表現した最初の人は一体誰なのだろう。
色なら「白世界」じゃないか。初めて見た俺はそう思った。
だが、今ならわかる。
雪は光をきらきらと乱反射させる。それは自然の造形物で、荒野を白銀に染める世界の意思は、ただただ美しい。
いまは、違う。
世界のすべてが光源となっていて、ただの白。白。白。
恐怖すら感じられない虚無。それでいて何かが始まる予感がする。
神は1日目に光と闇を作った。だが、まだ闇はない。すべてが光に包まれて──正確な表現をするならば、すべてが光。
これこそが「白世界」だっだ。
雪なんてあまっちょろい。
耳は爆音の奔流に抗いつつも、俺の三半規管はあっさりと抵抗を放棄し、白旗をあげている。周りも白だから見えないが。
それでも不思議と不快感はなくて、ありとあらゆる五感が世界に委ねられ──いや、世界と一体化した。
それが、すべてのはじまりであって──はるか先のエンドロールへ向かう、戦いを告げる鐘の音であった──。
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俺──三宅 葵は、目を細めて周囲を睥睨していた。