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遠山村 開拓地へ

新キャラ沢山。

直家は猛烈に後悔していた。朝、小鳥の鳴き声が心地よく耳に届き太陽の光が優しく直家を照らす。目覚めとしては最高の部類に入る日なのに気分は最悪であった。


「すぅすぅ……うひひ」


「マジかよ……」


昨日のお酒が残っている為なのか、目の前の現実のせいなのかは本人にも分からないが頭が痛い。額をおさえ顔を顰める。


「やっちまった……」


どう見ても仲間と予約した宿屋の天井ではない。他の宿屋だ。しかも、畳敷きで布団が付いている高級な所。高い出費ではあるが、それはたいした問題ではない。


「うへへ……すぴー」


問題は隣に裸の蛍が布団にくるまって寝ていたという事だ。トドメに自分も裸である。


大きい溜息を吐いて、今度は両手で頭をおさえる。


「完全に事後じゃねぇか………」


しかも、うっすら記憶がある。深夜まで互いにハッスルしていた。メチャクチャ元気な自分と蛍、商売女より比べものにならないくらい良かった。……何考えてんだ。頭を振り昨日の記憶を振り払う。


「んな事はどうでもいい…」


これでは、縛り上げた時の女に興味ねぇしみたいな態度をとっていた事が急に恥ずかしくなってくる。絶対に蛍も何か言うだろうし下手したら怒り出すかもしれない。好みのタイプじゃ無いって言ってたし。


「太陽の登り具合からして…まだ集合時間じゃないな…どうするか」


逃げるか?いや、どうせ今日は狩りを一緒にやる予定なのだ。今逃げてもあまり変わらない。素直に謝るか…。仲間も心配しているだろうし。嫌だなと思いつつ寝ている蛍の肩をゆする。


「おい!そろそろ起きろ!」


「う~ん、なんすかーもう、昨日なかなか寝かせてくれなかったからもう少し寝かして欲しいっすよ…。一応初めて何すよ…!痛いっす!眠いっす!おやすみっす!」


あれ?そんなに怒ってない?てか、処女だったのかよ。少ししか覚えてないからそんなことすらわからない。蛍は肩に置いてある手を振り払い直家と逆の方向を向く。


「んな事言っても…」


「………あれだけ女に興味無いみたいなこと言っておきながらこれっす。男は狼だって皆言ってたすけど、直家さんならないかなぁっておもったら……。命の恩人とはいえこれはどうかと思うっす」


「うっ!」


それを言われると何も言い返せない。しかも、初めてを奪ってしまった罪悪感も大きい。何故か急にさんをつけ出すのは抗議の意味か。


「それは……本当に悪かった。でも、今日行かなかったらお金稼ぐ事が出来なくなるかもしれないぞ?」


これは結構怒ってるなと思い、本気で謝罪をする。謝ってどうにかなる問題ではないが少なくとも今日1日は一緒にいるのだ後ろから刺されでもしたらかなわない。


「ふんふん、反省してるならいいっすけど。よっと、うーん!」


さっきの眠そうな雰囲気がすぐに無くなり上半身を起こし伸びをする。服を着ていないので見えちゃいけない所が見えていて、目をそらす。この様子だと、最初から起きていてただ直家を遊んでいただけのようだ。言い返すことなどは出来ないので黙るしかないが。


