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これからの方針とお土産選び

いつもより、ちょっと長いです。

「はっ!……ここは?」


「マジかよお前、もう目が覚めやがったのか…」


起きて早々に猿吉の呆れと、少し引いたような声が聞こえる。


「ここは、いつもの宿屋だ。んなの、見りゃわかるだろうが」


あらためて周りを見渡してみると、確かにいつもの宿屋だ。外が暗く部屋も猿吉が持ってる皿の中に油を染み込また布に火をつけた簡易光源が唯一の光。


「ん?なんで、お前が俺の部屋に?てか、あの後どうなった?全員無事か?」


記憶が少しづつ戻ってきた。鬼の足止めをしていた中意識を失ったのだ。全員無事が無事かどうか気になるし、逃げたのか倒せたのかも気になる。


「チッ!めんどくせぇな。全員無事だよ。それに俺様と長貴が全部ぶっ殺した。あと、俺がお前の部屋に来たのは長貴に起こせって言われたからだ。これで満足か?」


「あぁ、満足だ。そうか…みんな無事か、よかった……」


「起きたんだったらさっさと立て。飯の時間なんだ。待たせるなよ、俺を」


「お前かよ…。まぁ、わかった」


飯と聞いたら腹が鳴り、痛いほどの空腹に襲われたのですぐに立ち上がる。


「お前やっぱりバケモンみてぇに丈夫だな」


「それだけが取り柄だからな。あと、バケモンは言い過ぎだ」


「身体にあった傷がもうほとんど直ってるし、妥当な評価だろ」


…………何も言い返せなかった。









「あ、来たね。どうだい?身体の調子は?」


「8割ぐらいかな?悪くないよ」


「は、8割……。す、凄い…」


「あの状態からもう8割か。段々、丈夫さに磨きがかかってきたね」


青海が目を見開いて驚き、長貴も苦笑いする。俺は一体どのような状態で倒れていたのだろう。知りたいような、知りたくないような……。


「んなこたぁ、どうでもいいからさっさと直家に渡すもの渡して食おうぜ?」


「ん、そうだね。はい、これ」


そう言って俺に長貴がお金を差し出してくる。今日の分の直家分だろう。しかし、今まで見たことが無いくらいの金額であった。間違いなく、新記録だ。


「深層の妖怪3体分だからね。合計で小判1近く貰ったんだ。あ、あと、僕達9級から8級にまた昇格した」


「おー!大変だっただけあるな!」


お金も沢山貰って、組合にも実力を認められた。命を張っただけはあっただろう。


「結果的に、今日という日が深層に進出して1ヶ月の集大成になったからね。一つの節目だから、今日はちょっと豪華にいいものを食べようと思ったんだ。だから、猿吉くんに起こして来てもらったんだよ」


「そうだったのか…それは、待たせて悪かった」


「直家君が頑張ったからみんな生き残れたのだから謝る必要は無いよ。それに、みんなで食べないと美味しくないからね。じゃ、食べようか」


確かに、長貴が言うように皆んなで食べるいつもより豪華な夕食は凄く美味しく、何より楽しかった。出会って半年も経ってないだろう、しかし毎日続く命を削る日々は確かな絆を日に日に深めていった。


そして、いつまでもいつまでもこんな感じでみんなで楽しく過ごせれば、とそう強く思えた、そんな日であった。














そして、半年の月日が流れる。長い冬が過ぎて、春が訪れ、それももう中旬。夏の暑さがチラチラと顔を出す。


春のありとあらゆる花が咲き誇り、森を鮮やかに彩る。そんな中、咲く1輪の白い花に赤い血が勢いよく飛び散り、赤い花に変わる。


また、ある所の黄色やピンクの花を咲かせる植物を踏み潰し、花を散らし、地面が抉れ、蝶や蜂など虫が逃げ去る。春の気持ちの良い陽気と小動物の天国たる場所が一瞬で地獄に変わった。


そこは、気持ちの良い天国のような場所ではなく、死体と血の匂いのする地獄になったのだ。


「ふんっ。これで終わりだな」


そんな、人間の一言を最後にその場所で暴れる者はいなくなった。












「もう完全に一体一でも勝てるようになったね」


「物足りない感じがするけど、流石に同時で2体を相手するのはキツイからね」


この半年、深層で毎日の様に狩りを続け今や鬼や大赤猿のような妖怪に1人で余裕を持って倒せるようになり、前まで使っていた孤立している集団を狙う戦法ではなくなった。今は、わざと密集している妖怪の中に入るようになった。


