4・特訓
その後、ローラたち3人以外は解散となり、俺は1人で大聖堂の外にいた。
勇者の話が真実なら、これからローラたちは龍退治の旅に出ることになる。
それはつまり、戦いに出ることだ。
「ちくしょう、俺は何も出来ないのかよ······」
俺の力はただの盾。
強度もそんなに強くない。
そして大聖堂からローラたちが、そして勇者ユウヤが現れた。
「兄さん、待っててくれたんですね」
「あの、アーク······」
「アーク〜っ」
3人が俺の傍に来た。
俺はじゃれつくファノンの頭をなでる。
「キミがアークか。ちょうどいい、キミに頼みがある」
「······勇者サマが俺みたいな平民に頼みですか?」
「ふふ、そう自分を卑下しないでくれ。キミのスキルである《輝く盾》は、なかなか便利なスキルだ。良かったら8龍退治に同行してくれないか?」
「······え?」
俺は耳を疑った。
まさかのパーティーのお誘いかよ。
「兄さん、私からもお願いします」
「お願い、アーク。アタシたちだけじゃ不安なの、いくら強いスキルでも、どうなるかわからないから······」
「アーク、お願い〜っ‼」
「みんな······」
この瞬間、俺は決意した。
かわいい義妹に幼馴染姉妹の頼み、しかもシャオは俺の嫁だ。
「わかった。俺も同行させてもらうよ」
「よし決まりだ。ではこれから1ヶ月、城でスキルを磨く訓練に参加してもらう」
そして、俺の勇者パーティー編入が決まった。
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もしかしたら、この時から始まってたのかもしれない。
「いいね、その調子だ。そのまま意識を集中して······」
「う、うん」
シャオの手を取り、勇者は優しく微笑む。
何でも、スキルを発動させて、《斬姫王》のスキルに眠る武器を覚醒させるとか。でも、あんな手を握らなくてもいいじゃねーか。
「おら小僧、よそ見するなっ‼」
「ぐっはぁっ⁉」
俺はというと剣術の稽古。
今までのほほんと暮らしてた俺は、当然ながら武器など握ったことがない。
騎士団の兵士に思いっきりしごかれていた。
ボコボコに打たれながらなんとか剣を振る。
同じ修練場にいるのに、この差は何だよ?
「さぁ集中して······、そう、キミの中に眠る武器を開放するんだ。······今だ‼」
「はぁぁぁっ‼」
修練場に旋風が巻き起こり、シャオを中心に風が舞う。
するとシャオの目の前に光が集まり、1本の太刀が現れた。
「で、できた······。できたぁっ‼」
「おっと、ははは、おめでとう」
なんとシャオは勇者に抱き着いた。
あの野郎、俺のシャオに何しやがる。
「あっ、ご、ゴメン」
「いいよ。仲間のスキルを覚醒させるのも、勇者の仕事だしね」
「え、あ、その······、うん」
シャオ、何で顔を赤くする。
「だからよそ見するなっ‼」
「あだぁっ⁉」
木剣を横っ腹にくらい、俺は地面に倒れた。
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勇者は、ローラとファノンのスキルも同じように覚醒させた。
俺のスキルに関しては、盾を出せるだけなので、スキルを得た瞬間に自在に行使出来るから必要ない。
戦闘訓練も、勇者自らローラたちを指導し、俺はというと騎士団の訓練に放り込まれただけで、この1ヶ月ローラたちに会うことすらできなかった。
だが、全くの素人が1ヶ月で強くなれるわけがない。
スキルと才能があり、メキメキ強くなったローラたちと違い、俺は多少の筋肉が付いたくらいに終わった。
そして出発の日。
「あ、久しぶりアーク、ちょっとは強くなった?」
「さぁ、どうだろうな」
勇者の隣にはシャオとローラ。
ファノンはいない。どこ行ったんだ?
「ファノンなら、フィオーレ姉さんを迎えに行ってますよ」
「え、何で⁉」
「フィオーレは薬師として旅に同行するのさ。回復薬のエキスパートがパーティーには必要だからね」
「あ、そ」
呼び捨てかよ。
「ねぇユウヤ。最初の目的地は?」
「最初は赤龍の巣を目指そう。シャオ、ローラ、頼りにしてるよ」
「任せて下さいユウヤ。私の魔術で、貴男をサポートします」
「あ、アタシだって強くなったもん‼」
「ははは、頼りにしてるよ2人とも」
何だよコレ。
何で勇者がローラとシャオの肩を叩いて激励してるんだ?
それに、ローラたちも頬を染めて満更でもなさそうだし。
ローラたちと勇者の距離が近い。俺がいない間に、何があったんだ?
「お〜いユウヤ〜っ‼」
「遅れてすみませ〜ん」
ファノンとフィオーレ姉さんが来た。
フィオーレ姉さんはデカい荷物を持ってる。恐らくは薬の類いだろう。
「ねぇユウヤ、フィオーレ姉さんを連れて来たよ」
「ああ。ありがとうファノン」
「えっへへ〜」
勇者はファノンの頭を優しくなでる。
ファノンは嬉しそうに笑い、俺の方なんて見やしない。
「アークくん」
「あ、フィオーレ姉さん。姉さんも旅に」
「荷物をお願いしていいですか? 馬車がありますので」
「え、あ、うん」
フィオーレ姉さんの荷物を受け取り、近くに停まっていた幌付き馬車に入れる。
フィオーレ姉さんは勇者の元に向かい、楽しそうにお喋りを始めた。
「何だよ、これ」
その光景を見ながら思わず呟く。
1ヶ月前とはまるで違う。ローラたちの位置はかつての俺がいたポジションだ。
「さぁ出発しよう。アーク、御者は出来るね?」
「え? あ、ああ」
この1ヶ月、騎士団の訓練以外に、御者としての腕も磨いた。
最初はわからなかったけど、このためかよ。
「最初の目的地は赤龍の巣だ。王都の南にある火山へ向かおう‼」
「オッケー、アタシの剣を見せてあげる。任せてよユウヤ‼」
「どんな敵でも魔術で吹き飛ばして見せます。見てて下さいユウヤ」
「あたしの矢は絶対命中〜っ‼ ユウヤのアシストはお任せ〜っ‼」
「薬に関しては私にお任せ下さい。ユウヤにそんな心配はなさそうですけどね」
俺以外、心が1つになっている。
当たり前のように馬車に乗り込み、誰がユウヤの隣に座るか揉めている。
俺は半分放心状態で御者席に座り、火山に向けて馬を走らせた。
こうして、俺の冒険が始まった。