「ん?なんで目をそらしてるんすか~?昨日散々揉みしだいたクセに!」


「いや、捏造すんなよ。揉めるだけの大きさねぇだろ。そんな記憶ねぇぞ」


「ひ、酷いっす!それは言っちゃいけないヤツっす!」


「事実に反する事は断じて認めはしないぞ。それにジロジロ見られるのは嫌だろ?」


「まぁ、気持ちよくは無いっすけど」


「……やべ!そろそろ本格的に時間が無くなってきたぞ!早く着替えろ!行くぞ!」


太陽を見るとそろそろ準備をした方が良さげな感じだ。


「あれ?いいんすか?二回戦やるかと思ったすけど」


「やるか!」


「だって、ほら、そんなに立派に起立してますし」


指さされた息子を見ると確かに立派に勃っていた。昨日の連戦を感じさせない程元気に。朝勃ちというやつである。


「これは生理現象だ!お前、分かってて言ってるだろ!」


「あれ?バレたっすか♪」


現代でいうテヘペロをやる蛍。そんなこんなで準備が終わる頃には本当にギリギリの時間までかかったのだった。








「クソッ!時間的には余裕あったのになんで走るハメに!」


「いいじゃないすか。いい運動っすよ」


「お前は動かないからそういう事が言えるんだよ!というかもういいだろ!」


「痛たたっ。まだ、昨日の影響で股が痛いっす…。これは、動けるようになるまで時間がかかるっすね」


「クッ!」


その痛みの元凶である直家は、これを言われると何も言い返すことができなくなる。悔しそうな表情で集合場所まで走るのであった。


「ん?やっと来たか。テメェ何…………誰だその女?」


長貴、青海、猿吉が待つ場所に着いた時の猿吉の第一声である。遅れそうになった直家に詰問してやろうとした時に変な女が直家に肩車されているのを見て流石に一瞬言葉を失った。


「な、直家くん。その子は誰だい?」


「え~と、今日一緒に狩りをする仲間です。ちょっと縁があってこうなりました」


「こうなりましたって、どうなったらそんな状況になるんだよ…」


猿吉が呆れた顔で直家をみる。


「ねぇねぇ、この人たちが直家の仲間?」


「そうだ。というか、そろそろ降りろ!歩けないって言うのは嘘だってもう知ってるからな!」


普通に宿屋では歩き回っていたのだ。しかも、痛みなど感じさせない歩き方である。罪悪感で、状況に甘んじていたがそろそろその時間も終わりだ。


「ありゃ、バレてましたか。でも、酷いっす。昨夜は私が何度も降ろしてって言うのに降ろしてくれなかったのに。動くのには問題は無いすけど痛いことは痛いっすからね!」


そう言って肩から飛び降りる蛍。少し、口元がニヤけていた。顔を青くして仲間達の方を見る直家。


「直家くん…。帰ってこないって心配していたのに……そんなことを」


「お前、俺の誘いを断って女をゲットしてたのかよ。死ねよカス。今度は誘え」


中指を立てて静かに切れる猿吉。猿吉は猿吉で楽しんだはずだが、あまり上手くいかなかったのだろうか?それでも、最後には本音が出るあたり猿吉だ。


「直家さん………失望しました。そんな人だとは思わなかったです」


青海の視線が一気に冷えた。信頼の眼差しは消えて警戒心が目に見えて分かる。という、微妙に距離を置かれた。信頼度というか、好感度が三段階くらい下がった気がする。


「ププッ。言われ放題っすね」


「ぐぬぬ!俺が悪いからなんも言えない!」


言い返してやりたい事は沢山あるが、結局は酒に負けた自分のせいだ。ガックリと項垂れる直家に反省していると思った長貴が、慰めてくる。


「直家君は自分が思っている以上にお酒は強くないんだから気をつけないと」


「直家さん。私がいるからそういうのを隠してくれるのは嬉しいんですけど、別にそれほど気にしなくてもいいですよ。私も気にしません」


と、青海は言ってるが距離は離れたままだ。失われた信頼はまた取り戻すしかない。


「す、すまなかった!今度は気をつけるよ」


「けっ。お前は自分が思ってるより遥かに酒癖が悪いよ」


謝りながら仲間達と溶け込んでいく直家。それを蛍は、羨ましそうに見つめる。


「直家はいいっすね…。いい仲間がいて…」


そんな独り言は言った本人にしか届かなかった。






玄武組と蛍。これで5人。合計で17人来る計算だから残り12人となる。集合場所はここであってるが、直家達、玄武組は組合で設定された時間より早めに来ていた。なので、今この場にいるのは5人だけである。