「あぁ、綺麗な花畑だったのに……。こんなに…」


「なんだ?花なんて来年も生えてくる。こんな場所なんていくらでもあるだろ」


「そう、かも…だけど」


「命のやり取りしてんだ。んなの、気にしてられるかよ」


「猿吉くん。風情の心も大事だよ。美しいものは少ないし弱いものだ。武士になりたいのであれば、そういう気持ちも持っておいた方がいい」


「……っけ、めんどくせぇな」


「そういうものだよ。さぁ、剥ぎ取ったら次行こうか」







「はい。鬼討伐3、大赤猿討伐4で小判2と銀判1ね」


「ありがとうございます」


朝井村、開拓者組合所。同期でこの村にいるのは誰もいない。皆、他の村に狩場を移した。しかし、ここに残る玄武組はこの村の唯一の深層進出をしているので、受け取る額もこの村の開拓者からすれば桁が1つ、2つ違う。しかも、等級も8級から7級まで上がった。


「すげぇ」 「あいつら1年近くここにいるらしいぜ?」 「でも、深層ってヤバイんだろ?」 「大したことねぇさ、俺らもすぐに追い越せる」


「けっ、好き勝手いってら」


「いわしときなよ。僕達は僕達のやり方がある」


「けど、流石に深層も頭打ちじゃないか?そろそろ他の村に移るのも視野に入れた方がいいんじゃないか?」


「僕も考えてはいるんだけどね……。この村は情報があまり無いから…」


それなのだ問題は。この朝井村は初心者御用達の村であるために、中級者の情報が中々入ってこないのだ。


「一旦、杜山城下町に戻る?あそこなら何でもあるだろ?」


「うーん。それしかないかなぁ」


直家の場合、正勝様に情報を持ち帰らないといけないのだ。杜山城下町まで行って情報を何かしら手に入れないといけない。それに、1度出石村に帰らないと行かないとならない。それも、まだ言ってない。


「まぁ、とりあえず宿屋に帰ろう。それで、夕食にこの話をもう1回しようか」










「で、どうするよ?戻るか?それとも、もう少しここにいるか?」


その日の夜、夕食も大体食べ終わった辺りで猿吉が話を切り出した。


「あ!その事なんだけど…俺、実は一旦出石村に戻らなければならないんだよ。だから、短い間だけど俺少し抜ける事になると思う」


「そうなのかい?うーん。じゃあ、思い切って1週間位休みにする?その間に僕は情報を集めるし、息抜きにもなるでしょ?どうかな?」


「そうしてくれた方が助かる。猿吉と青海はどうだ?」


「私は……特にやる事も無いので…」


「なら、僕と一緒に調べ方やって欲しいな。1人じゃ効率悪いし、何より寂しいしね?どうだい?」


「は、はひ!よ、喜んで!」


流石。青海撃沈だな。天然イケメンの破壊力は計り知れない。顔を真っ赤にして湯気が出る勢いだ。というより、倒れそうだ。


「……俺も別に構わねぇな。金もあるし、いくらでも時間は潰せる」


しばらく考えていた猿吉が鼻の下が伸びきった顔で賛同する。完全に女を買うことを考えておる顔だ。たしかに、杜山城下町だったらそれに困ることは無いだろうし、遊び尽くすつもりだろう。


少し、いいなぁ。と思ったのを顔に出さないようにして、真面目な顔にするように努める。


「じゃあ、それで決定でいいな。出発はいつにする?」


「明日にしよう。別にこれといった準備も無いからね」


これで杜山城下町行きが決まり、出立も明日となった。出井石村に帰るのが少し早くなるが、まぁ悪くは無いだろう。多分これといった戦争の情報も入って来ないだろうし、少し調べてそのまま帰ろう。成近姉さんにも会いたいし。













「ふぅ、着いたね」


「来た時は結構疲れたけども、全然疲れなくなったな」


「前だって暑くなけりゃもっと楽だったろ。春だからだろ?んなこたぁ、どうでもいいんだ。いこうぜ?」


「…私は少し疲れましたけど…まぁ、いいです。ふふふ」


珍しい事に、猿吉と青海の顔が同じだ。どちらも、幸せそうな雰囲気をだしている。そんな珍しい青海に首を傾げる長貴。直家としては苦笑いするしかない。


「まぁ、いいか。どうする?ここでもう別れるかい?」


「俺はそれでも全然いいぜ。てか、そうしてくれや」


「俺も……別にいいかな?」


長貴と同じで、色々情報を集めるのだろうけど、情報の種類が違う。別れても支障は無いだろう。青海に関しては聞くまでもない。


と、言うことでここで一旦解散。また、杜山城下町入口で1週間後に集まることになった。


「さて、とりあえず何しようか」


情報を集めることが先決なのだが、よくよく考えていたみるとせっかく帰るのだから、村でお世話になった人にお土産で買わないと失礼だろう。伊吉とその家族。それと、成近姉さんとその兄さん位にはやらないといけないだろう。あと、正勝様と松五郎にも買わなくてはいけない。