「そろそろ時間すか?」


「そう…ですね。……あの、蛍さん?でしたよね。何故私に?」


「えー、だって同性の人の方が喋りやすいじゃないすか。もしかして迷惑っすか?」


寂しそうな顔をして青海に問いかける蛍。ちなみに得意の演技である。心の中はスマイルで、見事なものだ。


「いえ!全然大丈夫です!何でも聞いてください!」


寂しそうな子犬の様な目で見られて保護欲をそそられたのだろう。見事に蛍の術中にはまった。哀れ、青海はこういった手に異常に弱い。


「でも、いいんですか?直家さんと仲がいいんですよね?直家さんと話をしていた方がいいんじゃ」


「いま、猿?何とかというヤツと喋ってて入り込めないっすよ。それに昨夜身体で語ることは語り尽くしましたっすよ。互いの身体が果てるまで、ね」


「……か、身体で……はぅ…」


蛍の妖しげな表情と意味深な言葉で顔が真っ赤になる青海。何を想像しているかは予想がつく顔だ。


「この子面白いっすね…」


真っ赤な顔を両手で抑える青海に小声でつぶやく蛍。もっと吹き込んでやろうと色々と話始めようとする。その時、足音と声が聞こえてくる。


「おぅ!お前らが今日の狩りの仲間か!よろしく頼むな!」


ガハハと笑いながらこちらに歩いてくるのは太い槍を持った老け顔のおっさん。30後半位に見える。簡素な鎧しか着けずに半裸の身体は大きい筋肉で覆われて、いかにも熟練開拓者といった感じだ。その人の後ろにも更に4人ほどそれぞれ特徴は違えども皆筋肉隆々の男達だった。


見た感じ皆接近戦専門のようで、妖術使いはいない。また、大量にある古傷は歴戦を思わせる。開拓者として妖術使いがいないままこの村まで己の力のみで成り上がってきたのだろう。接近戦では確実に直家達より格上の人達だ。


一通り挨拶をして、リーダーの名前は岩蔵と言うらしい。少しするとまたこちらに歩いてくる足音が聞こえた。


「はっ、たまには組合の忠告を素直に受け入れて見ればこれだ。冴えない奴らの集まりに頭の軽そうな忍者、筋肉ダルマの集団。これならば俺1人の方が動きやすいな」


そう言い現れたのは、髪をオールバックにして普通より短い刀を両方の腰に2本ずつ装備している男。顔は野性的で若々しく上質な鎧の隙間から見える腹筋はバキバキに割れている。人に嫌われる高慢な発言と態度、しかし何故かそれが妙にさまになっている。今まで失敗など無く、全てを成功させてきたゆえの傲慢さ、そういう男の態度のようにも見えた。


「あ?んだテメェ、誰が冴えない奴らの集まりだ?」


「そうっす!頭はそんなに軽いものではないっす!沢山持ってみると結構おもいっすよ!」


「うるせぇ!馬鹿女は黙ってろ!」


「………直家ぇ…」


「はいはい、よしよし。でもな、今のはお前も悪いよ」


涙ぐみながら直家に縋りつく蛍。頭を撫でて慰めるが、話の内容を理解せずに入った蛍も悪い。


「………我々は確かに妖術使いは仲間にいない。それゆえに、肉体を限界まで高めここまで来た。それこそ、血の努力によってな。だからこそ、貴様のその発言は見過ごせん!取り消せ!」


直家が蛍を慰めている時、更に熟練開拓者達のリーダーが激高する。手には穂先の潰れた太い槍を握り締めて腕の筋肉が盛りあがる。


「言葉の通りだ、筋肉ダルマ。無駄に…」


「や、やめようよ!源六…ここで喧嘩しちゃダメだよ……」


その時、高慢男……源六というのだろうか?その男の後ろから、小柄で幼い印象を受ける少女が現れる。男の連れだろうか、ずっと源六の存在感が強すぎるためにもう1人に全然気が付かなかった。手に武器を持ってない所を見ると妖術使いなのだろうか?それにしても、自己主張の得意なタイプではないのだろう喋っていてどんどん声が尻すぼみになる。


「俺は別に喧嘩しようなんて思って無い。ほら、見てみろ咲。槍を握ってるのはあいつらだ」


「それは源六が挑発したからでしょ!もう!謝って!これじゃ色々と台無しになっちゃうでしょ!」


「嫌だな」


まさに尊大不遜。顎をしゃくり高い身長を生かしてこちらを見下ろす。その姿にブチ切れて額の血管が急増した岩蔵が雄叫びを上げながら槍を振るう。体内の妖力を一気に稼働させたことにより直家達が妖気の余波を受ける。直家より遥かに多い妖力量と筋肉量で凄まじい膂力が生まれているはずだ。それを証明するように太く重い槍とは思えないほど速く源六の脇腹めがけて振り払われた。


「……いったろ?無駄な筋肉だって」


誰もが槍の柄が源六に直撃したと思っただろう。しかし、現実は違った。


「………何だと…」


「遅いんだよ、全部がな。ま、天才である俺様とお前ら凡人とじゃあ比べるのは酷か…」


「驕るのもいい加減にした方がいいぞ!」


なんと、振るわれた槍の穂先の上に片足で立っていたのだ。ニヤニヤとにやけながら岩蔵を見ている。あの攻撃が当たるといった状態から槍の上に乗り移る技量は確かに本人の言う通り天才のなせる技だろう。そうして、岩蔵の方も槍の穂先の上に源六が乗っても槍を微動だにさせない筋力も凄まじい。


すぐに岩蔵は槍を振るい、源六を槍の上から追っ払う。


「源六!もうやめて!これ以上の喧嘩はダメ!」


「喧嘩売ったのは俺だけどよ、買ったのはあっちだぜ?いいだろぉ別に」


凄まじい連続攻撃。一つ当たるだけで致命傷だろう攻撃をまるで涼しい風を受けるような軽やかな表情で避け続ける。


「その通りだな。だから俺も買うぜ?」


「!!?」


余裕で岩蔵の攻撃を避け続けていた源六が吹っ飛んだ。猿吉だ。卑怯くさく今まで機を見ていたのだろう。見事に猿吉の拳が頬にあたり不意の一撃に驚いていた。


「……テメェ…このチビ野郎」


「あぁ?誰がチビだごらぁ!」


剣呑な目つきで互いに睨み合う2人。これは誰が考えても分かる。この2人はまぜるな危険だ。そしてこの時、咲と呼ばれた少女と直家が同時に動く。


「やめて!これ以上は不味いから!」


「猿吉!抑えろ!ここで喧嘩してもしょうがないだろ!」


2人を羽交い締めにして抑える。猿吉は何しやがる!と暴れ回るが、源六はそこで興が削がれた様な顔になり暴れなくなった。


「「けっ」」


二人して同じ言葉を吐き互いに顔を背ける。喧嘩は終わったと胸をなで下ろす直家と咲。


岩蔵達は猿吉が1発入れてくれたので溜飲が下がったのか武器をしまった。





険悪な雰囲気だ。これで、今日の狩りを無事に終えることが出来るのだろうか?それにもう一つの組が遅れている。もう集合時間は過ぎているのだ。出発が遅れてしまったことに皆先ほどのこともあってイライラしていた。


その時走ってくる集団の足音が聞こえた。走り方からして女性達だろう。


「すいませーん。遅れちゃいましたー!」


息を切らしながらこちらに走ってくる女性達。何処かで聞いたことがある声。


「あ…」


「………嘘」


目を大きく開く青海。相手も足が止まり青海を見つめる。見覚えのある二人と初めて見る三人。足が止まった二人に不思議そうな顔をするほんわかした顔の人や細目の人、雰囲気が青海に似ている人。あの2人の新しい仲間達なのだろう。


「なんで……なんで、あんたがこんな所にいるのよ」


そう言う女は青海を虐め、最終的には男に売ろうとした幼馴染みである。もう会うことはないだろうと思っていた中でのまさかの再開であった。


最近ジリジリとブクマ増えて嬉しいです。

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