正勝様に松五郎、成近姉さんに伊吉もだな、この4人に特に気合を入れて選ばないといけないだろう。幸い小金持ちだと位言えるだけあるのでお金が足りなくなることはないだろうが。


「結構考えてみると色々あるな……」


ひとつづつ片付けていこう。とりあえず正勝様への情報だな。これが何にも無ければお土産で誤魔化そう。うん、そうしよう。













「うーん。やっぱり大したものは無いねぇ。一応、書いてる主要なやつを移しとくか…」


杜山城下町にある、豪華な開拓者組合所に来て中央や主要な戦の募集の張り紙や、戦の勝敗や何処が優勢か劣勢かなどの嘘も混じってるだろう情報を見てみるが、前年とあまり変わらない様子だ。


それでも一応、主要なものは紙に移しておく。ちなみに、難しい字は読めないのが多いがそれでもそこそこ読めるようになってきた。字は基本的なやつは書けるがそれ以外は無理。でも、開拓者用の情報なので簡単な字が中心だ。これならば、移す作業は直家だって出来る。教養人と胸を張れる日は遠いが、普通の開拓者よりはマシになってきた。


「うし!おわり。さーて、お土産どうしようかね」


食べ物か?それ以外の特産品か?まぁ、とりあえずお店に行ってから考えよう。


早速、書いた紙を丁寧に折りたたみ懐にしまい、組合所からでる。店を色々と物色しながら良さそうな店が並ぶ道に出た。


「まず、あの4人以外の分だな」


優先度の低い方から先に選んでいく。なるべく早く選んで、4人の方に時間をかけたい。


伊吉の家族の分と、成近姉さんのお兄さん用。ここら辺は無難なものでいいだろう。食べ物か?でも、ここから3日位来る時はかかったからなぁ。腐るような気がする。勿論、物によるだろうけど保存食はあまり美味しそうじゃない。というか、伊吉の家族の分はなんでもいいから沢山の食べ物の方が喜ばれそう。


兄さんの方はどうしようか?正直あんまり好きじゃないからなぁ。怖いし。どちらかというと、お土産ってよりは妹とお目通り願うための賄賂みたいなもんだしな。なんか、アホらしくなってきた……下駄とか草鞋とかでいいだろ。必要なもんだし、文句無いでしょ。


さて、伊吉家族には食べ物でいいだろ。それが1番喜びそう。成長期の弟もいるからな。という、ことで片っ端から保存食をかき集める。勿論、両手じゃ持てないので大きめの籠を買う。それでも食べ物を入れると3分の2はそれで埋まった。その上に安紙を敷いて下駄を、2足乗っける。


かなり重くなっただろうが、あんまり変わった感じがしない。やはり、筋力もかなり強化されたのだろう。


「うーんと、後は問題の4人だね」


と言っても、伊吉に買うものはもう決まっているのだ。去年、着れる服が無くなってきたと言っていたので、結構いい服をプレゼントしたい。


後、正勝様と松五郎だが、大体間に合ってるだろう。1番難しいのがこの2人だ。ここでしか買えないものを買って帰るのが無難なだろう。


大した情報も手に入らなかったので、いいものを買って誤魔化すしかない。しかし、いいものが中々見つからない。


「仕方ない…。砂糖菓子でも買うか…」


砂糖は高価なものなので砂糖菓子となると結構値が張る。直家も懐を痛くするくらいのお値段だ。しかし、これを買って文句いう人はいないだろう。


「さぁ、成近姉さんだ。どうしようかな」


男へのお土産より、女性のしかも可愛い姉さんへのお土産を選ぶのに気合が入るのは仕方ないことだろう。


「ん、よく考えてみると結構難しいな。正勝様達と同じお菓子じゃ無難だけど……。なんか、ついでみたいな感じがするしなぁ」


本音を言うとついでは正勝様達だ。


「女性だから、装飾品?化粧品?んー、というか何あげてもあんまり喜ぶような気がしないな…」


ぶっちゃけ、予算は成近姉さん用が1番多い。何なら宝石すら買える。


「そう言えば…成近姉さん面倒くさがりだから、髪が伸び放題なんだよな。道成様が気がついたら切ってるらしいけど、前髪が目に入って煩わしそうだったような……」


ピンっときた。髪留めだ。ヘアピンの様な物が無いかどうか探す。探してみると近いものがあった。


「お!あった!えーと、値段は…」


そこで、直家の身体が固まる。高い。直家の設定したい予算の2倍近い。


「………猿吉の金遣いを馬鹿に出来ないな」


買うことに決めた。かなりの出費だ。財布の中が随分軽くなった。しかし、男直家。買うと決めたものを買わずしてなんとする。しかも、女に贈るものだ。ここが、男の甲斐性の見せ所だろう。そうだ、そうに違いない。


そう暗示をかけ、無事にお土産選びが完了したのだった。


次、成近姉さんと再開です。

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